不登校カウンセリングの最初の一手

不登校のカウンセリングでよくあるのが、「子どもに受けさせたいのだけれど、受けたくないって言っているんです」という相談です。怪我や病気であれば本人が医者にいって治療すべきですが、カウンセリングの場合は心のケアが中心ですので、本人じゃなくてもよい場合が多いです。「困っている人」が受けることをお勧めします。ですから、不登校の場合は、不登校の生徒さん本人よりも、親御さんに受けてもらうということをお勧めしています。子どもを無理に受けさせないほうがよい理由が2つ、親御さんが受けたほうがよい理由が2つあります。

子どもを無理にカウンセリングを受けさせないほうがよいのは?

1 見ず知らずの人と話すのはこわい

まず、子ども自身はカウンセリングを受けたいとは自ら思いません。見ず知らずの人に自分の内面を根ほり葉ほりきかれるということはこわいことという印象も与えかねません。さらに、心が弱っているときに、知らない人と会って話をすることは、普段以上にエネルギーが必要なことですので、受けたくない、仮に受けても話したくないという状況になります。そもそも、カウンセリングというものがどんなものかというイメージもないので、余計にストレスを感じて縮こまってしまう恐れがあります。

ある高校生はカウンセリングはこっぴどく叱られるという思いを持っていました。それは、クラスでもかなりのトラブルメーカーがカウンセリング受けたあと、すっかりおとなしくなってしまったというのです。「あの○○ですら黙らせるんだからよっぽどひどいことをされるに違いない」と思ったそうです。これは極端な例ですが、カウンセリングに対してあまり良いイメージがないというが実情かと思います。

2 無理矢理子どもにカウンセリングを受けさせることは自尊心を傷つける

カウンセリングの目的は、その人自身が自分を大切な存在と思えるようになり、自発的に行動の変容をもたらすことです。入り口は、親や養育者や先生などからの紹介もあるかと思いますが、そのときにどのような思いでカウンセリングを受けに来ているかが大切です。ちょっとでも受けようかなという気持ちがあればよいのですが、本人が「受けたくない」と言うのに無理やりつれていくと、逆効果になります。それは「自分の気持ちは分かってもらえない」とか「親は自分のことをダメな存在だと思っている」とか「大人は信頼できない」ということさえ起りえます。

かつて、親御さんに無理矢理つれてこられた中学生がいましたが、カウンセリングの時間中、まったく車から降りてきませんでした。他のケースでもカウンセリングルームまで来たものの「別に話すことないっす」ということで15分もせずに帰っていったりしました。当然、どちらのケースも2回目はありませんでした。無理矢理連れて行かれるのは、それがカウンセリングであれ学校であれ「あなたには自分で決める権利はない」というメッセージを暗に送っていることになります。親御さんにそういう意図がなかったとしても、子どもがそう受け取ってしまいます。

カウンセリングに良いイメージを持たないまま連れて行かれると二度目のカウンセリングというのは、カウンセラーを変えたとしても難しいことです。

カウンセリングを受けるのは親御さんがいい理由

1 行動の変容をもたらすのは困っている人の不安を取り除くことから

一方で親御さんが受けるメリットは大きいです。不登校のお子さん最も多くかかわるのが、一緒に生活している親です。どれだけ有能なカウンセラーが子ども関わっても、親御さんの不安があるままで、子どもの不登校が改善するということは考えにくいです。ですから、親御さんがまずカウンセリングをうけて、親としての自信を取り戻す必要があります。不登校になったのは育て方が悪かったわけでは決してありません。これは子どもさん本人が自分の人生と真剣に向き合った結果によるものです。とはいえ、学校に行かない、勉強がおくれる、受験にひびく、進路が決まらないということなど不安は数多くあるはずです。その親御さんの不安を解消していくことが、実は不登校の状況を改善することに非常に役に立つのです。

不登校が長期化すると、子どもがわがままになったり、場合によっては暴れたりすることがあります。それは親御さんが抱える「負い目」とか「不安」があることを察して、そこをついてやってきます。そうならないためにも、親御さん自身が子どもにスキを見せないことが大事です。そのためには「私の子は学校に行っていないけど大丈夫」「私の子育ては完ぺきではないけど、そのときそのとき精いっぱいやってきたんだ」と自信を持つことです。この親御さんの自信が、子どもさんの心を落ち着かせ、結果として何らかの行動変容をもたらします。

不登校対応の最初の一手は親御さんの不安を取り除き、自信を取り戻してもらうところから始まります。

2 子どもに関わる保護者が「大丈夫」という感覚をもって接することが重要

親御さんが大丈夫という感覚をもって子どもに接していくと、子どもにもその感覚は伝わります。不登校するお子さんの多くは感受性が豊かで、気遣いができる人です。ですので、親御さんが抱える内面の変化にはとても敏感です。言葉の上では「学校行かなくてもいいよ」と言っても、内面には「早く行ってほしいなー」という思いがあると、そっちのほうが伝わって「親は嘘をついている」「私のことを信用していない」という思いになります。心の底から「学校行っても行かなくても、あなたは大切な私の子である」という思いがあって初めて、子どもは安心して過ごせます。その安心感があると、カウンセリングを受けてみようとか、勉強してみようとか、学校にちょっと行ってみようとか変容が見られます。

行動変容をもたらすには、子どもだけを変えようとするよりも、親御さんも一緒に変わっていく姿勢が大切です。心の不調は関係性の病と言われています。であれば、関係性を改善することで、状況を変えることも可能なのです。

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