不登校のお子さんとのコミュニケーションが回復する3つのステップ

不登校が起きるのは子どもの中に何らかの言葉にならない言葉が生まれてしまったからです。その言葉を聞き出すことができれば、解決が早いのですが、事態はそう単純ではありません、むしろ、子どもとの会話自体ができなくなっている親子もたくさんいます。この状況が長く続くと当然不登校の状況も改善しません。仮に学校に行き出しても親子の関係性が悪いというのはその後も問題として残るのです。ではどうすれば子どもとコミュニケーションが取れるようになるのか。ここでは具体的な3つの方法をお勧めします。

コミュニケーションを取り戻す ステップ1 声がけ—あいさつと体調を気遣う言葉

不登校の初期はなかなか言葉を発することさえありません。部屋にこもったまま、食事も別々。声をかけてもそっけない返事が返ってくればいいほうで、人によっては2週間くらい息子の声を聴いていないという方もありました。言葉を発しない理由は、親と話をすると「学校に行け」とか「勉強しなさい」と言われるのではないかという思いがあります。また、学校に行けていない自分が家でご飯を食べてもよいのかということも疑問に思い、自分の情けなさと、親への申し訳なさとが入り混じる中、それでも頑張ることができない自分を責めているのです。そんな状態だからこそ言葉を発しないのではなく、発したくても発せないのです。

ではどうやって子どもコミュニケーションをとるのか。最初はあいさつと、体調を気遣う言葉です。上にも書きましたが、食事することすら罪悪感を感じているので「ご飯食べる?」も最初は結構きつかったりします。反応があってもなくても、声をかける。それで反応があればよいですが、反応がなければせいぜい2回くらいにしておかないと、親御さんの気も滅入ってしまいます。初めのうちは、お互いにびくついてなかなかよそよそしくなるとおもいます。でもそこから始めましょう。それまでの日常とは異なるのですから、それは仕方のないことなのです。新たに関係を創り直すくらいの気持ちでちょうど良いところです。

体調を気遣う言葉をかけるのは、子どもに対して「あなたのことを心配しているんですよ」というメッセージになります。不登校している子どもにしてみれば、そういう言葉がけに助けられているところがあります。

コミュニケーションを取り戻す ステップ2 話題を広げる—何気ないニュース 昔話

少しずつ言葉が出てくるようになると、話題を少し広げます。最近のニュースの話など、第三者の話をします。無理に子どもさんの興味関心に合わせるようなことをはしないで、お母さんの趣味だったり気になることだったりを話します。「そんなのどうでもいい」と思いそうな話題をお勧めします。なぜならどうでもいいような話じゃないと付き合ってくれないからです。「なんで不登校したの?」「部屋にこもって1日なにしているの」「いつになったら学校に行くの?」なんていう話題は本人にとってはどうでもよくない話題で、そういったところに触れてほしくないから黙っている側面があります。ちょっと話ができるようになったからと言って、学校や勉強、今後のことについて話題を振るとまただんまりを決め込まれてしまいます。もちろん、子どもさんのほうから振ってきたのであれば話をすることはアリですが。

あとは、昔話です。これは家族の昔の話だったり、お母さんやお父さんの昔の話などです。本人が小さかったころの話などです。自分が話題に出てくると意外と食いついてきて「あのときは」と話しだしたりもします。ニュースなどの表面的な話題ばかりでははなしが深まりません。とはいえ、一番ききたいところを話題にもできないとなった時に、家族の昔話は有効な話題の一つです。うまくいくと、笑いながら話しができます。

コミュニケーションを取り戻す ステップ3 話を聴く

不登校のことで相談に行くと「お母さんがお説教したりしないで、お子さんの話を聴いて差し上げてください」なんていうアドバイスをもらいます。確かに話を聴くことは効果的です。本当に話すべきことを話す相手というのは「信頼できる」存在です。小さい子どもは無条件に親を信頼しますが、思春期になると親を一度疑います。一人の人間として見るわけです。その時に信頼できるかどうかを見定めています。生みの親であっても信頼できないと子どもが判断したら、子どもは大事なことを話しません。話が聴けるというのは信頼関係が気づけているからこそできる芸当なのです。

では、信頼関係を築くために必要なことは何かと申しますと、それが雑談なのです。えー?と思われるかもしれませんが、雑談できるかどうかが信頼できる相手になるかどうかの分かれ目なのです。これまで不登校の親子に関わってきて、うまくいくケースは親子で雑談できるケースです。これがない場合は、話題がないのでいきなり本題に入るか、話をしないのどちらかしかありません。多くの子どもは話をしない選択をします。そうやってコミュニケーションが断絶をすると解決には向かいません。

ステップ2で「家族の昔話」をすると良いと申し上げたのは、雑談の話題になりうるからです。共通の趣味がなくても、子どもさんと好みが違っても、家族の昔話は共通の経験ですから、話として成り立ちやすいのです。この雑談ができると、話を聴くことに足る存在として子どもが親を認めます。するとあとは、子どもが話をしてくるのを待つと良いでしょう。雑談ができるようになれば、向こうから話をしてくることも珍しくなくなります。そして「あのね・・・」と意を決して話をしてくれるようになります。

雑談ができ親を信頼するようになると、子どもの行動が変化します。それは学校に行くこと以外は普通に家で生活するようになるということです。生活リズムも朝起きて夜寝ること、食事もとる、場合によっては家の手伝いや勉強しだしたりするのです。ここまでの行動が見られると親を信頼することができているので、話してくるのを待たずしても、「学校に行けなくなったことの話してもいいかな?」と話題を持ち出すこともできます。

親御さんに自分の辛さやさみしさを受け止めてほしいというのが子どもさんの本音です。しかしそれができないで苦しんでいるのです。言葉をかけ続けること、そして雑談することを通して、子どもさんの気持ちに寄り添うことができれば、不登校の状況は確実に改善していきます。

不登校したお子さんになぜコミュニケーションが必要か?

それは自己肯定感との関係があります。不登校をすると学校に行けない自分を責めて自己肯定感がさがります。不登校する理由は様々ありますが、人間関係で起こることも少なくありません。いじめやイジリ、ちょっとバカにされたりする、そんなことが積み重なっていけなくなるのです。バカにされないように、文句言われないようにと気を付けながら学校に行くことから緊張感が生まれ精神的に疲弊して学校にけなくなるということが考えられます。不要な緊張ほど人を不幸にするものはありません。不登校になったことでも肯定感が下がるし、場合によってはそこに至るプロセスで自己肯定感が下がっているということもあります。もともと、下がっていた肯定感が不登校をすることでさらに下がってしまいます。このネガティブな決めつけは不登校が長引くと、自身のセルフイメージとなってしまいます。そうなると、「自分のダメさ」を集めるようになります。言い換えると悪いところばかりに目が行くようになるということでもあります。自己肯定感を低下させるのは自分を責めることです。ネガティブな決めつけによるセルフイメージが出来上がってしまうと、その子はできない自分ばかりを見ようとしてしまいます。しかし、自己肯定感が低いままで不登校が解決することはありません。不登校の解決は学校に戻ることにとどまらず、自分が自分で在ることを良しとして、自立して前に進んでいくことにあります。単に学校に戻すだけでは解決に至るどころか、余計に悪化する(再度不登校になる、のちに引きこもるなど)ことさえ考えられます。不登校になった児童・生徒の肯定感を高めることは、その後の人生においても重要なことです。

自己肯定感の回復にとって最も有効なのが会話なのです。何気ない会話ができる存在がそばにいることで「自分がここにいていいんだな」という存在にたいする肯定が強まります。何かができるからすごい、学校行くから良くていかないからダメ、ではなくて、自分自身はそのままでいいんだということを身に染みて感じてもらうことで、自己肯定感が回復し、自立の道を歩んでいくことができるようになるのです。

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