大久保 智弘 | 不登校サポート | 家庭と子どもの再スタートを応援します - Part 7

大久保 智弘

2学期からお子さんの不登校が始まった親御さんへ 不登校の子どもさんに伝えてほしい3つのこと

1 不登校が始まると・・・

不登校が始まった段階では、、早く学校に戻って欲しいという願いが強いです。頼る相手も学校の先生やスクールカウンセラーになります。この対応自体は間違っていません。

高校1年生や中学1年生の生徒さんが2学期になって不登校になるというケースは珍しくありません。1学期は新しい環境に慣れようと必死に頑張っていて、夏休みにそこから離れてはホッとした。

そして、再びあの学校に行かないといけない・・・と思うと緊張が高まりおなかが痛くなったり、頭痛がしたり。または朝起きれなかったりと何らかの不調を訴えて休みます。

2 見守りましょうと言われても・・・

そして、休むことが決まると、体調は回復して普通に過ごせます。

親としては「こんなに元気なら学校に行けばよいのに」という思いにもなります。

家に居ても勉強するわけでもなく、スマホをいじったり、ゲームをしたりとだらだら過ごす。大事な2学期を無駄に過ごしているように思えて、イライラすることもあります。

しかし、担任の先生や、スクールカウンセラーに相談しても「今は無理をさせないで様子を見ましょう」と言われて、具体的に何か対応策があるわけではないと、いつまでこの状況が続くのか、不登校している本人以上にお母さんが気をもんでしまいます。

だから、不登校の相談の最初はお母さまから頂くことがほとんどです。

3 3つのことを伝えてください

不登校の初期にはどのような対応をするのがよいのでしょうか?

様子を見るということ以外にできることとして、まずは、学校の様子を尋ねることです。

不登校の原因は複雑で、本人だけが悪いとか、学校に何か原因がある場合もありますが、多くは学校と本人の関係性にあります。

勉強が難しいとかクラスの雰囲気になじめないとか、クラブの指導が厳しいとか・・・

そういったことがあります。原因を探しに行くというよりも、学校の状況を聴き取ることが必要になります。

初期の段階の子どもの心情としては、学校に行かない自分を責めています。この自責を外すのはカウンセラーの仕事になります。それも時に必要ですが、まずは、親御さんからこの3つを伝えてください。

1度だけでなく何度も言葉を変えて伝えて差し上げてください。そうすると子どもさんの気持ちが緩み、学校の状況を伝えてくれるようになります。

家庭が安心できる場になると不登校が長引くと考える人もいますが、家が安心基地になると学校に再び登校し始めるということも起こり得ます。

不登校の初めに子どもにも親にも必要なのは安心感なのです。

4 不登校しても進学はできる

不登校しても進学はできます。VCAでも中学で不登校した子が高校に進学、高校で不登校した子が大学に進学、大学で単位不足で退学の危機だった学生が卒業単位を満たして無事に卒業ということもありました。

不登校はその渦中にいるとマイナスで出口のない状況に見えますが、必ずしもすべてが終わりというわけではありません。相談したり、行動することで必ず活路が見いだせます。…

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中学生が勉強しないのは○○がないから

中学生がが勉強する気になるのために必要な ○○ 

この○○にはどんな言葉が入るか?

やる気、集中力、勉強の面白み、興味、関心、意味、自信、やりがい・・・

いろいろな言葉が当てはまる。全部正解と言える。

しかし、当てはまる言葉は一つしかない。

勉強しないのは親の悩み

中学生の子どもをもつ親のほとんどが子どもが勉強しないことをが悩みの種である。

中学になると宿題が増え、勉強の内容も難しくなる。その上、成績は定期考査の結果で決まる。

「勉強しなさい」という言葉をかけることに効果はなく、むなしい感じさえする。

学習塾に通っても、通信教材を与えて一向に成績は上がらない。家庭教師を頼んでみたものの、今一つ頼りない。勉強しているのか、おしゃべりしているのか分からない。

そろそろ進路も決めないといけないのに・・・

子ども自身も何が足りないかは分かっていない

勉強しないのは何がないからか。

子どもに直接問いただしても、「やる気がない」という答えしか返ってこない。

しかしこれはまちがいだ。正確はには本人も嘘をついているつもりはないが、やる気がないは答えてではない。

やる気は行動しないと出てこない。勉強する前からやる気があることはない。

「勉強する意味が分からない。」そう応える中学生もいる。

これも間違いだ。意味が分かったから勉強するのではない。勉強しているから意味が見いだせるようになる。

正解は目標がないこと

子どもが勉強しないのは目標がないから。

小学校の勉強は目標なんかいらなかった。なぜなら、小学校の勉強の多くは直接生活に役に立つことが多いし、先生の言うことを素直に聞く。意味を問うなんていうところまで思考力が発達している児童は稀である。

だから与えられたものをこなし、達成することで楽しさを味わえる。

中学の勉強は小学校までとは全然違う。

内容も高度で量も多い。そして、何の役に立つのか分からない学びをする。

思考力も発達をするから余計に「意味」を考え始める。

その意味を見いだすためには目標が必要なのだ。

目標を考える時間をつくる

しかし、中学で目標について話しあう時間はない。なぜなら、学校現場は指導すべき内容をこなすこと、試験範囲まで授業を進めることで精いっぱい。

将来に向けた目標設定をする時間なんてない。せいぜい中学3年生になって高校を決める程度。その先の未来について話すことはない。

だから、意味を見出さないまま学べる人じゃないと、勉強をしない。

このコラムの○○に入るのは目標である。

目標がないなら立てればよい。目標があれば勉強に身が入る。学校の授業が新鮮に聞こえる。

それに一度決めたからそれに縛られなくても良い。自分で立てた目標はいつでも修正可能だ。

勉強しないで心配な親は子どもの目標を考える手伝いをすればよい。子どもの夢ができるだけ適うように応援する。それだけで子ども勉強に向かう姿勢は劇的に変化する。

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子どもが不登校になった。勉強の遅れが心配だけど・・・

お子さんが不登校になっての心配事は実は「勉強」です。親としては、勉強が遅れる、ただでさえ勉強してなかったのにこのままではどうなるのか?高校であれば、単位がとれるのか?進級できるのか?受験に間に合うのか?などなどがグルグルと頭名の中を回って悩んでしまうわけです。

しかし、不登校している子どもを見ると、勉強のことなんか言えないくらいに弱り果てている。それどころか日常の会話さえ成り立たない場合もあります。そんななかで、勉強のことなんか到底聞けないという思いでいらっしゃると思います。

言いたいことを言うべき相手に言えないときにストレスはたまります

不登校している子どもに対して、

なんで学校に行かないのか?

勉強はしているのか?

進路については考えているのか?いつ頃復帰するのか?

いろいろとききたいことはあるでしょう。そして、実際に聴いてみて「うるせえな!」とか「分かっているよ」など逆ギレされてしまった経験がおありの方もいらっしゃると思います。

この逆ギレの背後にある気持ちは、「今はきいてくれるな」、「親には言いたくない」など話をしたくないという思いがあります。

とはいえ、逆ギレでは親が知りたいことは分からないし、問題の解決には向かいません。親の不安は募るばかりです。

ただ、この逆ギレの反応も大切なのです。それは、子ども本人も気にしているからそういう反応が来るわけです。少なくともその話題に触れるタイミングではいというところかもしれません。この反応は人によってさまざまで、「実は勉強について不安だ」と気持ちを吐露する場合もあります。

勉強を強制するのは不味い場合がありますが、そのことについて尋ねることは大切です。どんな反応が返ってくるかで子どもの勉強に対する考えを読み取ることができます。

確かにこれでは親の不安は払拭されません。反応が返ってきたところで、子どもが勉強するようになったり、学校に戻るわけではないからです。

大切なのは「うちの子は大丈夫!」という子どもに対する信頼です。

不登校が親の愛情不足から来ているという考え方もありますが、子育てをパーフェクトにできる親なんていません。不登校になったから失敗したという考えは捨ててください。むしろ、そんな考えのまま子どもに接していたら「あなたは失敗作なのよ」というメッセージが伝わり、余計に自信を無くしてしまいます。

子どもさんがカウンセリングなどの支援を受けることも大切ですが、親御さんもカウンセリングを受けて、心を育み、お子さんに対する「大丈夫」のまなざしを向けてみてください。

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不登校の中学生がなぜカウンセラーには本音を話すことができるのか?

不登校のお子さんのカウンセリングの問い合わせは母親から入ってくる。現状の生活、学校に行かなくなったころの状況、親が考える原因と思しきこと・・・

そういったことを電話やメールで伺う。

そこにある問題は、すべて母親からの視点である。当事者である中学生が述べた言葉は断片的にしか語られない。

不登校しているかどうかにかかわらず、中学生は親に本音を話さない。少なくとも、不登校になりたての時には、日常会話すらやらない。

だから、親とは違う立ち位置から話をする人間が必要になる。

それがカウンセラーである必要はない。

だが、カウンセラーと同じような人間を見つけるのは難しい。

何が言いたいかというと、親、教師、親せきは、不登校している中学生のことを知っている。

先入観がある人間に対しては、話す側(中学生)も先入観を持っている。

すると言葉を選ぶ。

こういうふうに言うと、相手は否定してくるだろう。

こんな話をしても信じてもらえないだろう。

そういった思いがあると、考えが浮かんでも、話をしない。

カウンセラーは全くの部外者だ。

家族でも友達でもない。ただの通りすがりの大人である。通りすがりの大人と違うのは、聴く技術に長けていること。

そして互いに第三者である。守秘義務も守られる。

話を聴くプロが秘密厳守でひたすら話を聴いてくれる。

わがままで反抗期の中学生の失礼な態度や言葉遣いも気にしない。

当然、批判や評価が挟まれない。こうしたほうがいい、あーしたほうがいいという中途半端なアドバイスもしない。

ただ、ひたすら聴く。

誰にも言えない思いを言葉にしていくプロセスは、精神衛生をよくする効果がある。

カウンセラーとクライエントの関係は契約関係である。

万が一、合わなければ、カウンセリングを断ればいい。もともと関係がない相手だからあとくされなく離れられる。

カウンセラーのパーソナリティは基本的には受容的である。そして、焦らない。

だから相手軸(中学生軸)に立てる。上から目線な物言いや急かす足りすることをするカウンセラーはいない。

受容的、批判、評価なし、第三者、先入観がない・・・

こういった要件のもとに話しを聴くことを繰り返していくうちに、気が付いたら何でも話をしている。

本音を聞き出そうとは特にしない。

ただ、良い関係を築くこと、そして相手(中学生)を一人の人格ある存在として敬意をもって話を聴くこと。

この心がけによってできたリレーション(信頼関係)が、中学生の心を強く、しなやかなものに造り替えていく。

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不登校コラム 中学2年生の3学期 進路の話題をどう切り出すか?

中学2年の娘です。1年生の2学期ごろから不登校になりました。勉強はしないでずっとスマホを触っています。学校の友達ではない人との付き合いもあるようで、たまに外出すると派手にお金を使ってきます。父親は「もう小遣いはやらなくていい」と言いますが、小遣いをやらないと、部屋に引きこもってしまい、口はきかない、食事はしない(親のいないときに何か食べているようですが)状況です。部屋はコンビニで買ってきたお菓子やペットボトルが散乱していて、掃除するように言ってもしません。あまりにも不潔で変な虫がわいても嫌なので、娘の外出中に部屋に入って掃除をしたら、これまでに見たこともないくらいに激怒して「二度と私の部屋に勝手に入るな」と言ってそれ以来、会話らしい会話はありません。部屋にはもともとカギはついていなかったのですが、内側からフックのようなものをとりつけて、入ることができないようになってしまいました。これまでは、スクールカウンセラーさんの指示で様子を見ていくということをしてましたが、状況は良くなるどころか悪くなる一方で、最近は夜中に起きていて生活のリズムが乱れています。父親とも、3歳下の弟とも顔を合わせることを拒みます。家族で出かけようと誘っても断るばかり。私がLINEやりとりすることだけが唯一の家族のコミュニケーションです。

もう中学2年も終わりになってきました。3年生になって次のステップを考えないといけない状況になりました。とはいえ、家族で話し合う機会などほとんどありません。本人がどんな考えをしているのか全く分からないのですが、どのように接したらよいでしょうか?

というお問合せがあったとします。(これは架空のものです)

娘さんが抱えている悩みを考える

このような場合どう接していくのが良いのかを考えます。

問題は、家族のコミュニケーションと不登校しているお嬢さまの進路です。

これをごちゃ混ぜにして対応するのは難しいです。優先すべきは進路です。進路の話題を通じて会話の糸口を見つける必要があります。

進路の考え方ですが、不登校が長期化していること、学習の遅れが大きいことを考えると、全日制の進学校への進学はまず諦めたほうがよいです。かりにここからハッパをかけて頑張らせて、進学校に入っても同じように、不登校になる可能性が大きいです。通信制やチャレンジスクールなど不登校経験のある生徒を受け入れてくれる高校はたくさんあります。そして、そこから大学や専門学校に進学する生徒さんも少なからずいます。

不登校の原因はなかなか分かりません。ただ、不登校している娘さん自身も次が中学3年で進路を考えないといけないことは分かっています。でも、学校行っていない、勉強していない自分なんかはダメだと思って、この先どうしたらよいのか不安になっています。そしてその不安と逃避するための昼夜逆転であったり家族とのコミュニケーションを避けるということが起きてきます。お金を派手に使って遊ぶのも逃避です。同時に本来向き合うべき悩みと向き合っていない自分を責めているところもあります。

進路の悩みがお母さまが思っている以上に大きく影響しています。

また、家族のコミュニケーションを避ける理由として「こんなになにも頑張っていない自分が家の中にいるのは申し訳ない」という気持ちを持っています。食事をしないのも「自分が食べるのは申し訳ない」とも思っています。

こういった気持ちでいるという前提で娘さんへの接し方を考えてみます

具体的にはどう声をかけたらよいかということです。進路の悩みを切り出すのは勇気はいりますが、ダイレクトに尋ねることをお勧めします。

そろそろ3年生になるけど、高校はどうするの?

次のことを考えたいんだけど、なんかやりたいこととか行きたい学校とかあるの?

などです。まずはきっかけづくりとか、関係をよくしてからと思われがちですが、わざとらしい雑談は逆効果です。不登校している中学生が進路で悩んでいないわけはありません。ただ、この時に娘さんの応答を期待してはいけません。無言でいることは、納得しているかどうかは別として、表面的な同意と捉えて構いません。万が一嫌だったら部屋に勝手に入られたときのように怒ったり、反発したりします。

応答はないけどこちらは、進路のことを考えているんだということを伝えることで、ムスッとしたところは変わりませんが、少なくとも娘さんとしては自分が進学しても良いんだという気持ちを持つことができます。あんまりしつこく毎日やると重くなるので、何かの折に、進路のはなしを直接切り出してみてください。

大切なことは一発でうまくやろうとしないことです。何度か、無視されたり、暗い表情が返ってきたりもありますが、その背後にある娘さんの気持ちは戸惑い何です。学校に行っていない、勉強もしていない自分が高校進学なんて無理だし、行けるとも思っていないのです。

進路のことについて親たちは考えている。話したいならいつでも相談してね。という心構えで声をかけていけば必ず通じます。

反応がなかなかないときは・・・

とはいえ、全く反応がない場合だってあります。その時には具体的に決めたものを提案することです。

ちょっと○○高校の説明会に行ってみない?

○○高校の資料があるから読んでみる?

というものです。全日制のものでも良いですができれば、通信制やチャレンジスクールのものでも良いです。全日制のものを示すと、かなりプレッシャーになります。そして、全日制の高校以外の選択肢があることを示すこともできます。

本人が決めないなら親が決めるというのは乱暴ですが、不登校の回復のプロセスとして重要なのが自分で決めていくということです。人生の選択を自分で決断していくことが自立していくうえで欠かせません。それをあえて、破っていくのです。

不登校は自立のプロセスです。学校に行かないことを決断するのは相当な勇気がいります。そしてそれを実行するというのはかなりの決断なのです。それなのに、自分の進路を決めようとしてくる親への反発は大きくなります。ここで大切なことは、反論させることを目的としていることです。

不登校している娘さんが、素直に親の言うことを聴くということはありえないことなのです。そのためには親が決めるということを阻ませる必要があります。

反論して来たら、「じゃあどうしたいの?」と踏み込んで尋ねてみてください。この時の注意点としては謝らないことです。謝ってしまうと、娘さんが自分の意見を出すことは良くないことだと認識してしまうからです。

このやり方は、荒療治に見えるかもしれません。しかし、遅かれ早かれ進路のことは話しあわないといけないのです。実際の決定は1年後ですが、それに向けた準備は早いほうがよいです。

娘さんと対話の糸口をつかむために進路のはなしを切り出してみてください。

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中学3年で不登校 進路はどうしたらよいのだろうか?

中学3年生で不登校になると「高校はどうするのか?」が最も大きな問題となります。

公立中学でほとんどの生徒が受験しますし、私立の中高一貫校であっても、長期で休んだり、成績が振るわなければ高校進学に響くこともあります。

進路の問題は大きくのしかかってきます。

そもそも中学にすら行かないのに、高校に行ってなんとかなるものなのか?

という疑問もでてきます。

親としては子どもの意思を尊重したいという思いもおありかと思いますが、「せめて高校ぐらいは出てほしい」というのが本音ではないかと思います。

もちろん、不登校している生徒さん自身にとっても進路の問題はストレスの大半を占めています。

なぜストレスになるかというと、生徒さんの気持ちとしては高校に進学したいからです。

中学校にはいかないのですが、高校には進学したい気持ちはあります。

これまで関わってきたケースで、中学を卒業して高校進学を選ばなかった生徒はいません。今のところ途中で辞めたという話も聴いていません。その中には中学に入学式の1日しか行っていないという生徒もいました。

それでも通信制の高校に行き、卒業して社会人として働いています。別の生徒は大学に進学したというケースもあります。

子どもが不登校をすると、それまで考えていた進路設計が大きく変わってしまいます。この先どうなってしまうのかが分からなくなるのです。

不登校の生徒さんのストレスが大きくなる理由はそれまで考えていた進路を実現しないと思ってもがくからなのです。

進路は変わっても大丈夫です。

通信制やチャレンジスクールなど、本人が当初は想定していなかった進路かもしれません。

しかし、実際はそのほうが本人にあっていたりもします。仮に、中学を頑張って乗り切って、全日制に行っても、出席日数と日々のハードな課題をこなすことで疲弊してしまい、高校で不登校をするということも考えられます。

進路選択は不登校している生徒さん、特に中学3年生にとっては死にたくなるほどつらい課題です。

世界は広いし、高校がどこであっても、行った先で頑張れば必ず未来は拓けてきます。

進路変更が不本意であったとしても、将来必ずその進路選択をせざるを得なかったことが、自身にとって最善の道だったと自覚することになります。

本人の意思も確かに大事ですが、今は不登校しても受け止めてくれる高校がたくさんあります。

選択肢を提案することで、生徒さんの将来への希望を見いだすことができます。

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昼夜逆転生活の中3の娘が口をきいてくれません。どうしたら話ができるでしょうか?

Q中学3年の娘がいます。不登校になってから昼夜逆転の生活が続いています。夜は動画を見たり、友達と電話をしているようです。食事も不規則になっており、部屋も全然片付けず、ごみ屋敷みたいで不潔です。私(母)が掃除をすると「勝手に入るな」とめちゃくちゃ怒鳴ってきます。進路のことも考えないといけないのですが、家族からの声がけにはほぼ反応しません。仕方なくLINEでメッセージをしますが、なかなか既読になりません。返事もありません。何を考えているかもわからないし、本当にどうしていいか分かりません。

間に入ってくれる人が必要です

A不登校というよりも引きこもっているというほうが正しいかもしれないですね。家族との会話もなく、自分の世界だけにとじこもっている。しかも昼夜逆転していて不規則な食事、散らかった部屋となると健康面も心配になりますね。すぐに話ができるようになるかというとそれは難しいところがあります。コミュニケーションが取れない原因は誤解にあります。同居する家族に対しては「学校に行かない自分を責めている」という思い込みがあるかもしれません。それは、学校に行かないで食事をし、学校に行かないのにお風呂やトイレを使い、学校に行かないのに部屋を占拠している。そんな自分が認められるはずがないという思いがあります。同居家族に対しては強い抵抗がありますので、第三者の介入をおすすめします。そこで互いに伝えたいことを伝えていくことが必要かと思います。第三者は娘さんが仲の良い人ならだれでも良いのですが、親御さんとも信頼関係がある人が良いです。まずは、祖父母や叔父叔母、いとこなどを頼って間に入ってもらうということがよいかと思います。そうしていきながら、徐々に誤解を解いていく、さらには間に入ってもらった人に対話の場をセットしてもらうことが必要かと思います。

娘さんの中の矛盾を認める

本人も中学3年であることは知っているし、高校受験が控えていることも自覚しているはずです。ですから進路のことを考えることは本人なりにやっていると思います。しかしながら、その話題に触れたいような触れたくないような思いがあります。それは、不登校している自分が将来のことを語るなんておこがましいという気持ちがあります。今やるべきことをできてない自分が将来何かをやりたいなんていうことを認めてもらえるなんていうことを思っていないのです。反応はないかもしれませんが、あいさつや食事をすすめるなどの言葉がけは続けることは大切です。それがなくなるとつながりがなくなってしまいます。自分の部屋に引きこもっていて昼夜逆転ということは、夜中の自分の部屋だけが唯一の安心の場になっています。こちらはそのつもりはなくても、家族という存在が娘さんにとっては緊張する要因になってしまっています。とはいえ、つながりが消えるのもさみしい状況にあります。矛盾していますが、その矛盾で苦しんでいるのが娘さんの内面世界です。

親の方が見捨てたり放置したりしない 忍耐と根気が必要

親御さんにできることはその矛盾があることを知っているということです。そのことを言葉にして伝える必要はありません。言葉がけもLINEのメッセージも、「あなたのことは大切な存在でかけがえのない私の娘なの」という思いを伝えているんだと思って発してあげてください。(鍵かっこのことばをそのまま伝える必要はありません)

今すぐ何かをしようとするよりも、雪解けをまつ必要があります。中学3年生であり、いつまでも悠長に構えるわけにはいけないという思いもあるかもしれませんが、こういう時こそ「うちの子は大丈夫」という信頼をもって接してあげることが大切です。

特に何かをするというわけではなくて、親御さんが不安を持たずに大丈夫だと思って接していくことが決め手です。無視されても反応がなくても、親御さんは子どもを見捨てていないということを忍耐強く発信していくことです。

これ以上無理と思ったら・・・

忍耐と根気が必要と書いておきながら、これまでもすでに、いろいろなアプローチを試されてきていると思います。親御さんも人間ですから、いつまでも同じ状況が続くと当然滅入ってきてしまいます。疲れたら疲れたことや、しばらく声をかけませんという情報をそのまま娘さんに伝えてみてください。何も言わずに突然、言葉がけやメッセージが途絶えると、見捨てられたと思って余計心をとざしてしまいます。そうならないためにも、親御さん側の情報を伝えておくことが必要です。そして元気になったら「今日からまた声かけていくからね」と仕切り直すことを伝えてください。何も言わないで突然はじめてしまうと変に勘ぐったりします。堂々と、声をかける、疲れた、しばらく休むなど、こちらの状況を伝えてみてください。親御さんが無理しすぎると、娘さん以上に深刻なうつ的な状況に陥る可能性もあります。そこを未然に防ぐためにも、無理は禁物です。…

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不登校した上に、ゲーム依存。どうやったらゲームを辞めさせられますか?

Q小学6年生の息子が不登校になり、ゲーム依存になってしまいました。起きている時間はほとんど画面と向き合ってゲームをしています。辞めるように注意しても全然聞きません。取り上げると暴れて手を付けられません。放っておくわけにもいかないし、かと言って暴れられてもこまります。どうしたらよいでしょうか?

対話の糸口を見つける

お母さまが依存と感じるくらいのめりこんでいるのであれば、注意程度はきかないと思います。目に見えているのはゲームに依存している息子さんですが、息子さんはそのゲームで何を得ているのでしょうか?もし、会話がないのであればゲームの内容について尋ねてみてください。面白いと思ってハマっているわけですから、話してくれるはずです。そしてそこから対話の糸口を見つけてみてはいかがでしょうか。その時の注意点としては、ゲームはくだらないとか、辞めてほしいというこちらの言い分を控えて、ひたすらゲームについて語らせます。そこをしっかり傾聴してあげてください。これまで関わった事例の中であったことですが、ゲームを100%楽しんでいるわけではなく、そのゲームの世界の不満や義務感でやっている思いなどを吐露してくれます。通常そこで「そんなにストレスがあるならやめなさい」と言いたくなるところですが、そうは言わずに「ゲームもいろいろ大変なのね」くらいで、ゲームの世界の不満に寄り添ってあげてください。対話をすることで、ゲームをしている息子さんを徐々に認めていくことができます。

息子さんの心の中で起きていること

息子さんの心の内をのぞいてみましょう。ゲームに依存しているというその姿や態度からどんなメッセージを読み取ることができるでしょうか?その行為を通して親御さんに何を分かってもらいたいと思っていると読み取りますか?

ゲームをして、その世界に没頭している息子さんの心のうちから発せられているメッセージは、「不登校している上に勉強もしないダメな自分でもお前は、親としておれを受け入れるのか?」という親を試しているところがあります。ここでゲームを辞めるようにだけ働きかけると、子どもさんは「ゲームをしている自分を否定された」と感じますし、放っておくと「見捨てられた」と思います。一方で息子さんがすきなゲームの話題をすることで、息子さんとしては自分の一部(ゲーム)を認められたと感じます。

依存先は自分の一部

子どもさんが何かに依存している場合はその依存しているものごとを自分の一部としてとらえている可能性が大きいです。もちろん意識的ではなく無意識的な世界ですが。その一部か徐々に認めていくことができれば、息子さんも自分が受け容れられた、分かってもらえたと安心します。ゲームに依存するということは現実世界からの逃避でもあります。それは緊張状態から逃れる手段です。学校に行かないというだけで自分を責めているし、親御さんが心の内で学校に行ってほしいという思いがあることを感じ取ってそこにも自責を感じています。その緊張状態がある以上ゲーム依存からはなれることはありません。だからこそ、彼の一部であるゲームを対話の材料とすることで、現実世界が安心の場であることがわかると、ゲームに頼らなくても安全で居られますから依存は解消されていきます。

解決に向けて

・依存しているもの ゲームを否定しない

・ゲームについて話を聴く 否定せずに話をして、分からない言葉や面白さについて話してもらう。100%肯定して話す。

・ゲームの世界の不満を語っても、辞めるように促さないで「大変なのね」と共感する。

・ゲームをしている姿からメッセージを読み取る。そしてそのメッセージへの応答をする…

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不登校の中学生が学校に行きたくない本当の理由が言葉にならないのはなぜか?

中学生のお子さんが「学校に行きたくない」と言ってきた。理由を尋ねると「頭痛がする」とか「お腹が痛い」と身体症状を訴えることがあります。これが事実であれば回復すれば学校に行きます。不登校の場合も頭痛や腹痛は実際に起きています。ただ、学校を休むことが決まるとその不調は回復することが多いです。

学校に行きたくない本当の理由はなかなか親には言いません。というより、親に言えるくらい明確な理由であれば、対応できます。多くの場合は自分で言葉にできない、なんだかわからない理由から来ています。

だからこそ、不登校をしています。自分でもわからない。でもなんか、学校に行くのは今の自分にとっては違うという思いが、彼ら彼女らの頭の中にあります。3つのポイントで見ていきましょう。

1不登校の理由はあるけど決定的な理由が分からない 2学校に行く意味を考えすぎている 3問いが深すぎて抜け出せなくなっている 1不登校の理由はあるけど決定的な理由が分からない。

不登校の理由は実は本人も良く分かっていない。

親としては、「勉強についていけないのかな?」 「クラスの雰囲気になじめないのかな?」 「実はいじめられているのかもしれない・・・」などなど、いろいろと不安な要素が思いつくが、いまいちどれもあてはまらない。

本人に問い詰めても、はっきりした答えは返ってこない。ただそこにあるのは「なんとなく学校に行きたくない気持ち」そんなことを話しても分かってもらえないから、話をしない。

理由が明確にあれば言葉にすることができる。対処の仕方もある。しかし、理由が不明確なほうが多い。少なくとも私が接してきたケースは理由は分からない。分からないけど、気が付いたら前を向いて、次の進路を見出していく。

むしろ、理由を具体的に言葉にしているときの方が表面的で危うい。

「いやな奴がいる」「○○の授業の先生がこわい」「クラスに仲の良い人がいない」

いじめが明確にある場合は別として。これらの理由は不登校の理由の核心ではないことが多い。かりにこれらの問題を処理しても、学校には行かない。次なる課題を言ってくるだけである。

これは不登校の理由を取り繕って、しばしの休息を得る。その間に自分で何とかしようという思いが子どもの中にはあるからである。

2学校に行く意味を考えすぎている

「なんで学校に行かないの?」

と問いかけても

「なんか分からないけど行きたくない」

というモヤっとした理由が返ってきても、学校を休ませるに十分な理由とは認めることが難しい。

不登校のお子さんを持つ母親のカウンセリングで受ける相談で多いのが「うちの息子(娘)はなんで学校行かなくなったんでしょう?」というもの。そこが分かれば、「それなら仕方ない」と思えるかもしれないし、親としても子ども不登校を受け入れられる。しかし、実際は行きたくない理由は不明確なままです。

そこを追及しても、子どもは苦しくなるばかりで、不登校の解決には向かわない。表面的な理由を取り繕っても、それとは別に本当の理由がある場合もこれと同じだ。

自分でも分からないけど、学校には行きたくない。理由が言葉にできない理由の一つに自分のことを変な奴だと思っているというのが挙げられる。

不登校している中学生が話してくれたのは、意味を問うているということ。

学校に行く意味勉強する意味生きる意味生まれてきた意味

答えの出ない哲学的な問いが頭の中でグルグル回っている。そんな中で、

幸せって何だろう?豊かになるってどういうことだろう?勉強して幸せになれるのか?自分が生きていることで誰かの役に立てるのだろうか?自分って何?個性って何?私にそんなものあるの?

さらに悩みが深まり、一人の頭の中で哲学対話がグルグルと回っているのだ。

思春期の若者にとって答えの出ない問いを考え続けるのはとても苦しいことだ。大人でもしんどい。意味を問うには中学生の思考力や知識ではあまりにも考える要素がすくない。だからその問いに飲み込まれてしまいグルグルと同じところをループする。

そしてこんなことを考えている自分は変だと思っている。だって、学校に行っているクラスメイトたちは、そんなこと考えずに、毎日学校に行けている。ある意味うらやましいけど、なんで疑問を持たないんだろうと不思議にさえ思ってしまう。

言われたことだけをやっていく学校に毎日通って楽しいのだろうかと思う。一方で大人はこれらの答えをみんな持っていて立派だと思ってもいる。自分は変だ、他の子とは違う。でも、そう思われたくないから、とりあえずの理由を繕って休む。

学校に行かない本当の理由はお子さんの内面世界で答えの出ない問いを考え続けているからこそなのです。

3問いが深すぎて抜け出せなくなっている

不登校の理由が明確でない場合は、まさに頭の中の哲学対話から抜け出せない状態だ。ここから抜け出すには、この頭の中で起きている哲学対話をすることは良いことなのだと肯定することが第一にあげられる。

心の成長としても、意味を問うことは健全だ。自立のプロセスでは必要なことなのです。ただその考えを深めすぎて苦しんでいる。

そこに寄り添っていく大人が必要となる。「お母さんも昔、自分がなんで生まれてきたんだろうかとか考えていた」とか「自分って何だろうかなんて、未だに分かっていない」という哲学対話に乗っかっていく必要がある。こちらから話しかける必要ななく、子どもさんがぽろっと「学校行く意味あるのかな?」など意味深な問いを投げてきたときがチャンスととらえて話をする。

ただ、これを一緒に住んでいる親がやるのはリスクもたかい。中学生は大人を疑り深く、繊細な時期だからだ。不登校するくらい感受性が豊かなお子さんであれば「はは~ん、さてはお母さんどっかで誰かに入れ知恵されたな」と感づかれてしまう。

そして、「休んでいいといいながら、結局学校に行かせようとしているんだな」と。当事者同士で、このような疑念が生まれてしまうと、返って関係がぎくしゃくしてコミュニケーションに距離ができてしまう。

 4 意味を問う哲学的なグルグル思考から子どもが脱するために

そこで、第三者であるカウンセラーの出番である。

VCAのカウンセリングの考え方はこちらのコラムへ>>>>

不登校の生徒さんが頭の中で考えている哲学対話の原因は自己否定です。

人と比べて自分を変だとか自分はおかしい、狂っているという思いがあるから、自分自身が意味を問うていることを認めたくないし、人にも話せない。誰でも、意味は問うているし、問わずに生きているとしたら、それこそ心配なことである。その時期が早すぎる、または問いが深すぎるからこそ、精神的に疲れて学校に行くということすらできない状況になる。

哲学対話から抜け出すための着地点は「私は私でいいんだ」という自己肯定の視点を持つこと。この肯定を親でも学校の先生でもない大人からもらうことは、本人の自分に対する責めや、自分はおかしいと思っている認知を変えることができる。そして、これこそが、言葉になかなかできないけど、不登校する中学生たちが求めているもんである。ここが満たされると、不登校は解決に向かっていきます。

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1週間で不登校に対する考え方が変わり、お子さんとの関わり方が改善します

不登校やキャリア教育に関するコラム 空気が読めない子 ― ASD(自閉スペクトラム)の理解 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る (シリーズ:子どもの「しんどさ」を生物心理社会モデルで理解する 第6回) 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

「空気が読めない」と言われる子がいます。集団の中で浮いてしまったり、場の雰囲気が変わっても気づかない。でもその背景には、「感じ方がちがう」世界の存在があります。

ASD(自閉スペクトラム症)は、理解力や努力の問題ではなく、情報の受け取り方・感じ方・構造のとらえ方が異なる発達特性。今回は、感覚のちがいと認知のスタイル、そして支援の考え方を、生物心理社会モデルを軸に整理していきます。

🔗 参考:シリーズ第1回「子どもの“しんどさ”をどう理解するか」https://visionary-career-academy.com/archives/4178

ASDとは何か ― 世界の感じ方が違う子どもたち

ASDは Autism Spectrum Disorder の略で、日本語では自閉スペクトラム症と呼ばれます。「スペクトラム(spectrum)」とは、光のように連続した幅のある性質という意味。その名の通り、ASDには重い・軽いといった線引きではなく、**社会性・コミュニケーション・感覚処理などの特性が人によって異なる“グラデーション”**があります。

ASDの子どもたちは、他者の気持ちや意図、文脈を読み取る脳の働き方が独特です。それは「理解力の欠如」ではなく、「認知スタイルのちがい」。世界を構造的・規則的にとらえる一方で、人の心やあいまいな社会ルールを把握することが難しいのです。

感覚過敏の世界 ― 五感のチューニングが異なる

ASDの子どもたちは、私たちが当たり前に受け取っている感覚情報を、まったく違う強さで感じています。

聴覚過敏:教室のざわめき、蛍光灯の「ジーッ」という音、鉛筆のカリカリ音などが、痛いほど響く。

視覚過敏:蛍光灯の光や人の動きが刺激になり、目をそらす。

触覚過敏:洋服のタグや靴下のゴム、人との接触が苦痛に感じられる。

嗅覚・味覚のこだわり:におい・食感・温度への過敏さから偏食が起こることも。

こうした過敏さは「わがまま」ではなく、脳が感覚刺激をうまくフィルタリングできないために起こります。外界の情報が“全開のボリューム”で流れ込んでくるため、本人にとって世界はしばしば「うるさい」「まぶしい」「痛い」場所なのです。

💡 支援のヒント「静かな場所で話す」「光をやわらげる」「触れずに声で伝える」――環境を一段階“静かにする”だけでも、本人の安心感は大きく変わります。

認知特性とWISC-Ⅴで見えるASDの特徴

発達検査(WISC-Ⅴ:Wechsler Intelligence Scale for Children – Fifth Edition)では、ASDの子どもたちの“感じ方のちがい”が、認知プロファイルとして明確に表れます。

指標 内容 ASDで見られやすい傾向 言語理解(VCI) 言葉の意味理解・常識・表現力 語彙は豊富でも、比喩・冗談・曖昧な表現の理解が苦手 視覚的推論(VSI) 図形・パターンの処理 強み。構造や規則を見抜く力が高い ワーキングメモリ(WMI) 聴覚的短期記憶・思考保持 聴覚過敏などで集中が途切れやすい 処理速度(PSI) 単純作業のスピード 感覚刺激への敏感さ・慎重さから低く出やすい 流動的推論(FRI) 新しい課題への柔軟対応 パターンの理解は得意だが、曖昧な課題は苦手

ASDの子は、構造化された課題に強く、曖昧な状況に弱いという特徴があります。この特性が、学校生活や人間関係で「空気が読めない」「急な変化に弱い」と見られる背景にあります。

🔍 ADHDとの比較ADHDでは「注意の持続」や「衝動の制御」の難しさが中心で、WISCではワーキングメモリや処理速度が低めに出やすい。ASDでは「意味づけ・構造化」の弱さが中心という違いがあります。

生物・心理・社会モデルでみるASD 生物的側面

脳の情報処理ネットワーク(前頭葉―側頭葉―小脳連関など)に特性があり、光・音・触覚への感覚過敏・鈍麻も見られます。こうした感覚処理の違いが、日常の不安や混乱のもとになることがあります。

心理的側面

ASDの発達は、「認知発達(考える力)」と「関係発達(他者とつながる力)」が非対称に進みます。物事のルールや法則を理解する力は高いのに、人との関係づくり(社会的参照・共同注意・模倣)には時間がかかるのです。

社会的側面

ASDの子は、社会の“暗黙の了解”や“空気”といった非言語的な文脈を読み取るのが苦手です。社会の側が「わかりやすい構造」を示してあげることが、適応の第一歩になります。

幼児期に現れる兆し ― 社会的参照の困難

ASDの特徴は、幼児期から現れます。赤ちゃんは通常、親の表情や声を“参照”して行動を決めます(社会的参照)。しかしASDの子は、その参照がうまく働きません。

親の表情を見ない

名前を呼んでも反応が鈍い

一人遊びが多い

こうした様子が、3歳児健診などで指摘されることもあります。「関係発達の遅れ」が、後のコミュニケーションの土台に影響していきます。

構造を愛する ― ルーティンとこだわりの世界

ASDの子どもたちは、世界を“変化”ではなく“規則”で理解します。朝の支度の順番、登校ルート、食事の配置――その子なりの“ルーティン”があり、崩れると大きなストレスになります。

💡 ルーティンは安心の構造ASDの子にとって、こだわりや決まりごとは安心の拠り所。「なくす」ではなく、「理解し、活かす」視点が大切です。

また、規則性への敏感さがあるため、鉄道・時刻表・カレンダー・数字・天気など、明確なパターンを持つものを好む傾向があります。これは「構造を通して世界を理解したい」という自然な表れです。

男性に多い理由とカモフラージュASD

ASDは、男性が女性の約4倍といわれます。生物学的には胎児期のテストステロン量が社会的認知の発達に影響しているという説があり、社会的には女子が模倣・観察によって特性を隠しやすいことも関係しています。

「カモフラージュASD」と呼ばれるタイプは、周囲に合わせようとしすぎて思春期以降にうつや不安症を併発することもあります。

ADHDとの違い ― 「調整」と「構造」 観点 ADHD ASD 主な困難 注意・感情の調整 状況の構造理解 困りごとの原因 「わかっていても抑えられない」 「何が起きているのかわからない」 支援の方向性 刺激を減らす 環境を明確にし見通しを与える

ADHDでは環境の刺激を調整し、ASDでは環境の構造を明示することが支援の鍵になります。

支援のキーワード ― 「見通し」と「安心」

ASD支援の本質は、「次に何が起こるか」がわかること。予測可能な環境が、最大の安心を生みます。

スケジュールを見える化する

状況の変化を事前に予告する

ルールや手順を言語化・明文化する

🧩 柔軟性は“学ぶ”もの安心できる構造の中で、少しずつ変化に慣れていく――それがASD支援の第一歩です。

家庭でできるASD支援のポイント

説明は具体的に、順序立てて 「ちゃんとして」ではなく、「まず〇〇して、次に〇〇してね」と段階を示す。

感情ではなく構造で伝える 「どうしてそんなことするの!」ではなく、「それをすると〇〇になるよ」と結果で伝える。

変化を予告する 「明日は時間割が変わるよ」「お客さんが来るよ」と事前に知らせて安心をつくる。

まとめ ― 「空気を翻訳する社会」へ

ASDの子どもたちは、「空気を読まない」のではなく、**“空気があいまいすぎて読み取れない”**だけ。

社会の側が「空気をわかりやすく伝える」工夫をすれば、彼らは自分の力を安心して発揮できます。

🌱 ASD支援とは、「空気を読む力」を求めるのではなく、「空気を翻訳する力」を社会全体で育てること。

参考資料・引用

American Psychiatric Association (2022).……

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不登校のお子さんとのコミュニケーションが回復する3つのステップ

不登校が起きるのは子どもの中に何らかの言葉にならない言葉が生まれてしまったからです。その言葉を聞き出すことができれば、解決が早いのですが、事態はそう単純ではありません、むしろ、子どもとの会話自体ができなくなっている親子もたくさんいます。この状況が長く続くと当然不登校の状況も改善しません。仮に学校に行き出しても親子の関係性が悪いというのはその後も問題として残るのです。ではどうすれば子どもとコミュニケーションが取れるようになるのか。ここでは具体的な3つの方法をお勧めします。

コミュニケーションを取り戻す ステップ1 声がけ—あいさつと体調を気遣う言葉

不登校の初期はなかなか言葉を発することさえありません。部屋にこもったまま、食事も別々。声をかけてもそっけない返事が返ってくればいいほうで、人によっては2週間くらい息子の声を聴いていないという方もありました。言葉を発しない理由は、親と話をすると「学校に行け」とか「勉強しなさい」と言われるのではないかという思いがあります。また、学校に行けていない自分が家でご飯を食べてもよいのかということも疑問に思い、自分の情けなさと、親への申し訳なさとが入り混じる中、それでも頑張ることができない自分を責めているのです。そんな状態だからこそ言葉を発しないのではなく、発したくても発せないのです。

ではどうやって子どもコミュニケーションをとるのか。最初はあいさつと、体調を気遣う言葉です。上にも書きましたが、食事することすら罪悪感を感じているので「ご飯食べる?」も最初は結構きつかったりします。反応があってもなくても、声をかける。それで反応があればよいですが、反応がなければせいぜい2回くらいにしておかないと、親御さんの気も滅入ってしまいます。初めのうちは、お互いにびくついてなかなかよそよそしくなるとおもいます。でもそこから始めましょう。それまでの日常とは異なるのですから、それは仕方のないことなのです。新たに関係を創り直すくらいの気持ちでちょうど良いところです。

体調を気遣う言葉をかけるのは、子どもに対して「あなたのことを心配しているんですよ」というメッセージになります。不登校している子どもにしてみれば、そういう言葉がけに助けられているところがあります。

コミュニケーションを取り戻す ステップ2 話題を広げる—何気ないニュース 昔話

少しずつ言葉が出てくるようになると、話題を少し広げます。最近のニュースの話など、第三者の話をします。無理に子どもさんの興味関心に合わせるようなことをはしないで、お母さんの趣味だったり気になることだったりを話します。「そんなのどうでもいい」と思いそうな話題をお勧めします。なぜならどうでもいいような話じゃないと付き合ってくれないからです。「なんで不登校したの?」「部屋にこもって1日なにしているの」「いつになったら学校に行くの?」なんていう話題は本人にとってはどうでもよくない話題で、そういったところに触れてほしくないから黙っている側面があります。ちょっと話ができるようになったからと言って、学校や勉強、今後のことについて話題を振るとまただんまりを決め込まれてしまいます。もちろん、子どもさんのほうから振ってきたのであれば話をすることはアリですが。

あとは、昔話です。これは家族の昔の話だったり、お母さんやお父さんの昔の話などです。本人が小さかったころの話などです。自分が話題に出てくると意外と食いついてきて「あのときは」と話しだしたりもします。ニュースなどの表面的な話題ばかりでははなしが深まりません。とはいえ、一番ききたいところを話題にもできないとなった時に、家族の昔話は有効な話題の一つです。うまくいくと、笑いながら話しができます。

コミュニケーションを取り戻す ステップ3 話を聴く

不登校のことで相談に行くと「お母さんがお説教したりしないで、お子さんの話を聴いて差し上げてください」なんていうアドバイスをもらいます。確かに話を聴くことは効果的です。本当に話すべきことを話す相手というのは「信頼できる」存在です。小さい子どもは無条件に親を信頼しますが、思春期になると親を一度疑います。一人の人間として見るわけです。その時に信頼できるかどうかを見定めています。生みの親であっても信頼できないと子どもが判断したら、子どもは大事なことを話しません。話が聴けるというのは信頼関係が気づけているからこそできる芸当なのです。

では、信頼関係を築くために必要なことは何かと申しますと、それが雑談なのです。えー?と思われるかもしれませんが、雑談できるかどうかが信頼できる相手になるかどうかの分かれ目なのです。これまで不登校の親子に関わってきて、うまくいくケースは親子で雑談できるケースです。これがない場合は、話題がないのでいきなり本題に入るか、話をしないのどちらかしかありません。多くの子どもは話をしない選択をします。そうやってコミュニケーションが断絶をすると解決には向かいません。

ステップ2で「家族の昔話」をすると良いと申し上げたのは、雑談の話題になりうるからです。共通の趣味がなくても、子どもさんと好みが違っても、家族の昔話は共通の経験ですから、話として成り立ちやすいのです。この雑談ができると、話を聴くことに足る存在として子どもが親を認めます。するとあとは、子どもが話をしてくるのを待つと良いでしょう。雑談ができるようになれば、向こうから話をしてくることも珍しくなくなります。そして「あのね・・・」と意を決して話をしてくれるようになります。

雑談ができ親を信頼するようになると、子どもの行動が変化します。それは学校に行くこと以外は普通に家で生活するようになるということです。生活リズムも朝起きて夜寝ること、食事もとる、場合によっては家の手伝いや勉強しだしたりするのです。ここまでの行動が見られると親を信頼することができているので、話してくるのを待たずしても、「学校に行けなくなったことの話してもいいかな?」と話題を持ち出すこともできます。

親御さんに自分の辛さやさみしさを受け止めてほしいというのが子どもさんの本音です。しかしそれができないで苦しんでいるのです。言葉をかけ続けること、そして雑談することを通して、子どもさんの気持ちに寄り添うことができれば、不登校の状況は確実に改善していきます。

不登校したお子さんになぜコミュニケーションが必要か?

それは自己肯定感との関係があります。不登校をすると学校に行けない自分を責めて自己肯定感がさがります。不登校する理由は様々ありますが、人間関係で起こることも少なくありません。いじめやイジリ、ちょっとバカにされたりする、そんなことが積み重なっていけなくなるのです。バカにされないように、文句言われないようにと気を付けながら学校に行くことから緊張感が生まれ精神的に疲弊して学校にけなくなるということが考えられます。不要な緊張ほど人を不幸にするものはありません。不登校になったことでも肯定感が下がるし、場合によってはそこに至るプロセスで自己肯定感が下がっているということもあります。もともと、下がっていた肯定感が不登校をすることでさらに下がってしまいます。このネガティブな決めつけは不登校が長引くと、自身のセルフイメージとなってしまいます。そうなると、「自分のダメさ」を集めるようになります。言い換えると悪いところばかりに目が行くようになるということでもあります。自己肯定感を低下させるのは自分を責めることです。ネガティブな決めつけによるセルフイメージが出来上がってしまうと、その子はできない自分ばかりを見ようとしてしまいます。しかし、自己肯定感が低いままで不登校が解決することはありません。不登校の解決は学校に戻ることにとどまらず、自分が自分で在ることを良しとして、自立して前に進んでいくことにあります。単に学校に戻すだけでは解決に至るどころか、余計に悪化する(再度不登校になる、のちに引きこもるなど)ことさえ考えられます。不登校になった児童・生徒の肯定感を高めることは、その後の人生においても重要なことです。

自己肯定感の回復にとって最も有効なのが会話なのです。何気ない会話ができる存在がそばにいることで「自分がここにいていいんだな」という存在にたいする肯定が強まります。何かができるからすごい、学校行くから良くていかないからダメ、ではなくて、自分自身はそのままでいいんだということを身に染みて感じてもらうことで、自己肯定感が回復し、自立の道を歩んでいくことができるようになるのです。…

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勉強嫌いをうみだす母親の教育熱

1 子どもが勉強嫌いになるのは?

以前に都心にある小学校に勤めておりました。まさに大都会であり、長崎の田舎育ちである私からするとその環境の違いに驚くばかりの日々でした。東京の特に23区内の多くの小学生は中学受験をします。遅くても5年生、早い子はも低学年のころから塾に通います。塾で勉強すること自体は悪いことではないと思います。問題はその勉強のさせ方にあります。

膨大なテキストやドリル、学校の内容よりも早く進む先取り学習、その勉強を「やらせる」というスタンスで、親がスケジュール管理をする。やったかどうかのチェックだけではなく、横について一緒に勉強する。できていないところを徹底的に理解させる・・・それは、子どもさんの将来のことを思ってのことだと思います。しかしながらここに矛盾があります。中学受験を経て私立の学校に入ったら、さらに勉強をすることになるのですが、中学受験で無理矢理勉強させられた子どもたちは、勉強嫌いになることが多いです。むしろ、中学受験というヤマを登り切ったらホッとしたかのように勉強から手を抜きます。

これは実際に私立の中学校で働いているときに、1年生を担任した時に感じました。1学期はまだ緊張感もあり勉強しようという意志がありますが、2学期ごろから崩れていくのです。なぜ子どもたちが勉強嫌いになるかは簡単です。それは目的がないからです。

何のために勉強するのか?

この問いに自分で向き合い、自分なりに答えを出さない限り、自分で勉強するようにはなりません。

○○中学合格を目標に、小学生の放課後の時間を大量に投資しながらも「何のために勉強するのか」という問いに向き合うことがなく、ひたすら、問題を解かされテストを受けさせられという勉強をしていることは、生きていくために必要な学びにはつながりにくいのです。

通塾して一生懸命勉強したかいあって、良い中学(偏差値が高い・有名どころ)に合格しました。しかし、入ったあとはどうなるのでしょうか?良い大学(偏差値が高い・有名どころ)を目指して頑張る、頑張らされることになるわけです。中学が大学に変わっただけで、そこに本人の思いや考えはないのです。一般的に言われる良い大学に行くことで人生が保障されるということはなくなりました。これからは何を学び、何のために行動するのか。目的意識を持った人が必要なのです。

2 良い子が突然起こす問題行動

勉強に対するストレスは目に見えないところに現れています。

増田修治・白梅学園大学教授(臨床教育学)が小学校教員らに実施したアンケートでは 「良い子をふるまう子が増えた」という回答が1998年35.4%から48.5%に増えたという調査結果が報告されている(https://www.asahi.com/articles/photo/AS20200601000141.html)

親に無理矢理やらされる勉強を従順にこなしていく。これは一見良い子であり、賢い子になるだろうという期待を抱かせます。そして、やや自慢げに「うちの子はよく勉強するんです」なんてママ友なんかに語る。そういうのを傍らで見ている子どもは「親を喜ばせようと」頑張ります。

無理矢理やらされる勉強というけど、うちの子は塾に行きたい?ときいたら「うん、行きたい」と言いました。というのもそうです。親を喜ばせたい動機があります。それはその場の子どもの判断というより、それまでのかかわりの積み重ねです。「本当は友達とサッカーをしたいんだけど、お母さんにそんなこと言ったら、悲しませるだろうな。」という内面のつぶやきを押し殺して、良い子をするのです。いままで良い子を振舞ってきた以上、それは崩せないのです。

しかし、良い子を振舞い続けるのには限界があります。それは本来の自分ではないからです。どんな名優であっても、役割を演じ続けて一生を終える人はいません。演じる役は所詮本人ではありません。しかし、子どもたちはそれを演じ続けないと「親を喜ばせられない」と強く思っています。自分じゃない自分を生きることは、大きなストレスです。

「やりたくない」とか「うるせぇな」と反発してくれるのであればまだましですが、そういうこともなく、おりこうさんを過ごす。そのひずみは、学校を始めとした子どもとの人間関係に出ます。

人のものを盗る・隠す・勝手に捨てるものを壊す友達が嫌がることを口にする授業の邪魔をする—先取りしているからつまらない暴力をふるうなど

一方で異常な行動もとることもあります

トイレを流さないおもらし・おねしょをする万引きカンニングなどの不正行為リストカットなど

普段は良い子でとても勉強熱心。そういう子が突然問題行動を起こす。学校に呼び出されて「まさかうちの子がそんなことするはずない」と思っても現実に起きます。そうなると、「家ではそんなことはなかった。学校の指導が悪い。」「クラスの○○という生徒が悪い影響を与えている」信じられない事態を受け入れられないで、責任転嫁したくなるわけです。学校にかみつきすぎると「モンスター」扱いをされます。

ここで、表面ではなく、子どもの内面に目を向けましょう。表面的には問題行動、場合によっては警察のお世話になるようなこともあるかもしれません。しかし、問題を起こすというのは、子どもからのSOSなのです。心の中がいっぱいいっぱいになってどうしようもない。本当は良い子ではない、良い子を演じ続けることができない。それを言葉ではなくて行動で示しているのです。しっかり勉強して私立の中学校にはいったお子さんなら善悪の判断ができないなんてことはありません。それでも悪いことをしてしまうのには、何かしら意思があるのです。それは本人でも気づいていないことかもしれません。

別の見方をすると、親に対する復讐ともとることができます。無理矢理勉強させて、自分のやりたいことをやらせてもらえなかったと。どれだけ頑張ってもほめてもらえず、次々と課題を与えられたこと。心の中はカラカラです。この復讐は意識せずに行われます。なんでそんなことをしたのか自分でもうまく説明できません。

問題行動が起きた時、当然ながら、悪いことは悪いと叱る必要はあります。その一方で何か大きなストレスを抱えているのではないかと、ケアする視点も必要なのです。悪事をとがめるだけではなく、親に言いたくても言えないことがあるんじゃないかということを丁寧にくみ取っていく必要があります。きっちり対応すれば、問題行動が起きても、次を防ぐことができます。むしろ、問題行動が起きたことで、親子で本音で話しあえて、関係がより深まるということも十分に怒りえます。

3 教育熱心の裏側にある本音

ここで問われるのは母親の本心です。

「子どものために」という思いで、塾に活かせたり、習い事をさせたりするわけですが、それは愛情なのでしょうか?愛情という隠れ蓑に覆われた不安ではないでしょうか。

この子が路頭にまよったらどうしよう。周りの子についていけなかったらどうしよう。子育ての失敗者と思われたくない。私がこの子の人生の責任をとらないといけない。将来仕事に就けなかったらどうしよう。

など、いろいろな不安から「勉強しなさい!」ということを口走ってしまうわけです。その言葉が、親の本心からくる激励なのか、不安からくる言葉なのかは子どもは敏感に察知するわけです。

教育熱心という表面的な行動の裏には、子どもや子育てに対する大きな不安があるのです。本当に取り除くべきはこの不安なのです。

不登校も同じですが、子ども自身に確かに問題がある場合もありますが、実は一番、かかわりのあるお母さんの問題であることも少なくありません。私が親子カウンセリングをお勧めするのは、子どもが元気になっても親の不安が強いと、子どもがその不安に負けて元通りになってしまうからなのです。問題が起きた時、誰が悪いと責めるのではなく、ここでよりよい関係を気づくためのチャンスだと思って、お子さんと向き合っていただきたいと思います。

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子どもの自立を支える3つの要素

1 子どもを一人の存在として尊重するまなざし

子どもに対してどういうまなざしを持っているか。未熟な存在、弱い存在、何もできない存在、手のかかる存在・・・確かに、その通りなのです。生まれたばかりの赤ちゃんは自分でできることはほぼありません。幼稚園肉くらいまではトイレや食事、着替えることも手伝わないといけません。小学生になっても、持ち物や学校からの連絡は親が把握して助けないといけません。しかし、これらは全て「行為」に向けたまなざしです。生活に必要なスキルの習得には、早い遅い、そして上手下手があります。でも、「何かができるから、我が子として認める」とか、「何かができないから我が子ではない」ということはないはずです。できるできないは、自分の子であるかないかの基準にはならないわけです。

自分の子として生れてきたということだけで、その子は我が子なのです。自分の子であるということは無条件なのです。我が子というだけで素晴らしい存在なのです。ところが、子どもが成長するにしたがって、「人様に迷惑をかけないか」、「この年齢でこれくらいできるようになって欲しい」とか、その子の存在ではなく、世の中の基準に沿って子どもが成長・生活するように育てるほうにシフトしてしまいます。そして、できるだけ「普通」に育つように仕向けていくのです。

子ども一人ひとりが違った存在なのに同じ枠組みにはめようとする。つまり、その子の存在よりも、外側の行為を基準にした子育てがはじまると、子どもは息苦しくなります。しかし、子ども自身もそうするもんだと思って、頑張ります。

子どもの行動基準は「親が喜ぶかどうか」です。自分が頑張れば親が喜んでくれることが分かれば子どもは一生懸命になります。そして、子どもの中にも「できる自分はOK」「できない自分はダメ」という基準が生まれます。その結果、自分の本心から出てくる考えや思いよりも、他人を基準にした行動を選択するようになります。

一方で、存在に目を向けて「私の子は素晴らしい存在だ」ということを無条件に認めていくことは、子どもが「私はわたしであっていい」という思いで生きることができます。そもそも、子どもは一人ひとりことなる存在です。兄弟でも性格が全然ことなります。それは生まれた時から違いが見えます。例えば、授乳です。一回の授乳でたくさん飲む子もいれば、ちょっとずつ、細切れに飲む子もいたり、さらには、たくさん飲むけどたくさん吐いたり、朝はたくさん飲むとか、寝る前にたくさん飲むとか、そこだけ見ても、子どもは違った行動をとるわけです。そのあと身につけていく生活スキル、発する言葉、好きな遊び、どんどん違ったものになっていくのは当然です。その違いがあるのは当然のことと認めながら成長を見守るには、子どもの行為に重きを置くのではなく、存在そのものを素晴らしい存在として認めていくという大前提が必要なのです。

2 他の人と比べない

存在を認めるというテーマと関連するのが、比べる、つまり比較のテーマです。

「○○ちゃんはあんなに上手に自転車乗れるんだから、あなたも頑張りなさい」「お兄ちゃんみたいに上手に字が書けるようになってね」「妹ですらちゃんとお片付けするんだから、お姉ちゃんもやってよ」

と、同世代の友達や、兄弟姉妹で比べて、できていないことを叱る。競争心をあおって、劣っているほうを引き上げていこうとするときに使われる常套手段のようになっています。でも、これは子どもにすればとても不幸なことなのです。劣等感を植え付けられてしまい、自分は劣っている存在だという認識が生まれます。そして、別のもので勝負しようとします。たとえば、勉強で叶わないのであれば、スポーツ、まじめキャラで叶わないのであれば、ひょうきんキャラを演じる。そして、自分じゃない自分になろうと努力をします。これがうまくいってしまうと、実は悲劇なのです。というのは、自分じゃない自分じゃないと周りに受け入れてもらえないという思考が身に付きます。そしてますます、本来の自分を隠していきます。そのギャップに疲れてしまいます。毎日背伸びをして、本来の自分じゃないキャラを演じ続けることに疲れると、押し殺していた感情が爆発します。それが、外に向けば他人を傷つけることになるし、自分に向けば、自分を殺しにかかります。

また、比較の視点が子どもに持ち込まれると、人と勝負することが常になります。行動の基準が、他人に勝つこと—優越感を味わうことになってしまいます。子どもは親に言われなくても、兄弟姉妹や友達とじぶんを比べてしまうものです。そして自分を責めます。この自分への責めは、大人になると習い性になってなかなか抜けません。そして、この自分を責めるクセが普通だと思って生きると、責められることを恐れて、挑戦しない、行動を控えることをします。親の役割は、その差を埋めなさいというよりも、それこそ、存在を認めてあげて「あなたと○○ちゃんは違うの。違っていいの」ということを認めさせていくことです。

自立した存在として生きるには他人との比較ではなく、この自分は自分でいい、という認識が必要です。自分で自分自身を素晴らしい存在として認めていくことです。これを妨害するのが比較の視点―優越感と劣等感を行ったり来たりする生き方—です。他人と違うということを認識しつつもそこに優劣をつけない。そういう思いで子どもに接していくことで、徐々に子どもは自分の存在を「これでいい」と認め始めます。

なんだか調子に乗っていく感じがありますが、それでいいのです。そうしないと自立した存在として生きることはなかなか難しいのです。

3 子どもには子どもが歩むべき人生があるという認識

子どもに対して、行為ばかりに目が行ったり、他人と比較するのは、親の不安があるからです。子育に自信がある親というのはなかなかいません。子の育て方でいいのか、これで間違っていないのかということを問いながら、不安の中で育てていくことがほとんどかと思います。特に第一子に関しては。育児系の記事が書いてあるサイトや、育児書を読んでも、うまくいった事例ばっかりで、そんなにうまくいかないとお母さん自身が自分を責めてしまうことにもなります。

「うちの子がこのまま育って大丈夫だろうか?」

という不安な気持ちは多かれ少なかれどの親でももつ不安であります。おそらく、あなたの親御さんも同じように思われてあなたを育てたはずなんです。親が思うようには育たなかったとは思いますが、実際には学生を終えて社会人となり、家庭を持ち子どもを育てているわけです。十分じゃないかもしれませんし、それこそ自分はダメな親だとか思っているかもしれませんが、あなた自身は素晴らしい存在なのです。そして、親の不安をよそに、大人として、社会の一員として育たれました。

それは目の前にいるお子さんにも同じことが言えるわけです。親の思うようには育たない。でもその子はその子なりに、育っていってやがて社会に出るのです。親が思った人生、親が思う「こういうふうに育ってくれれば大丈夫」という思いではなく、お子さん一人ひとりが本来歩むべき人生を歩んでいく。そう信じて、子どもの人生を手放すことこそ、自立した子どもを育てる上でもっとも大事な要素です。

これは我が子に対する絶対的な信頼と他の人と比べない視点がもたらされることになります。大丈夫な存在として子ども認めて、この子はこの子の人生を歩むものとする。もちろん、ある年齢に応じてお世話をする必要もありますし、経済的に支援することも大切です。しかし、それはその子の存在を軸にした手助けであって、親がこうしようという思惑をもって育てるということとは異なります。

不登校は自立とは対極にあるように思われます。しかし、子育てを見直すチャンスです。子どもがその子らしい人生を歩んでいくことをこれから支えることができれば十分なのです。子育てに早い遅いはありません。時間はかかるかもしれませんが、取り戻す、やり直すことは必ずできます。…

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再開したけど、学校に行きたくない3つの理由

3月ごろから学校が休校になり、この6月、ようやく再開したところも多いと思います。親にしてみれば、ようやく、学校に行ってくれるという思いもあるかと思います。子ども自身も4月ごろは早く学校が再開してほしいと思っていたかもしれませんが、ここまで長く学校に行かないと、今更いくの面倒だなという気持ちにもなっているのではないでしょうか。

休校になったばかりのころは早く学校に行きたいという思いもあったかもしれませんが、長い休校期間があったことで行きたくない気持ちが出てくる人が増えているようです。

そして学校に行きたくない理由が意外と自分でも分かっていなかったりします。「面倒くさい」というところで思考が止まってしまってその先に進まないところがあります。コロナで学校に行きたくなったのには大きく3つの理由が考えられます。

コロナの休校が明けても、学校に行きたくない理由その1 生活リズムがうまくできていない

一つ目は、生活のリズムがうまくできていないというのが挙げられます。コロナによる休校期間中に昼夜逆転したり、朝寝坊したりと、生活のリズムが崩れている人が結構いるようです。そして、どうもそのリズムが自分にとって心地よく、あまり崩したくないというのが本音のようです。要は、だらだらした生活でもなんとかなるという思いがあります。もちろん、学校に行かないといけないという気持ちがあるにはあるのですが、2,3か月かけてつくった体のリズムはなかなか元には戻せません。

コロナの休校が明けても、学校に行きたくない理由その2 目標がなくなってしまった

二つ目の理由として考えられるのは、目標がなくなってしまったことです。たとえば、クラブを頑張っていた生徒に多いのですが、今年は試合や大会がことごとく中止です。特に高校3年生は3年間の集大成としてクラブ活動の最後の大会に向けて準備をしていたと思います。それが、勝つのでも負けるのでもなく、何の成果も出せないまま、終わっていくという喪失感。もしかしたら、大学受験にスパッと切り替えているように見えても、実は結構心のなかではこの思いはくすぶっていたりします。その思いを意識しないで、生活をすると、「なんとなく無気力」な感じで暮らしてしまいます。一生に一度のチャンスを、不可抗力で無しにされたわけです。学校に行くということ自体に意味を見出せない状態ではなかなか学校に気持ちが向かないのではないかと思います。

大学受験に関しても似たようなことが起きているのではないかと思います。地方に住む生徒さんで、東京など首都圏の大学への進学を希望していたとします。しかし、首都圏は密の状態を避けるのが難しいところが多いです。すると、今まで目指していた大学を諦めて、地元の大学に志望を切り替えないといけない事態も起こりうるわけです。

クラブにしろ、受験にしろ、目標を見失ってしまうと、無気力になります。そう簡単に人の気持ちは切り替わりません。しばらくだらだらする(ように見えて悩んでいる)時間を過ごす必要があります。

コロナの休校が明けても、学校に行きたくない理由その3 学校に行く意味を考え始めた

自分で勉強ができてしまった。というのが実は結構あるようです。与えられた課題やオンラインの授業で、自分でやらないといけない勉強量が増えた。その結果、自分で調べて先に進める力を得たというのがあります。理由その2とも関連しますが、これは「そもそも学校行く意味あるの?」なんていう問いを持ってしまいます。自分で勉強できる、通学の時間も不要、煩わしい人間関係もない。別にいいんじゃないかという思いが出てくるわけです。

この「そもそも学校行く意味あるの?という問いはコロナの休校がある以前から、不登校する生徒さんが自問している問いの一つです。みんなで同じことをやる、与えられた勉強をひたすらこなす、テストで友達と競う、そんなことがことごとく無意味だと感じて、いつの間にか学校から足が遠のいている場合があります。

生活のリズムは、徐々に取り戻していくことができますし、気持ちさえ向けば登校するようになります。しかし、目標を喪失したり、何のために学校に行くのかを考えだすと、不登校が長引く可能性も否めないです。そこには、しっかり自分と向き合って気持ちを立て直す時間が必要です。学校に行く意味を見失ったまま登校し続けることは、それはそれで危険なことです。うつになる可能性があります。

学校に行きたくない理由が明確でない場合は特に要注意です。…

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不登校の長期化を防ぐために、気を付けたい親の接し方4つのポイント

子どもが不登校になってしまった。このまま学校に行かない日々を過ごしたらどうなるだろうか。でも何からしたらよいのだろうか・・・不安は募るばかりです。以下の4つのポイントを気を付けてみてください。

1 学校に行くことがよいこと、行かないことは悪いこという思いで接し続ける 

1つ目は学校に行くことを善として、不登校を悪と捉える考え方です。無理に学校に行かせようとするのは逆効果です。学校に行かないことを責め続けるのもよくありません。一番苦しんでいるのは不登校している子どもさん本人です。不登校し始めてすぐは、学校に行かない自分はダメな存在だと自分を責めています。

近年の不登校生への対応は、「様子を見る」です。不登校をする生徒の数は平成25年以降増えています。(図)

特に平成21年以降は不登校への対応としてスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置などが推進されました。無理に学校に登校させないという対応が一般的になりました。

また、フリースクール等で過ごした時間も出席扱いや単位認定にもつながるようになるなど、支援が充実してきたこともあります。

学校に行かないことで他の同世代の子どもと比べて、勉強は遅れ、進路も定まらないという問題があります。しかし、だからと言ってそれ以降の人生がすべてダメになるというわけでもありません。「学校に行かないことは悪いこと」ではなく、「学校に行かない時期がある」という認識と、不登校自体も成長のプロセスだという認識が必要です。

2 本人の意思を無視して何かをやらせる

カウンセリングを受けさせる、心療内科を受診させるの、家の手伝いをさせる、勉強させるの「させる」が問題になります。

不登校の対応でよくありがちなのが、不登校している本人にカウンセリングや病院を受けさせようとするものです。もちろん、子どもさん本人が望むのであれば、効果的です。しかし、無理にカウンセリングに引きつれていっても成果は出ません。

不登校の初期段階は精神的な疲れがります。そこに、初めての行く場所で初対面の大人に会うのはかなりのハードルです。気を遣って話をすることはあるかもしれませんが、もともとない元気さがなくなってしまうのです。

1~2回通って効果がなかったら別のところにいくなど、ドクターショッピング的に回ってしまうと、子どもは疲弊するばかりです。カウンセラーが変わるたびに子どもは同じ話をさせられ、同じようなことをさせられるのです。

いずれにしても、本人の意向を待ったく無視して、問題解決にあたっていてもよくなることはほぼありません。本人がカウンセリングを受けたくないのであれば、母親や父親が受けることをお勧めします。

不登校に限らず心の課題の多くは関係性のが変わることで改善します。本人ではなくても、親自身の意識や不登校に対するとらえ方が変わることで、子どもへの接し方が変わります。その結果、子どもが前向きな思考を取り戻して元気になっていくという筋書きです。

ただし、中には無理にでも医療につなげたほうがよいこともあります。たとえば、 過食嘔吐が激しい、自殺企図があるなど命にかかわる場合です。そのような場合は、本人の意志はいったん脇において、守っていく必要があります。アディクションの場合は本人が悪いことをしている自覚はありつつもそれを人に知られることを恐れます。ですから医療(公的)につながるとこれまでの悪行がばれるという恐れから、受診を拒否します。強い抵抗にあうかもしれません。

しかし、このような場合は後からでも「あなたを守るためにやったのだ」ということ伝えれば、その時の気持ちをなだめることはできます。

文部科学省では不登校に対する認識を下記のように表明しています。

不登校については、特定の子どもに特有の問題があることによって、起こることではなく、どの子どもにも起こりうることとしてとらえ、当事者への理解を深める必要があること

不登校は誰にでも起こりうるし特別なことではなありません。当然ながら、不登校にならないに越したことはありません。しかしそうなってしまったからと言ってすべてがダメだというわけでもないのです。

3 父親の接し方は適切だろうか

子どもさんが不登校になったとき、その対処に当たるのはほぼ母親です。私のところに寄せられる問い合わせも、まずはお母さま。そして、本人というのが次に多いです。お父様からの問い合わせというのは非常にまれです。

実は、長期化する家庭の多くが父親の介入が少ないです。「お前の育て方が悪いからだ!」と奥さんに子どもさんの不登校の責任を負わせて、その話題に触れようとしないことがあります。その上、医療機関や勉強会、カウンセリングなどにも理解を示せない。かといって、子どもに何か言葉をかけたりもしない。不登校の原因というのは子どもさん本人に起因しますが、親の理解のない態度が余計に問題をこじらせてしまいます。

また、母親一人で対処してしまうと、母親自身がいろんなストレスを抱え込んでしまいます。子どもさんの問題に加えて、家族の不和を気にしつつ、仕事や家事にも追われる。兄弟がいるのならその世話もしないといけない。すると、いくら医療機関やカウンセリングを受けても、お母さま自体がやるべきことをできない状況が続いてしまうのです。父親の非協力は不登校を悪い状況にしてしまう要素の一つです。

一方で、母親だけでなく父親も一緒に解決にあたるようになると、事態がどんどん良くなっていくというケースもありました。それは、両親で解決にあたることで、家庭の中の雰囲気が明るくなります。なにより、それまで一人で対処していたお母さまのストレスがかなり軽くなります。本気で解決を目指すのであれば、ご両親でタッグを組んで当たる必要があります。

4 子どもに謝るのはNG

「不登校をする子どもは幼少期のさみしい思いが残っている。だから、そのことを子ども詫びなさい」というアドバイスをされることがあります。あるお母さまは思い当たることがあって「さみしい思いをさせてごめんなさい」と謝ったそうです。しかし、事態は改善しませんでした。子どもにしてみれば、こちらの気持ちを理解しないで、自分の都合で詫びをいれて「なんとか学校に行ってください」と聞こえてしまうからです。また、別のお母さまは「私の育て方が悪かった」という謝り方をしたそうです。これはもっとNGです。

それは「あなたは失敗作だ」というメッセージになってしまうからです。そしてますます自信を失い、学校から遠ざかってしまいます。家族とも遠ざかってしまうかもしれません。

謝ること自体が不要というわけではありません。しかし、親御さんが「学校に行ってほしい」という気持ちがあるまま、手段として謝ることはかえって子どもを傷つけてしまいます。相手の気持ちが分かって、これは謝って済まされないかもしれない。でも、謝るしかないというときに、ようやく、心からの謝罪の言葉が出てくるのです。手段として、そして親御さんが子どもさんに対して操作的な意図をもっての謝罪はかえって関係性を悪くします。

さいごに 本人のカウンセリングの前に、親のカウンセリングが必要

不登校への対応に正解はありません。しかしながら、放っておいてよくなるということも稀です。何かしら動いて、情報を集めたり相談すること自体、大切なことです。もちろん、その中に一時的にまずい対応や逆効果なことをしてしまう恐れもあります。ただ、そのようなプロセスも糧にすることで、よりよい対応、より子どもさんの気持ちに寄り添うことができるとも言えます。不登校が長期化することは確かに避けたいところです。

子どもさんが不登校すると、その対処をしている親が参ってしまうことがあります。そうなってしまっては支えられるものも支えられなくなってしまいます。

カウンセリングは困っている人が受けることが最も効果的な成果をあげます。お子さん自身がカウンセリングを受けたがらないのであれば、お母さま自身、お父様自身、またはご夫婦で受けられるというのも、対応としては効果的です。

不登校のお子さんをお持ちの保護者様むけセミナー募集中 セミナー申込はこちらから 不登校の親が持つべき心構えや考え方が分かるメルマガ 不登校やキャリア教育に関するコラム 空気が読めない子 ― ASD(自閉スペクトラム)の理解 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る (シリーズ:子どもの「しんどさ」を生物心理社会モデルで理解する 第6回) 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

「空気が読めない」と言われる子がいます。集団の中で浮いてしまったり、場の雰囲気が変わっても気づかない。でもその背景には、「感じ方がちがう」世界の存在があります。

ASD(自閉スペクトラム症)は、理解力や努力の問題ではなく、情報の受け取り方・感じ方・構造のとらえ方が異なる発達特性。今回は、感覚のちがいと認知のスタイル、そして支援の考え方を、生物心理社会モデルを軸に整理していきます。

🔗 参考:シリーズ第1回「子どもの“しんどさ”をどう理解するか」https://visionary-career-academy.com/archives/4178

ASDとは何か ― 世界の感じ方が違う子どもたち

ASDは Autism Spectrum Disorder の略で、日本語では自閉スペクトラム症と呼ばれます。「スペクトラム(spectrum)」とは、光のように連続した幅のある性質という意味。その名の通り、ASDには重い・軽いといった線引きではなく、**社会性・コミュニケーション・感覚処理などの特性が人によって異なる“グラデーション”**があります。

ASDの子どもたちは、他者の気持ちや意図、文脈を読み取る脳の働き方が独特です。それは「理解力の欠如」ではなく、「認知スタイルのちがい」。世界を構造的・規則的にとらえる一方で、人の心やあいまいな社会ルールを把握することが難しいのです。

感覚過敏の世界 ― 五感のチューニングが異なる

ASDの子どもたちは、私たちが当たり前に受け取っている感覚情報を、まったく違う強さで感じています。

聴覚過敏:教室のざわめき、蛍光灯の「ジーッ」という音、鉛筆のカリカリ音などが、痛いほど響く。

視覚過敏:蛍光灯の光や人の動きが刺激になり、目をそらす。

触覚過敏:洋服のタグや靴下のゴム、人との接触が苦痛に感じられる。

嗅覚・味覚のこだわり:におい・食感・温度への過敏さから偏食が起こることも。

こうした過敏さは「わがまま」ではなく、脳が感覚刺激をうまくフィルタリングできないために起こります。外界の情報が“全開のボリューム”で流れ込んでくるため、本人にとって世界はしばしば「うるさい」「まぶしい」「痛い」場所なのです。

💡 支援のヒント「静かな場所で話す」「光をやわらげる」「触れずに声で伝える」――環境を一段階“静かにする”だけでも、本人の安心感は大きく変わります。

認知特性とWISC-Ⅴで見えるASDの特徴

発達検査(WISC-Ⅴ:Wechsler Intelligence Scale for Children – Fifth Edition)では、ASDの子どもたちの“感じ方のちがい”が、認知プロファイルとして明確に表れます。

指標 内容 ASDで見られやすい傾向 言語理解(VCI) 言葉の意味理解・常識・表現力 語彙は豊富でも、比喩・冗談・曖昧な表現の理解が苦手 視覚的推論(VSI) 図形・パターンの処理 強み。構造や規則を見抜く力が高い ワーキングメモリ(WMI) 聴覚的短期記憶・思考保持 聴覚過敏などで集中が途切れやすい 処理速度(PSI) 単純作業のスピード 感覚刺激への敏感さ・慎重さから低く出やすい 流動的推論(FRI) 新しい課題への柔軟対応 パターンの理解は得意だが、曖昧な課題は苦手

ASDの子は、構造化された課題に強く、曖昧な状況に弱いという特徴があります。この特性が、学校生活や人間関係で「空気が読めない」「急な変化に弱い」と見られる背景にあります。

🔍 ADHDとの比較ADHDでは「注意の持続」や「衝動の制御」の難しさが中心で、WISCではワーキングメモリや処理速度が低めに出やすい。ASDでは「意味づけ・構造化」の弱さが中心という違いがあります。

生物・心理・社会モデルでみるASD 生物的側面

脳の情報処理ネットワーク(前頭葉―側頭葉―小脳連関など)に特性があり、光・音・触覚への感覚過敏・鈍麻も見られます。こうした感覚処理の違いが、日常の不安や混乱のもとになることがあります。

心理的側面

ASDの発達は、「認知発達(考える力)」と「関係発達(他者とつながる力)」が非対称に進みます。物事のルールや法則を理解する力は高いのに、人との関係づくり(社会的参照・共同注意・模倣)には時間がかかるのです。

社会的側面

ASDの子は、社会の“暗黙の了解”や“空気”といった非言語的な文脈を読み取るのが苦手です。社会の側が「わかりやすい構造」を示してあげることが、適応の第一歩になります。

幼児期に現れる兆し ― 社会的参照の困難

ASDの特徴は、幼児期から現れます。赤ちゃんは通常、親の表情や声を“参照”して行動を決めます(社会的参照)。しかしASDの子は、その参照がうまく働きません。

親の表情を見ない

名前を呼んでも反応が鈍い

一人遊びが多い

こうした様子が、3歳児健診などで指摘されることもあります。「関係発達の遅れ」が、後のコミュニケーションの土台に影響していきます。

構造を愛する ― ルーティンとこだわりの世界

ASDの子どもたちは、世界を“変化”ではなく“規則”で理解します。朝の支度の順番、登校ルート、食事の配置――その子なりの“ルーティン”があり、崩れると大きなストレスになります。

💡 ルーティンは安心の構造ASDの子にとって、こだわりや決まりごとは安心の拠り所。「なくす」ではなく、「理解し、活かす」視点が大切です。

また、規則性への敏感さがあるため、鉄道・時刻表・カレンダー・数字・天気など、明確なパターンを持つものを好む傾向があります。これは「構造を通して世界を理解したい」という自然な表れです。

男性に多い理由とカモフラージュASD

ASDは、男性が女性の約4倍といわれます。生物学的には胎児期のテストステロン量が社会的認知の発達に影響しているという説があり、社会的には女子が模倣・観察によって特性を隠しやすいことも関係しています。

「カモフラージュASD」と呼ばれるタイプは、周囲に合わせようとしすぎて思春期以降にうつや不安症を併発することもあります。

ADHDとの違い ― 「調整」と「構造」 観点 ADHD ASD 主な困難 注意・感情の調整 状況の構造理解 困りごとの原因 「わかっていても抑えられない」 「何が起きているのかわからない」 支援の方向性 刺激を減らす 環境を明確にし見通しを与える

ADHDでは環境の刺激を調整し、ASDでは環境の構造を明示することが支援の鍵になります。

支援のキーワード ― 「見通し」と「安心」

ASD支援の本質は、「次に何が起こるか」がわかること。予測可能な環境が、最大の安心を生みます。

スケジュールを見える化する

状況の変化を事前に予告する

ルールや手順を言語化・明文化する

🧩 柔軟性は“学ぶ”もの安心できる構造の中で、少しずつ変化に慣れていく――それがASD支援の第一歩です。

家庭でできるASD支援のポイント

説明は具体的に、順序立てて 「ちゃんとして」ではなく、「まず〇〇して、次に〇〇してね」と段階を示す。

感情ではなく構造で伝える 「どうしてそんなことするの!」ではなく、「それをすると〇〇になるよ」と結果で伝える。

変化を予告する 「明日は時間割が変わるよ」「お客さんが来るよ」と事前に知らせて安心をつくる。

まとめ ― 「空気を翻訳する社会」へ

ASDの子どもたちは、「空気を読まない」のではなく、**“空気があいまいすぎて読み取れない”**だけ。

社会の側が「空気をわかりやすく伝える」工夫をすれば、彼らは自分の力を安心して発揮できます。

🌱 ASD支援とは、「空気を読む力」を求めるのではなく、「空気を翻訳する力」を社会全体で育てること。

参考資料・引用

American Psychiatric Association (2022).……

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不登校カウンセリングの最初の一手

不登校のカウンセリングでよくあるのが、「子どもに受けさせたいのだけれど、受けたくないって言っているんです」という相談です。怪我や病気であれば本人が医者にいって治療すべきですが、カウンセリングの場合は心のケアが中心ですので、本人じゃなくてもよい場合が多いです。「困っている人」が受けることをお勧めします。ですから、不登校の場合は、不登校の生徒さん本人よりも、親御さんに受けてもらうということをお勧めしています。子どもを無理に受けさせないほうがよい理由が2つ、親御さんが受けたほうがよい理由が2つあります。

子どもを無理にカウンセリングを受けさせないほうがよいのは? 1 見ず知らずの人と話すのはこわい

まず、子ども自身はカウンセリングを受けたいとは自ら思いません。見ず知らずの人に自分の内面を根ほり葉ほりきかれるということはこわいことという印象も与えかねません。さらに、心が弱っているときに、知らない人と会って話をすることは、普段以上にエネルギーが必要なことですので、受けたくない、仮に受けても話したくないという状況になります。そもそも、カウンセリングというものがどんなものかというイメージもないので、余計にストレスを感じて縮こまってしまう恐れがあります。

ある高校生はカウンセリングはこっぴどく叱られるという思いを持っていました。それは、クラスでもかなりのトラブルメーカーがカウンセリング受けたあと、すっかりおとなしくなってしまったというのです。「あの○○ですら黙らせるんだからよっぽどひどいことをされるに違いない」と思ったそうです。これは極端な例ですが、カウンセリングに対してあまり良いイメージがないというが実情かと思います。

2 無理矢理子どもにカウンセリングを受けさせることは自尊心を傷つける

カウンセリングの目的は、その人自身が自分を大切な存在と思えるようになり、自発的に行動の変容をもたらすことです。入り口は、親や養育者や先生などからの紹介もあるかと思いますが、そのときにどのような思いでカウンセリングを受けに来ているかが大切です。ちょっとでも受けようかなという気持ちがあればよいのですが、本人が「受けたくない」と言うのに無理やりつれていくと、逆効果になります。それは「自分の気持ちは分かってもらえない」とか「親は自分のことをダメな存在だと思っている」とか「大人は信頼できない」ということさえ起りえます。

かつて、親御さんに無理矢理つれてこられた中学生がいましたが、カウンセリングの時間中、まったく車から降りてきませんでした。他のケースでもカウンセリングルームまで来たものの「別に話すことないっす」ということで15分もせずに帰っていったりしました。当然、どちらのケースも2回目はありませんでした。無理矢理連れて行かれるのは、それがカウンセリングであれ学校であれ「あなたには自分で決める権利はない」というメッセージを暗に送っていることになります。親御さんにそういう意図がなかったとしても、子どもがそう受け取ってしまいます。

カウンセリングに良いイメージを持たないまま連れて行かれると二度目のカウンセリングというのは、カウンセラーを変えたとしても難しいことです。

カウンセリングを受けるのは親御さんがいい理由 1 行動の変容をもたらすのは困っている人の不安を取り除くことから

一方で親御さんが受けるメリットは大きいです。不登校のお子さん最も多くかかわるのが、一緒に生活している親です。どれだけ有能なカウンセラーが子ども関わっても、親御さんの不安があるままで、子どもの不登校が改善するということは考えにくいです。ですから、親御さんがまずカウンセリングをうけて、親としての自信を取り戻す必要があります。不登校になったのは育て方が悪かったわけでは決してありません。これは子どもさん本人が自分の人生と真剣に向き合った結果によるものです。とはいえ、学校に行かない、勉強がおくれる、受験にひびく、進路が決まらないということなど不安は数多くあるはずです。その親御さんの不安を解消していくことが、実は不登校の状況を改善することに非常に役に立つのです。

不登校が長期化すると、子どもがわがままになったり、場合によっては暴れたりすることがあります。それは親御さんが抱える「負い目」とか「不安」があることを察して、そこをついてやってきます。そうならないためにも、親御さん自身が子どもにスキを見せないことが大事です。そのためには「私の子は学校に行っていないけど大丈夫」「私の子育ては完ぺきではないけど、そのときそのとき精いっぱいやってきたんだ」と自信を持つことです。この親御さんの自信が、子どもさんの心を落ち着かせ、結果として何らかの行動変容をもたらします。

不登校対応の最初の一手は親御さんの不安を取り除き、自信を取り戻してもらうところから始まります。

2 子どもに関わる保護者が「大丈夫」という感覚をもって接することが重要

親御さんが大丈夫という感覚をもって子どもに接していくと、子どもにもその感覚は伝わります。不登校するお子さんの多くは感受性が豊かで、気遣いができる人です。ですので、親御さんが抱える内面の変化にはとても敏感です。言葉の上では「学校行かなくてもいいよ」と言っても、内面には「早く行ってほしいなー」という思いがあると、そっちのほうが伝わって「親は嘘をついている」「私のことを信用していない」という思いになります。心の底から「学校行っても行かなくても、あなたは大切な私の子である」という思いがあって初めて、子どもは安心して過ごせます。その安心感があると、カウンセリングを受けてみようとか、勉強してみようとか、学校にちょっと行ってみようとか変容が見られます。

行動変容をもたらすには、子どもだけを変えようとするよりも、親御さんも一緒に変わっていく姿勢が大切です。心の不調は関係性の病と言われています。であれば、関係性を改善することで、状況を変えることも可能なのです。

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コロナの休校で昼夜逆転―中学生 高校生が生活のリズムを取り戻のために

コロナの休校があり、その後夏休み。不登校になってしまった上に、昼夜逆転した生活が戻らない

そんなことでご相談を受けることがありました。この状態がいつまで続くのかと心配になるというご相談です。

昼夜逆転は徐々に回復する

3月ごろからコロナウイルスによる影響で、学校が休校になりました。

6月になり、分散登校や午前中だけの授業名で徐々に学校の授業が再開されました。中学生や高校生のお子さんをお持ちのお母さま方から、子どもの生活が昼夜逆転してしまっていて、生活が乱れているというご相談を受けることが増えました。また、本人も「昼夜逆転しているんだ」ということで少々困っているような様子もありました。

学校が再開してしばらく時間がたちます。昼夜逆転していた中学生や高校生の生徒さんも、最初の数日は大変だったようですが、徐々にペースをつかみ始めて、そのまま不登校になることはなかったようです。

ちょっと前に 下記のように記しました。

乱れた生活をどうやって戻すか。→多くの場合、学校が再開したら戻ると思います。登校することで、朝から体を動かすことになります。すると、自律神経のリズムが徐々に戻っていきます。昼夜逆転する場合は、交感神経(起きているとき)と副交感神経(寝ているとき)が逆転しているとも言えます。最初はこの辺りが乱れた状態での登校になりますが、朝から運動すること(登校)でこのリズムが徐々に整うと言われます。また、外に出て動くことで運動にもなりますので、適度に体が疲れ、夜の睡眠も入りやすいということになります。

ただの身体的な要因であれば、最初はめんどくさいとか気分が乗らないという気持ちがあれど、時間と共にこの昼夜逆転が解消していきます。

その一方で、昼夜逆転がなかなか戻らないで、生活のリズムが乱れたままの場合は注意が必要です。

昼夜逆転がもどらないのには3つの理由が考えられます。

昼夜逆転が戻らない理由その1 心の問題を抱えてしまった

約3か月の休校期間は、単に学校が休みになったわけではありません。クラブ活動もできない。塾やバイトにも行けない。社会全体が自粛ということを徹底しました。家には家族が全員います。

しかしながら、中学生や高校生の思春期真っただ中のお子さんにすれば、家族と話をするのは何となく照れくさい。できればちょっと距離を置きたいのですが、毎日家族が全員いるのなかで、なんとかうまく振舞おうとする。

その一方で、反抗期に特有のなんかイライラする感じというのもあって、全然うまくいっていない感じを味わいます。学校から出された課題も今一つ手が付かない。しかし気分転換しようにも外にも出られないし、友達にも会えない。そんななかで、心の調子を崩してしまい、うつうつとした状態になっている可能性があります。

そして家族と顔を合わせたくない結果、家族が寝静まってから行動を開始します。そして家族が起きるころに眠るのです。

終始家族といることがストレスん感じられてそれを回避しようとした結果、昼夜逆転しているほうが、都合がよかったのです。

ところが、心の方はなんだか分からないけど辛い気持ちがあるので、いままでのように朝起きて学校に行こうとすると、おなかが痛かったり、眠気が採れていなかったり、頭痛がしたりします。

コロナによる休校がなければ味わう必要がなかった、ストレスにより心が疲弊している可能性があります。この場合は、しばらくの休息が必要です。可能であれば遅刻してでも、一コマだけでも学校に行けるようなら言って、友達と話したり、外の空気を吸うことで、変化がはじまります。

昼夜逆転が戻らない理由その2 学校に行く意味を問うている

長いところでは3か月も休校になってしまいました。

そしてその間、課題やオンラインの授業、場合によっては教育系のウェブサイトで自分で学ぶことを強いられてきたわけです。そうすると本人の中に「学校行く意味あるの?」という疑問が浮かんできます。

しかも、クラブを頑張っていた生徒であれば、インターハイをはじめとした大会がことごとく中止になる中、学校へ行く意味を見失っている可能性があります。

そういうメンタリティの場合、そこから不登校になる可能性があります。でもそれは本人が弱いわけでも生活のリズムが崩れているからでもありません。そのような思考になってしまった、環境があるので仕方がないところがあります。

この問題の解決方法は「何のために学校に行くのか」を自身で見出す必要があります。もしかしたらこの答えを見つけるのには時間がかかるかもしれません。

しかしながら、この問いに対して自分で答えを見つけることができた生徒は、その後の学校生活だけでなく、人生そのものを前向きに、そして大切に生きることができるようになります。

昼夜逆転が戻らない理由その3 ゲーム依存で夜中にゲームをしている

上の二つが、メンタル的なものであるのに対して、この3つめの理由は厄介です。

オンラインゲームは不特定多数の人とコミュニケーションをとりながら進めていきます。直接顔を知らない相手と仲良くなったり、戦ったりしています。

休校期間の間にゲーム依存になる生徒は増えたと言われています。とは言え、多くは、一緒にプレイする友達が学校に行くので、深夜に一緒にプレイする人がいなくなったことで、徐々に解消していくということも考えられます。しかし、そのゲームの中にはキャラとしての存在感があります。

しかもプレイすればするほど上達して強くなるので、自信もつきます。現実の世界よりゲームの世界の方が、多くの承認が得られるし、容易に自分の能力を高められるので楽しいのです。この世界にハマった場合、積極的に昼夜逆転をする可能性が多いので、なかなか治らないのです。

ではどうやってゲーム依存から抜け出すのかということです。かつてゲーム依存の小学生に関わった時は、一週間でどれくらいの時間をゲームに充てているのかを、本人の証言をもとに図示しました。

多い時には1日15時間やっていました。寝る時間を8時間としてその時間を除いて、どれくらいの時間をゲームに充てているかを計算しました。そして、1週間の時間のうち57%をゲームに充てているということが分かりました。

思った以上にゲームに充てていることに気づき、そこから時間をコントロールするようになりました。

まずは夜のイベントへの参加を辞めることから始めました。そして起きている時間で、サッカーをする時間を増やしました。ゲームに依存して昼夜逆転している間は不登校でしたが、夜のゲームの時間が減ると、学校にもどって行きました。

今でもゲームはしているそうですが、毎日昼夜逆転するほどのことはないとのことです。

依存している状態を客観的に見ることで、自分の異常さに気づけたのがこのケースの良かったところです。この方法が誰にでも当てはまるわけではありませんが、困っている場合は試してみる価値はあると思います。

以上見てきたように、昼夜逆転が休校明けにも治らないのには理由があります。

もし、コロナによる休校が明けてなかなか学校に行けないようだったとしても、

サボりだとか、心が弱いとか決めつけないで、もしかしたら学校に行く意味を見失っているのではと思って接していただけるとお子さんは、学校に行けなくなっている状況に向き合う力を得て、時間はかかっても自ら解決する道を選びだせるでしょう。

昼夜逆転を治すための初めの一歩

では、昼夜逆転を元の生活に戻すにはどうしたらよいか。

朝起きられる人は、起きる。それが無理なら、夕方、散歩やジョギングに行って、夜に眠るように体をもっていく。

それでも無理な場合は、何時に起きてきても服を着替えることです。家着ではなく、外に出る服、制服でもいいです。

不登校、引きこもりの回復のための要素が、朝起きる、服を着替える、夜眠ることなのです。そのいずれか一つでもできると変わってきます。

荒療治はリバウンド(もとどおり)になる可能性が大いにあります。スモールステップで、確実に歩める方法をお勧めします。…

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中学生になると不登校が増える理由

中学生になると激増する不登校その背景には何があるのでしょうか? 平成 30 年度  文部科学省 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果についてより

不登校の人数は義務教育課程の小学1年生から中学3年生にかけて増えていく。特に、小学6年生から中学1年生にかけて倍以上に増えて、そこから中学2年にさらに1万人以上が増えていることが読み取れます。

不登校の定義は文部科学省によると下記のようになります。

年度間に連続または断続して30日以上欠席した児童生徒のうち不登校を理由とする者について調査。ここで「不登校」とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しない、あるいは、したくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的理由によるものを除く)とされている。

不登校は30日というのが目安になっておりますが、実際には1週間や3日でも本人が「不登校」と認識していることがあります。

中学生が不登校になる3つの要因 文部科学省 平成 30 年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について をもとに作成

上の表は文部科学省の調査をもとに作成したものです。中学生で不登校の生徒の「本人に係る要因」として調査された項目を集計したものです。人間関係、遊び・非行は分かりやすいのですが、無気力、不安、その他は具体的に何なのかは見えにくいところがあります。

表面的には、友達との関係、勉強についていけない、学校の雰囲気が合わないなどがあります。それぞれが単独で起こることもありますが、絡み合って複雑ななかで起こります。しかしながらそれぞれは、表層に現れた一つの現象でしかありません。心の中にはいろいろな問題があります。しかも不登校の原因が何か一つだけという明確に決まっていることは、むしろ珍しいくらいです。 特に小学校から中学校は、他校との合流もあり、それまで6年間慣れ親しんだか人間関係が変わること、また本人の体の成長、思春期からくる心の不安定さなどいろいろな要素が作用してきます。不登校していない生徒も、心の中には言葉にできない複雑な思いがあります。

ここでは、友達関係、勉強面、学校の3つの面とその背後にある心の問題を見ていきます。

1友達関係の変化

友達との関係は、いじめに発展しているケースもありますし、あまり気の合わない友達とグループになってしまい、つらい思いをしていることもあります。不登校になり始めるときは、友達関係のつまづきはよくある理由の一つです。小学生の時は男女入り混じっていた人間関係が中学になると男女別になります。異性を意識するあまり、それまで仲良く話をしたりしていた幼馴染ともぎくしゃくしてしまいます。冷やかしの対象になったり、自分の気持ちとは無関係に「○○は△△のことが好きなんだって~」とあらぬ噂を立てられたりします。同姓で仲の良い友達ができればよいですが、そこがうまくいかないと、「友達がいない」という状況が発生します。周りの目を意識することが多い中学生にとって「友達がいない」という状況を受け止めることは大変心苦しく、結果として学校に行くことが辛くなります。

また、「友達がいない」状況を無理に打開しようとして、たいして気の合わない友達とつるむこともあります。これは学校ではなかなか見抜くとができません。実は、これがいじめにつながることもあります。表面的には仲良くしていても、そのグループの中で上下関係ができて「次の数学の時間に、先生にハゲって言え」とか「むかつく女子にちょっと嫌がらせしてこい」とかなんとか命令されていることがあります。教師もクラスメイトも「態度の悪いグループ」として扱いますが、実はその中には、友達がいなくて背伸びして悪い奴らを演じている人もいます。

本来の自分ではない自分を演じ続けることが学校で生きのびる方法になってしまいます。中学生になると親も友達関係をそれほど気にしません。ただ、言葉遣いや私服、聴く音楽や見ている番組、動画などに、「これまでのこの子と違うな?」と思ったら背伸びして友人と付き合っている可能性があります。これは不登校において黄色信号です。どんな友達がいるのか尋ねてみるのも良いと思います。

人間関係の心苦しさを訴える術もないし、訴えたところで一人ぼっちになる。自分でもよく分からないまま学校に行きたくなくなる、いや体の調子が悪くなって行けなくなってしまうのです。

2 勉強についていけない

勉強についていけないというのもよく聞く理由です。小学6年から中学1年で激増している理由の一つは、これがあると思います。授業の進むスピード、出される宿題の量に圧倒されてしまったり、または必死についていこうとして疲れ果ててしまうケースもあります。また、小学校は学習について先生が手厚くフォローされますし、進むスピードも緩やかであります。それが中学になると「自分でやっておきなさい」というスタンスに変わります。

また中学受験を頑張った生徒もいろいろなショックを受けやすいところです。受験を経て、学力がついたと思っていても、進学した学校のレベルが高く置いてきぼりを食らう。そして「ついていけない」ということで休みつつも、負けを認めたくないので「勉強が理由だ」とは決して言わないのです。親も、せっかく入試を経て合格した学校を、いきなり休まれては困りものなので、頑張らせようとします。しかし生徒自身も不登校の理由を言葉にせず、親自身も頑張らせることは、不登校を長期化させる可能性をはらんでいます。

勉強についていけないことはプライドを傷つけることに繋がります。そして、そのプライドのために背伸びをして、頑張り続けようとします。友達に負けたくない、親からの期待、先生への忠誠心のようなもの、いろいろなことが勉強に駆り立てますが、本来の力以上のものを出し続けると当然ながらばててしまいます。この背後にあるのは焦りの気持ちです。勉強についていけない、成績が落ちる、そういうことが周囲に知れたら自分はどんな風にみられるんだろう。そんな思いがあって、頑張り続けようとして、あるとき限界を超えて、プチンと電源が落ちるかのように学校に行けなくなってしまいます。そして、その後は勉強の遅れを取り戻すために、さらに頑張ろうという「気持ち」だけがあり、学校を休んでいながらも、「勉強しなきゃ」と追い立てられます。この焦りを外すためには、それまで関係性のある人(子どもと同じ世界の人)ではなく、まったく異なる第三者(子どもとは違う世界の人)の介入が必要になります。

3 学校になじまない

学校の雰囲気というのはあります。今はテンションの高い学校が多くなった印象があります。元気で積極的な人はその雰囲気は心地よいですが、静かでマイペースな人にはとてもしんどいところがあります。学校の先生も、元気が〇でおとなしいが×というレッテルでクラス経営をされることもあります。おとなしい子に無理矢理、みんなの前で話をさせたり歌を歌わせたり。そして、それができたことが「成長」とされる。しかし、実際は、誰もが明るく元気で積極的、行動的である必要はありません。おとなしい、マイペース、読書や思索にふけるのが好きな人がいてもおかしくありません。

これは中学受験をする際でも一つのポイントになります。我が子がその学校の雰囲気になじむかどうかは見極める必要があります。有名校だからとか、○○大学の付属だからという理由だけで進学しても、子ども自身にとってその学校の生活が酷であってはいけません。学校の雰囲気になじまない中で私学のハイペースの授業についていくことは、慣れない環境の中で今まで以上の力を出さないといけない状況になります。例えるならば魚が陸で水中よりも速く泳がないといけない状況とでも言えます。

学校になじまない場合の子どもの中にある気持ちは、「違和感」です。なんか違うという感覚です。これに関してはプラスに作用することもあり、今までの環境でつくってきた自分の「キャラ」が嫌な場合はこの違和感のおかげで、本来自分が出したかった「キャラ」を出していくことができます。また、このなじまないという違和感については、違和感を感じているもの同士が集まって、そのまま学校生活を送れる場合もあります。

一方で、学校になじまないという中で起きてくるのは先生との相性です。担任との相性はもちろん、教科担当の先生との相性もあります。例えば、美術の先生と相性が悪ければ、その曜日だけ休むということを繰り返します。そのうち、勉強についていけない、休んだ分の課題に追われる、または特定の授業だけ避けていることをクラスメイトなどから「ずるい」と言われるなど、プラスになることはありません。休んだその日は安心しますが、安心はわずかな時間で過ぎ去り、再び「来週はどうしよう」とか「みんなになんか言われるかも」なんていうことが気になり始めます。

学校全体、クラスの雰囲気、先生のクラス経営の方向性、授業担当者との相性、友達の言動など、いろいろなモヤモヤしたことが積み重なった結果、学校に行きたくなくなります。

共通する心の問題は「自分を責める心の声」

不登校になる原因は心の問題です。それが一体どんな心の状態なのかは人やケースによって異なります。大切なのは学校での「キャラ」が本来の自分の持っている性格と離れないことです。学校で背伸びをした生活を続けていくことは、子どもにとってかなり心苦しいです。ちょっとくらいの背伸びならそれは成長の伸びしろともとらえられますが、とんでもなく別人のようにふるまうことは、心を苦しめていきます。

それは自分を責めるという形で現れます。この自分の責めは厄介です。それは自分の心の中で回る独り言です。ですから、周囲の言葉がけや環境の変化があっても、本人の内面が変わらない限りなくなりません。不登校の初期は休むこと自体が重要になりますが、この自分を責める心の声がなくならない限り、子どもの苦しみは続きます。仮に不登校から脱して学校に行き始めても、実は辛かったりします。または不登校にならないけど、自分を責め続けながら頑張っている人もいます。

そういった自分を責める声に耳を傾け、その声を取り去るのが、カウンセラーの仕事であります。

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不登校のなかで「自分には生きている意味がない」と思う

不登校を始めてある程度の時間が経つと、学校に行かない自分を責める気持ちが強くなります。

学校に行かない自分には価値がないと思いこんで時にカウンセラーに対して

「私は生きている意味がないんです」

とはっきりと言葉にする人もいます。

これまでも、不登校している生徒だけでなく、普通に学校に通っている生徒さんでも、自分自身の生きている意味を見出すことができず、死のうとした人の話を何人も聴いてきました。

橋の上に行って飛び降りようとした

何も持たずに冬の山の中に一人で行った

首を吊ろうと思って、ロープの代わりになるものを探した。

包丁を取り出して自分の胸に突き立てようとした

踏切から線路に侵入して横になった

あと一歩のところで命を落とすような行為をしている生徒さんは実は結構いました。しかし、なぜだか分からないけどやっぱりやめようと思ったといいます。

死ぬのが怖い、家族の顔がよぎった、人に見つかってしまった、死体がぐちゃぐちゃになったら迷惑だろうなと思ったとか、なにがしかの思いとどまらせる気持ちがはたらき、死ぬのを辞めています。

自分にたいして「生きている意味」を問うとき、その答えは必ず「意味がある」なのです。しかし、不登校をしていると特に、学校に行かない、社会に適応できない自分はダメな存在と決めつけてしまっているので、自分には生きている意味がないと決めつけて、自殺を図る。でも死ぬことができなかった・・・

一度自殺を試みて、うまくいかなかった場合に、再び自殺を図ろうと思いがあっても、実行に移すまでには結構な時間がかかります。

そして辛いのことはそこから始まります。それは

死ぬことすらできない自分に何の価値があるのか?

とさらに責める気持ちが強くなるのです。不登校が長く続く場合、この自分を責める気持ちと戦っているため、一日中家で、布団のなかにいたとしても、疲れてしまうのです。自分を責める声が、何をしていても聞こえてくるのです。これほど辛いことはありません。こんな時に、人は前向きに考えたり、何か別のことをしようという思いにはなりません。

では、どうするのがよいのか???

それは、自分を責めている気持ちを認めることです。責めたくなる気持ちに対して自分で共感をしていくことです。そんなことできるわけないと思われるかもしれませんが、生きる意味、生きている意味を問うているときに、下手なプラス思考はかえって危険です。問題の本質から目をそらすだけで、返って辛くなってしまうのです。

だから自分の気持ちをそのまま認める。言葉で書くのは簡単ですが、実はこれが結構難しい。「そんなの無理」と思った方はまず、他人からしてもらうことです。

この生きている意味をとうこと、自分の価値のなさを責めることから解放されることが、実は学校に行くいかない以上に大切なことなのです。ここをクリアすることができれば、学校に行かなくても人生を切り開いていく力を得ることができます。

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僕が引きこもりにならなかったのは○○があったから

不登校を経験した大人は思いのほかたくさんいます。また、不登校たくても、我慢して学校に生き続けた人もいます。このコラムでは後者に当たる人のお話をします。

彼は、おとなしい性格であり、集団の中にいるのが苦痛でした。それでも学校に通い続けました。一部の気の合う友人と理解ある先生のおかげで、不登校にならずに卒業し、大学まで行きました。しかし、心の中に「なんか違うな」という気持ちはありました。

そして中学3年生の時に本気で学校に行きたくないと思い、数日休みました。しかし、なんか知らないけど家にいても落ち着かないので学校に行くことにしたそうです。

大学卒業後、就職。そのころには心の中にあった「なんか違うな」という感覚はなくなっていました。そして、順調を続けることができていました。

しかし、働き始めて2年が過ぎたあたりで、これまで何でもなかった資料の整理であったり成果報告などができなくなりました。やろうとしても体が動かない、やっとの思いでパソコンに向かっても頭が真っ白になってしまいました。そして、休職。そのまま体調はもどることなく退職となりました。

それは、彼にとってとても衝撃的なことでした。まさか仕事を辞めることになるとは思ってもみなかったのです。社員寮を引き払い自宅に帰る。親になんと言われるだろう、弟にはふがいない兄の姿を見せたくないな。そんな思いがあり家に着きました。

母親が普通に「お帰り」と迎えてくれたそうです。そして、普段と変わらず家族と食卓を囲みました。食後に彼が「仕事を辞めてしまって申し訳ない」と話すと、母親が「仕事をしていてもしていなくてもあなたは私の子なの。謝る必要はないですよ」と言い、続けて父親が「ここはお前の家でもある。だから居ていい」と言いました。

彼はその言葉に救われました。社会人になり、しっかり働いていた会社を辞めても、自分の存在を受け止めてくれる存在。「これがあったから僕は引きこもらなかった」と彼は話してくれました。

その後、彼はアルバイトをはじめ、非常勤の仕事に就きました。正社員への復帰を目指しつつ、励んでいらっしゃいます。

実はこの「自分の存在を受け止めてくれる存在」というのは不登校の回復にも必要なことです。学校に行くいかないではなく、生きているあなたそのものが大切な存在であるという姿勢です。言葉で伝えることも大切ですが、その背後の態度が大切です。…

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不登校していることを友達がサボりだといってバカにしてくる

不登校をしている人の気持ちを、同年代の人に理解してもらうのはなかなか難しいところがあります。中学生くらいだと、自分の考えでしか物事をとらえることができないからです。高校生になると少しできるようになりますが、それでも理解してくれる人は少ないです。

不登校している生徒さんにとって大切なのは味方をつくることです。これまで一緒に学んでいたクラスメイトやクラブの友人は、同じ環境に身をおいているから味方でいてくれたのです。しかし、不登校という彼らとは違う世界に身を置くと、もともとの学校の友達を味方につけるのはなかなか難しいところがあります。

だから、学校の外に味方をつくるこが必要になります。そそれは同世代ではなく大人であっても良いのです。不登校している辛さやうまく言葉にできない気持ちを受け止めて肯定してくれる存在です。

そういう存在がいると友達に何を言われても耐えきれるようになります。平気にもなります。

友達にバカにされるのは確かに嫌です。でもそこで、友達に合わせるために学校にいくことは、あまりためになりません。

不登校はあなた自身が生き方を考える大切な時間なのです。本来行くべき学校に行かず、勉強やクラブ、友達からも離れ一人になる。それはとても辛く孤独な時間です。しかし、その時間を通じて、自分の人生と向き合い、前に進んでいく人のなんと多いことか。

不登校は決してバカにされて良い時間ではありません。ただ、理解されにくいので「ダメなこと」と認識されますが、不登校をプラスに受け止めて歩んでいる人は結構います。活躍している人もたくさんいます。

不登校をしたから人生がためになるわけではありません。友達にバカにされるから自分が間違っているというのでもありません。

むしろ、堂々と不登校をして自分と向き合ってみてください。必ずその先に希望があります!

不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 空気が読めない子 ― ASD(自閉スペクトラム)の理解 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る (シリーズ:子どもの「しんどさ」を生物心理社会モデルで理解する 第6回) 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

「空気が読めない」と言われる子がいます。集団の中で浮いてしまったり、場の雰囲気が変わっても気づかない。でもその背景には、「感じ方がちがう」世界の存在があります。

ASD(自閉スペクトラム症)は、理解力や努力の問題ではなく、情報の受け取り方・感じ方・構造のとらえ方が異なる発達特性。今回は、感覚のちがいと認知のスタイル、そして支援の考え方を、生物心理社会モデルを軸に整理していきます。

🔗 参考:シリーズ第1回「子どもの“しんどさ”をどう理解するか」https://visionary-career-academy.com/archives/4178

ASDとは何か ― 世界の感じ方が違う子どもたち

ASDは Autism Spectrum Disorder の略で、日本語では自閉スペクトラム症と呼ばれます。「スペクトラム(spectrum)」とは、光のように連続した幅のある性質という意味。その名の通り、ASDには重い・軽いといった線引きではなく、**社会性・コミュニケーション・感覚処理などの特性が人によって異なる“グラデーション”**があります。

ASDの子どもたちは、他者の気持ちや意図、文脈を読み取る脳の働き方が独特です。それは「理解力の欠如」ではなく、「認知スタイルのちがい」。世界を構造的・規則的にとらえる一方で、人の心やあいまいな社会ルールを把握することが難しいのです。

感覚過敏の世界 ― 五感のチューニングが異なる

ASDの子どもたちは、私たちが当たり前に受け取っている感覚情報を、まったく違う強さで感じています。

聴覚過敏:教室のざわめき、蛍光灯の「ジーッ」という音、鉛筆のカリカリ音などが、痛いほど響く。

視覚過敏:蛍光灯の光や人の動きが刺激になり、目をそらす。

触覚過敏:洋服のタグや靴下のゴム、人との接触が苦痛に感じられる。

嗅覚・味覚のこだわり:におい・食感・温度への過敏さから偏食が起こることも。

こうした過敏さは「わがまま」ではなく、脳が感覚刺激をうまくフィルタリングできないために起こります。外界の情報が“全開のボリューム”で流れ込んでくるため、本人にとって世界はしばしば「うるさい」「まぶしい」「痛い」場所なのです。

💡 支援のヒント「静かな場所で話す」「光をやわらげる」「触れずに声で伝える」――環境を一段階“静かにする”だけでも、本人の安心感は大きく変わります。

認知特性とWISC-Ⅴで見えるASDの特徴

発達検査(WISC-Ⅴ:Wechsler Intelligence Scale for Children – Fifth Edition)では、ASDの子どもたちの“感じ方のちがい”が、認知プロファイルとして明確に表れます。

指標 内容 ASDで見られやすい傾向 言語理解(VCI) 言葉の意味理解・常識・表現力 語彙は豊富でも、比喩・冗談・曖昧な表現の理解が苦手 視覚的推論(VSI) 図形・パターンの処理 強み。構造や規則を見抜く力が高い ワーキングメモリ(WMI) 聴覚的短期記憶・思考保持 聴覚過敏などで集中が途切れやすい 処理速度(PSI) 単純作業のスピード 感覚刺激への敏感さ・慎重さから低く出やすい 流動的推論(FRI) 新しい課題への柔軟対応 パターンの理解は得意だが、曖昧な課題は苦手

ASDの子は、構造化された課題に強く、曖昧な状況に弱いという特徴があります。この特性が、学校生活や人間関係で「空気が読めない」「急な変化に弱い」と見られる背景にあります。

🔍 ADHDとの比較ADHDでは「注意の持続」や「衝動の制御」の難しさが中心で、WISCではワーキングメモリや処理速度が低めに出やすい。ASDでは「意味づけ・構造化」の弱さが中心という違いがあります。

生物・心理・社会モデルでみるASD 生物的側面

脳の情報処理ネットワーク(前頭葉―側頭葉―小脳連関など)に特性があり、光・音・触覚への感覚過敏・鈍麻も見られます。こうした感覚処理の違いが、日常の不安や混乱のもとになることがあります。

心理的側面

ASDの発達は、「認知発達(考える力)」と「関係発達(他者とつながる力)」が非対称に進みます。物事のルールや法則を理解する力は高いのに、人との関係づくり(社会的参照・共同注意・模倣)には時間がかかるのです。

社会的側面

ASDの子は、社会の“暗黙の了解”や“空気”といった非言語的な文脈を読み取るのが苦手です。社会の側が「わかりやすい構造」を示してあげることが、適応の第一歩になります。

幼児期に現れる兆し ― 社会的参照の困難

ASDの特徴は、幼児期から現れます。赤ちゃんは通常、親の表情や声を“参照”して行動を決めます(社会的参照)。しかしASDの子は、その参照がうまく働きません。

親の表情を見ない

名前を呼んでも反応が鈍い

一人遊びが多い

こうした様子が、3歳児健診などで指摘されることもあります。「関係発達の遅れ」が、後のコミュニケーションの土台に影響していきます。

構造を愛する ― ルーティンとこだわりの世界

ASDの子どもたちは、世界を“変化”ではなく“規則”で理解します。朝の支度の順番、登校ルート、食事の配置――その子なりの“ルーティン”があり、崩れると大きなストレスになります。

💡 ルーティンは安心の構造ASDの子にとって、こだわりや決まりごとは安心の拠り所。「なくす」ではなく、「理解し、活かす」視点が大切です。

また、規則性への敏感さがあるため、鉄道・時刻表・カレンダー・数字・天気など、明確なパターンを持つものを好む傾向があります。これは「構造を通して世界を理解したい」という自然な表れです。

男性に多い理由とカモフラージュASD

ASDは、男性が女性の約4倍といわれます。生物学的には胎児期のテストステロン量が社会的認知の発達に影響しているという説があり、社会的には女子が模倣・観察によって特性を隠しやすいことも関係しています。

「カモフラージュASD」と呼ばれるタイプは、周囲に合わせようとしすぎて思春期以降にうつや不安症を併発することもあります。

ADHDとの違い ― 「調整」と「構造」 観点 ADHD ASD 主な困難 注意・感情の調整 状況の構造理解 困りごとの原因 「わかっていても抑えられない」 「何が起きているのかわからない」 支援の方向性 刺激を減らす 環境を明確にし見通しを与える

ADHDでは環境の刺激を調整し、ASDでは環境の構造を明示することが支援の鍵になります。

支援のキーワード ― 「見通し」と「安心」

ASD支援の本質は、「次に何が起こるか」がわかること。予測可能な環境が、最大の安心を生みます。

スケジュールを見える化する

状況の変化を事前に予告する

ルールや手順を言語化・明文化する

🧩 柔軟性は“学ぶ”もの安心できる構造の中で、少しずつ変化に慣れていく――それがASD支援の第一歩です。

家庭でできるASD支援のポイント

説明は具体的に、順序立てて 「ちゃんとして」ではなく、「まず〇〇して、次に〇〇してね」と段階を示す。

感情ではなく構造で伝える 「どうしてそんなことするの!」ではなく、「それをすると〇〇になるよ」と結果で伝える。

変化を予告する 「明日は時間割が変わるよ」「お客さんが来るよ」と事前に知らせて安心をつくる。

まとめ ― 「空気を翻訳する社会」へ

ASDの子どもたちは、「空気を読まない」のではなく、**“空気があいまいすぎて読み取れない”**だけ。

社会の側が「空気をわかりやすく伝える」工夫をすれば、彼らは自分の力を安心して発揮できます。

🌱 ASD支援とは、「空気を読む力」を求めるのではなく、「空気を翻訳する力」を社会全体で育てること。

参考資料・引用

American Psychiatric Association (2022).……

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