カウンセリング | 不登校サポート | 家庭と子どもの再スタートを応援します - Part 2

カウンセリング

不登校になりはじめの中学生の苦しみの根っこにあることとは?

不登校になりはじめの中学生の苦しみの根っこにあることとは? 不登校する中学生は根が真面目なお子さんが多い

これまで、10年以上不登校になってしまった中学生、高校生にカウンセラーとして関わってきました。その多くは真面目なお子さんが多いです。それゆえにうまくいかないこと、できないことが許せないでストレスをため込んでしまいます。しかも、他人のせいにするのではなく、自分のせいでうまくいかないから、自分を責めることも多く、かなり心は傷ついています。

特に中学生になったばかりの頃は、小学校とのギャップに苦しむことが多いようです。勉強も難しくなり、クラブ活動や塾などやらないといけないことが一気に増えます。また、別の学校からやってくる子どもたちとの関係づくりにも悩んでしまいます。公立中学校の場合、近隣の小学校2~3校が一つの中学にまとめられます。もし、もともと通ってた小学校が小規模で先生の目が行き届くような学校であれば、中学になった途端、突然大人数の中に与まれてしまい、面倒を見てくれる先生もおらず頼る相手がいないことから不安になったりもします。また、他の小学校からきたちょっとやんちゃな生徒たちとの距離の取り方がつかめなかったり、まじめさゆえに、「ちゃんとやろうよ」なんて声をかけて、「なに真面目にやってるの?」なんて言い返されて、そこでも傷つきます。もともと同じ小学校だった仲間も、そういうやんちゃな生徒に流されてしまって、付き合いづらくなります。

真面目な中学生が抱える二つの苦しみ

真面目でいい人の苦しさは二つあります。一つが完璧主義です。

完璧主義はできない自分を責めます。周りから見てもう十分頑張っているのに、本人が納得する基準が高いので苦しい思いをします。小学生の時には、自分の納得できるレベルまで持っていくことはできても、中学の勉強や課題はそうとはいきません。要領のいいお子さんであれば適当にごまかしたり、ある程度のところでケリをつけますが、完璧主義のお子さんはやりきるまで、やめません。そのがんばりが続いているうちは良いのですが、いずれエネルギーが切れてしまいます。完璧主義の人の最大の弱点は「完璧にできないことはやらない」と言うことです。これは認知行動療法の認知の歪みの一つである「全か無か思考」とも呼ばれるもので、やるなら100、100できないならゼロという思考パターンです。また、完璧主義の人に置きがちなのは、他人にも完璧を求めてしまうところもあります。完璧にできていない人を非難して人間関係がこじれることもあります。

もう一つの苦しみが「いい人でなければならない」ということです。真面目な人は、他人に対していい人であろうとします。他人にたいしていい人をやり続けるのは、大人子ども関係なく至難の業です。自分にとって苦手な相手に対してもいい人であろうとすると、気を遣って、相手の機嫌を損ねないようにして、「好かれよう」とします。小学校と中学校とが決定的に違ってくるのは人間関係において、うまくいかないことが増えるということです。異性を意識しだすこともそうですし、お互いに自立の道を歩み始めるので、「みんな一緒に」という枠組みに入りたがらない人も出てきます。小学生の時に培った「いい人」戦略は「みんな一緒に」が前提になっているので、無理が生じます。また、他人にたいしていい人としてふるまうことは、自分の気持ちや意思を抑圧して犠牲にするので、エネルギーを使い果たして破綻します。そして「いい人」としてふるまえない自分を責めると同時に、「いい人」ではない自分を見せられないから、外に出ることをやめて学校に行きづらくなります。

 

真面目な中学生が不登校になったらどう言葉をかけると良いのか?

真面目な中学生が不登校になると、自分を責めて余計に気持ちが沈みがちになります。学校に行かないといけないのに行けない自分、みんなができていることをできない自分、また親の期待を裏切った(という思い込み)から親に対してもどう接して良いか分からないままの生活をします。初めは心配かけまいと、気丈にふるまいますが、それも長く続かない可能性もあります。もともと元気がなくて学校に行けていないのです。しかし、「ゆっくり休みたい」ということも言えないでいます。

お子さんがこういう状態になったら親は何と声をかけるべきか相当に迷うところです。頑張れとは言いづらいです。すでに頑張っているし、無理していることが透けて見えます。かといって「頑張りたい」と思っている相手に「休んでいい」というのも何か違う気がします。下手すると「休む」ことを後押しする言葉がけは、落ち込んでいる状態の時にかけると「学校にいくな」とも受け取りかねません。

私がおすすめするのは、黙って一緒にいるということです。否定も肯定もしない、そして大人の常識や親の価値観をいったん脇において、お子さんがどういう気持ちだろうか、どういう苦しみを持っているだろうか?と言うところに焦点をあてて、言葉を発せずに寄り添うことです。お子さんが話しかけてきたら、話の腰を折らずに聴く、と言うことです。とはいえ、親からは何も話さないというわけではありません。「食べたいものはある?」とか「掃除するから手伝ってほしい」とか、ごくごく普通のことは話してもらってよいです。あいさつももちろん大切です。というのは、学校に行かなくても親から普通に扱ってもらえるというのが子どもにとって一番エネルギーになることだからです。

真面目な中学生が不登校から脱するために必要なこと

不登校しているお子さんが不登校の状態から脱するために必要なことは、完璧主義といい人をやめさせることです。正確に言うと、その考え方を緩める必要があります。特に完璧主義が残っていると、仮に学校に行くようになっても、完璧にできない自分に幻滅して余計にダメージを追う可能性があります。

完璧主義といい人をやめるためには、自分の本音を言葉にする力が必要です。この場合の本音はネガティブな言葉であることが多いです。「あいつが嫌いだ」とか「あのことにたいして腹が立っている」とかです。ただ、こういうことを言ってはいけないという思い込みが強いので、その緊張を緩めるところから始めなければなりません。だからこそカウンセリングをはじめとした言葉を用いるケアが必要になります。親にたいして言えればよいのですが、中学生や高校生のお子さんが親に本音を言うということは珍しいです。第三者の介入が必要な理由は、親ではない、信頼できる大人がいることで、自分の本音を少しずつ語り、お子さん自身の緊張感を緩めることができるようになります。完璧主義といい人から脱していくことは、不登校から脱する以上に、その先の人生にとってもストレスをためにくくしたり、人間関係のトラブルを回避したりすることに大いに役立ちます。

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不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

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不登校の子どもに どうやったら前向きに接することができるのか?

不登校の子どもにどうやったら前向きに接することができるのか? 前向きなかかわりを妨げるもの?

子どもを前向きにしようと働きかけたいのに、なかなかできないで、気が付いたら注意ばかりしている。そんなことございませんか?実はこれは私たちの中に根を下ろしている、減点法の思想から脱する必要があるのです。

学校でのテストは100点満点から始まる減点法が基本です。できていないところに✕がつけられて、その分の点数が引かれて、残ったところが得点となります。これを小学校からずっとやっているので、この減点法というのが物事を評価するときに一つの基準となってしまいます。これが一つの思想とすらなっている面もあります。

お子さんが不登校する前のことを考えてみてください。テストの点に限らず、生活習慣や、日々の細かい言動などを注意するときに「○○しないで」とか「○○は禁止です」、または「□□ができないなら△△はやってはいけません」というような条件付けの注意をしていませんでしたでしょうか?じつはこういう考え方は先に挙げた減点法からでてきているものなのです。親の方に一定の基準があってそこに到達するか否かで、評価がされます。基準を超えるのが当たり前、基準を下回ると注意する、ということになります。その結果なにが起こるのか?

減点法の思想で出てくる言葉とは?

減点法の思想が濃いと、子どもにたいして発する言葉は、注意や不満ばかりになります。こういうネガティブな言葉は、子どもにたいして、自己肯定感を下げたり、自信を失わせたりします。その結果として、人前に出ることを恐れたり、自分の意思表示をすることを避けるようになります。

不登校になったお子さんはこの減点法的な言葉を自分にかけています。「学校行かない俺はダメなやつだ」「どうせ社会に出ても役に立たない」「私なんか生まれてこなければよかった」など、ネガティブな言葉を、ほぼ無意識的にかけています。

特に、不登校してしばらくたって、部屋から出てこないとき、顔色が良くないとき、表情がさえないときなどは本人が意識するとしないとにかかわらず、こういう言葉を自分にかけています。ネガティブな言葉の暗示とも言えます。

減点法から脱するために

お子さんをネガティブな言葉の暗示から解放するためには、ポジティブな言葉を入れていくしかありません。できないところばかり見るのではなく、できているところを見るわけです。減点法の逆で、加点法のかかわりが必要です。

これは「あたりまえ」とか「普通」という概念を取り払うところから始まります。

「普通、中学3年生なら高校進学を考えるよね」とか、「普通、高校1年の女子ならもっと身だしなみに気を遣うよね」とか、「学校行かないのにアルバイトしているなんて普通ありえないよね」ということです。既存の「普通」「あたりまえ」にとらわれている状態からの脱却が必要になります。

不登校のお子さんの場合は、「学校に行ってあたりまえ」という「普通」にたいして自分が見合わないので責めています。普通のことが出来ない人間という、自分に「社会不適応者」の烙印押されたような気分になります。決してそんなことはありません。学校に行った人間が全て「普通」の人間で「社会に適応」できているわけではありません。そもそも不登校だからと言って、「社会不適応者」と決めつけるには若すぎます。

加点法の枠組みでかかわる

子どもに一番関わる親御さんが、加点法の枠組みで子どもさんにかかわれるようになると、変容が生まれます。そのためには、親御さん自身の中にどういう「普通」や「あたりまえ」があるかを知る必要があります。ここが分かってくると、親基準ではなく、こども基準で物事を考えることができるようになり、結果としてできているところに目が向きやすくなります。

加点法の関わりを増やすためには、相手の存在に目を向けることが肝要になります。存在=命、とらえると伝わりやすいかもしれません。できる―できないの「行為」に目が行くと減点法になりがちですが、お子さんの命そのものに目が向けば、できるーできない、という枠組みとは違ってお子さんに関わることができます。同時にこのかかわりは子どもにたいして、一人の人間としての敬意をもった接し方にもなり、お子さんの心にエネルギーを注いでいくことにもつながります。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

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学校に行き渋る中学生が強く感じる新年度の「疲れ」の正体

学校に行き渋る中学生が強く感じる新年度の「疲れ」の正体 子どもたちは何に疲れるのか?

新年度が始まって、疲れが出てくるのが、この4月の下旬です。この疲れですが、一体何か?ということです。体力的な疲れはありますが、若い中学生ですから、しっかり休めばそれは回復します。新しい環境への疲れが大きいです。これは、大きく、人間関係と環境に分かれます。人間関係は小学校とは違う人と出会い、「この人と仲良くして良いのだろうか?」とか、それまで仲の良かった友達が別の人と仲良くなってなんとなく一緒に居づらくなったので、別の友達と一緒にいないといけなくなったり、単純に、自分のことを知ってもらいつつ、相手のことも知ってもらう、そのためのやり取り、というのにも苦労しています。もう一つの環境と言うのは、生活時間、通学経路の違い、持ち物、朝の支度の仕方の違いなどです。慣れている行動を繰り返すことは脳への負荷はそこまでではないですが、新しいものが一気に増えるこの時期の負荷はかなり大きいものと思われます。こういったいろんなものが「疲れ」という言葉で表現されます。

終わらない人間関係

新しい環境に身を置くことで、疲れるを感じるということは大人でも分かると思います。しかし、思春期世代の子どもの場合は特に人間関係がもたらす「緊張感」に晒されます。特に、最近は中学生でもSNSでつながり、学校にいない時間もネット上でコミュニケーションが取れてしまいます。返事が遅れたり、見ていなかったりすると相手に嫌われるかもしれないという不安からスマホを手放せなくなるお子さんさえいます。

宿題や部活はそれぞれ区切りがあり「終わり」があります。しかし人間関係には「終わり」がなくずっと続きます。その緊張感が続くと、結果として体調を崩す、朝起きられない、と言うことになります。この緊張感を感じるセンスには個人差があります。ただ、これまで接してきた不登校のお子さん、学校に行き渋るお子さんの場合は人一倍、この緊張感を感じて(時に過度に)しまうようで、辛い思いをしています。

緊張感の正体

SNSが良くないからと、スマホの利用時間を定めておくことをします。確かに、夜は何時までと決めておくことで、それ以降は友達のメッセージを目にしなくて済みます。しかし、この方法だと、メッセージ見られないから、最後に送ったメッセージにたいして「何か応答が来ているかもしれない」と結果としてソワソワしてしまい、緊張感が続いてしまいます。そもそもSNSにおけるに人間関係の疲れがテキストのみのやり取りで相手がどんな顔をして、どんな思いでその文字を打ったのかが分からないところにあります。分からないからこそ、それを適当に想像してしまいます。特に人間関係ができて日が浅い場合は「嫌われないように」という思いが強いので、その分「嫌な思いさせていないかな」が気になります。このネガティブな想像が実は緊張感のもとになっています。

緊張感からの解放のために

緊張感から疲れを取るには、友達と距離を取ることが大事です。そのための休みということがどうしても必要な場面が出てきます。4月末から始まるゴールデンウイークは心を休めるための休みとして良い時期にあります。また、緊張感からの解放に必要なのは、日々自分のメンタルをケアする力です。これに有効なのがメタ認知です。自分の感情を外に出すことによって、客観的に見ることです。そうすると、中学生であっても自分が抱えている悩みが思ったほど大きなものではなと言うことや、どういう対処をすれば自分が苦しまないで済むかを考えることが出来ます。

メタ認知することを早いうちから覚えておくと、自分のことをよく観察できるようになるので、精神的に参ってしまう前に、休んだり、距離をとったり、場合によっては自分の思いを伝えたりすることができるようになります。

 

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

World Health Organization (2023).…

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不登校のお子さんへの言葉がけが難しいのはなぜ?

不登校のお子さんへの言葉がけが難しいのはなぜ? 前向きな言葉がけがしづらい

「息子が不登校になり、部屋から出てきません。なんと言葉をかけてよいか分からないです」というご質問をよくいただきます。身近にお子さんがいる親御さんなら、言葉を選ぶことに頭をつかい、伝えるタイミングを計り・・・とやっていると神経をすり減らしてしまいます。また、「がんばれ」と言うとプレッシャーになるし「休んでいいよ」と言うと「自分は学校にすら適応できないダメ人間なのか」と落ち込みを促すことさえ考えられます。前に進むことも、その場で休むこともどちらもお子さんにたいして肯定的なメッセージなのですが、受け取る本人は歪んだ受け取り方をすることは珍しくありません。だから言葉を選ぶこと、タイミングを計ることに神経を使わざるを得ないのです。

なぜ言葉選びが難しいのか?

ここは親御さんには耳の痛い話かもしれませんが、大事なところです。

言葉を選ぶことが難しいのは、「不登校」という問題が誰のものなのかが不明確だからというのがあります。最終的に不登校して困るのはお子さんです。しかし、「このままではこの子は生きていけるのだろうか」「私の育て方が悪かったから困っているのだろうか」と親の心配・不安、または自分を責める気持ちがあります。これは「子どもへの声がけ=自分の安心のため」となってしまうため、子どもに寄り添った言葉になりません。子どもにはそれが分かるので、どんな言葉をかけたとしても、心に響くどころか「また私に言うこと聞かせようとしている」と反発心を生んでしまうことになります。多くの親御さんが陥っている「言葉だけ」で子どもを何とか立ち直らせようとしている状態がこれです。本や勉強会で仕入れていた言葉を使ってもうまくいかないのは「誰のために」その言葉を子どもに伝えているのかがあいまいだからです。言い換えると、言葉選びで悩む親御さんは自分の言葉が相手を傷つけることが分かっていてお困りなんだろうと思います。それは自分の不安をお子さんにかぶせてしまうことが、感覚的に分かっていらっしゃるからとも言えます。

問題の所在を明確にすることで心構えが変わる

不登校はお子さんの問題です。ただし、そこに不安を感じている親御さんがいることも事実です。ここに明確な切り分けがいります。不登校はお子さんが引き受ける、自分(親自身)の不安は自分が引き受けるということです。お子さんが不登校になって喜ぶ親はいません。不安になって当然です。しかし、その不安を自分で引き受けることで、お子さんの重荷が一つ減ります。さらに、「不登校するのもこの子の人生」と、お子さんの人生をお子さんのものとして尊重する。そうすると、お子さんへかける言葉も変わってきます。また、お子さんが不登校している頃で親御さんが楽しみを減らす、ということをされます。「子どもが苦しんでいるのに私だけ楽しい思いをするわけにはいかない・・・」と。これも多くは逆効果になります。お子さんが不登校していようがしていまいが、同じようにふるまい、親御さんは親御さんの人生を楽しむことが、お子さんにも良い影響を与えます。

不登校という問題ではなく、お子さんの存在を見る

不登校していようと、していまいと、親御さんにとっては大切なお子さんであることは変わりません。不登校の不安を自分で引き受けると、普通の声がけができるようになります。普通の声がけというのは、あさはおはようと言い、食事ができたら、ご飯をすすめ、日常の雑多な会話をし、「今日は出かけるから、お昼はここに用意したの自分で食べてね」ということと、「できればお風呂も掃除しておいて」と家の用事を依頼することです。

一足飛びにこのような関係にはなりません。まずは家の中でのあいさつからスタートすると良いです。その時に、腫れ物に触るようにではなく、当たり前に、『あなたは家族の一員なんだからあいさつするのは当然よ』くらいの思いで声をかけて差し上げてください。はじめは応答はないかもしれません。それでも平静を装ってでも、学校に行っていたときと同じように言葉をかけてみてください。

不登校の回復に必要なステップとして、学校に行かなくても日常生活を普通に送れるようになるというのがあります。そのステージに持っていくためには不登校という問題ばかりを見るのではなく、学校には行っていないけども、普通に会話ができる、そういう関係性を築いていくことが大切になります。

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不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

World Health Organization (2023).…

不登校のお子さんへの言葉がけが難しいのはなぜ? Read More »

不登校の小学生・中学生・高校生に効果的なbeingアプローチ

不登校している小学生・中学生・高校生に効果的なbeingアプローチ 不登校は「ダメなこと」という価値観から抜ける

学校に行くのが当たり前で、不登校するのはいけないこと、という考え方は一般的です。ですから、何とか学校に行かせようと周りが必死に働きかけるわけです。しかし、不登校は「ダメなこと」で関わると、不登校している「あなた」も「ダメな人」と受け止めて、自己肯定感が下がり、余計に外に出るハードルが高くなります。不登校は良いとか悪いという判断基準をいったん脇において、目の前にいるお子さんの思いや気持ちに焦点を当てていくことが大事です。不登校は成長過程の一つのプロセスのようなものです。そこを通らない人もいますが、通る人もいます。通った時にどう接するか?が重要になります。その際に効果的なのがbeingアプローチです。

beingアプローチとは

beingアプローチとは目の前にいる人の存在=beingにまなざしを向けることです。学校行く行かないは行為=doingです。doingは目に見えて、比べることができ、優劣がつきます。「不登校はダメなこと」という思いが「自分はダメだ」と認識を違えてしまうのは、人をdoing(行為)で見ているからです。一方のbeingは相手の存在そのものに目を向けます。存在は言い換えると命ともいえます。不登校しているからあなたの命(存在)がダメだとはなりません。不登校していようと、していまいと、存在そのものは変わらず、尊いものなのです。この存在に目を向けていくことで、結果として、相手の良い面や良い変化が見えてきたり、一見して悪化しているような状況でも前向きにとらえることができます。

beingとdoingの関係は手のひらに例えると分かりやすいです。私たちが手でやる作業のほとんどは指がやっています。ペンを持つ、箸をもつ、スマホをタップする、パソコンのタイプをする、本のページをめくるなどです。一方で手のひら自体はできる作業はそんなにありません。指がないと今あげたようなことは極めて難しいです。しかし、手のひらがないと指は動きません。doingだけを見ているというのは指の機能だけを見ていて、そこに「がんばれ」と言っているわけです。しかし、手のひらにエネルギーを送らないと指が動かないようにbeing(存在)にエネルギーを送らないと、doing(行為)もうまくいかないのです。

beingアプローチの実際

「私、生きている意味ないんでもう死にたいんです。学校行っていない私が社会で働けるわけないし、親だって私が今は中学生だから何とかしてくれるんだろうけど、あと3年もしたらきっと見放すと思う。だからもういいんです」ということを話して来た中3女子がいました。少し涙を流しながらも、淡々とれいせいに話していました。自殺をほのめかす内容ですから、放っておくわけにはいかないのです。

しかし、こちらが動揺して「そんなこと言ってはいけない」と言っても、相手の発言、思いを否定することになります。この時に何と声をかけるかが重要です。まず、自分の思いを言葉にできたこと。死にたいくらい辛い思いを誰かに打ち明けること自体、勇気のいることです。彼女が嘘で言っているとはとても思えない緊張感がありました。さらにいうなれば、そういう思いがありながらも、約束のカウンセリングに来た、ということはそこにわずかながらでも希望を持ってきていることになります。

beingアプローチは言葉の背後に隠れた思いや気持ちを見ることができます。ただ、それが分かったからと言って、すぐに「希望をもってここに来られたんですね」などと安っぽい言葉で応答してはいけません。ただ黙ってじっと、一緒にたたずみます。相手が感じている、重く辛い気持ちをちょっとでも手助けできないかという思いを持って、しばらくの重たい沈黙を共有するのです。すると、また彼女が話し始めます。その時は、そういう考えに至った理由や実際に死んでしまうとどうなるか、どんな方法で死のうか、なんていう思考の足跡を話してくれました。ほどなくして、「あー、全部喋っちゃった」少し軽くなった雰囲気で表情も和らぎます。ここまでくると峠を越えた感じです。

相手がもつネガティブな思い、そこに前向きに寄り添えるのがbeingアプローチの真骨頂とも言えます。言葉(doing)にとらわれて、こっちが焦ったのでは、おそらく不登校しているお子さんは「こいつも分かってくれないで直そうとしてくる人だ」とカウンセラーを忌避します。相手の存在に目を向けて「分かろうとする」ことに重きを置いて関わるのがbeingアプローチです。

beingアプローチがもたらす変容

私はこれまで多くの不登校しているお子さんにこのbeingアプローチを用いて関わってきました。不登校している、生き渋っている、引きこもっているなど、状況は様々でした。本人には直接かかわれない(カウンセリングを受けたがらない)で、親御さんのカウンセリングを続けたケースもあります。どんなケースであってもこのスタンスを崩したことはありません。すべてがうまくいきました、というと誇大広告になってしまいますが、一定期間関わることで、何らかの変容があったことは間違いありません。もちろんその変容は一見するとネガティブなものかもしれません。しかし、そのプロセスを経ることでしかたどり着けない、その人なりの未来があると考えます。そのネガティブな変容の中にすら希望の種を見いだしていけるのがこのbeingアプローチでもあります。

学校に行かないことで辛い思いをしている状況では、視野が狭くなってなかなか前向きな考えを見いだすことが出来ません。不登校が長引いているとその状況に慣れっこになってしまって、不安があることが普通で、不安を払しょくすることをかえって恐れるということさえ出てきます。(家族システムズ論の創始者のマレー・ボーエン氏はこれを「不安拘束」と呼びました)この不安が家族の一員となっている状況から抜け出すためにも、第三者のかかわりが大切になります。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

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不登校しているお子さんを持つ親がとるべき最も必要な対応

不登校しているお子さんを持つ親にとって最も重要な対応とは? 不登校対応で求められるものは?

不登校の対応を調べて、行動することよりも、実は難しいのが「待つこと」です。何もしないでじっと待っている、というのは、自分が「何もしていない、子どもが大変なのに、サボっている」人間のようで嫌かもしれません。しかし、この「待つこと」を覚悟を決めて、子どもの様子を見ていると、そこには何らかの変化があることを見ることができます。不登校中に起こる変化は、必ずしも望ましいものではないかもしれません(昼夜逆転、食事をしない、ゲームやネットにハマる・・・など)ただ、これもプロセスとして起こりやすいことです。この様子を待ち続けると、今度は子どもの方が「親の対応が変わったぞ」ということで考え始めます。子どもが何かを言い出すまで、動き出すまでは相当に大変なことですが、ここをこらえないことには、不登校の根本的な問題は解決しないと言えます。ちなみに不登校の根本的な問題とは、子どもの自立です。

待つことによる変容

哲学者の鷲田清一さんの『待つということ』からの引用です。

「ぼくも学校に通うのが嫌だったり会社をやめたかったときなどに、学校の敷地内や会社の近くの公園にお気に入りの場所を作り、ある期間、折があればそこに出向いて、あ足元を歩く鳩なんかをみながら、ふやけた姿勢で茫然と座っていたという経験がありますが、そんなときには、悩んでいてもらちがあかないことに嫌気がさして、いったん何事かを放棄し、新たな構えを作るというか、決心の訪れを待っていたような気もします。(中略)決心にも、『する』のではなく、『待つ』の一面があるのかもしれません。何事かを捨てて空虚な場所をつくり、水が満ちてくるように何かがやってくるのを『待つ』とでもいうか。全部を本当に捨てることは不可能ですから、からだを退避させることで、象徴的に捨てていたに過ぎないでしょうけれども。」

この文は鷲田清一さんの編集者の方が鷲田さんに宛てた手紙にあったそうです。

何かをするということは、結果として焦りをもたらします。そしてその焦りは、次の段階へいく構えを作ることをせずに、どんどん行動させられてしまうことになり、結果として疲れてしまいます。

不登校のご相談に来られる方の多くは、これまでいろんな対応を試みたが思ったような効果がでなかったと、疲れている親御さんです。

不登校を一種の病理と捉えてみる。

風邪も腹痛も何もしないで、身体の機能に任せて治るのを待つ姿勢、が基本的にあるから感知するんだろうと思います。もちろん服薬等もありますが、基本的には休むということは病気がなくなって、からだが回復するのを待つということです。数日待っていると治ります。不登校を病気と同じようにとらえると、自分の力で何かを「する」のではなく「待つ」ということも一つの対応として有効です。

学校にも行かず、担任とも話をしない、カウンセリングも受けない。フリースクールをすすめても見向きもしない。そんな中学生の親御さんが、不登校解決に奔走するのをやめて、この「待つ」を実践されました。日々普通に暮らして、会話をして、時に一緒に出掛ける。するとある日お子さんが「考えていることがあるんだ」と話をしてきました。そこから、事態は変化していきました。お子さんが自身の考えを言葉にするまでに、半年近くかかったそうです。家の手伝いも始めて、冬場は雪かき(雪国にお住まいだったので)をしたり、洗濯ものを取り込んだり、掃除をしたりするようになったそうです。彼の考えは農業に従事することだったようで、そこから農業の勉強を始めました。

子どもの自立に向けて必要だと分かっていても・・・

実はこの「待つ」というのは非常に難しく、上述のように自責の念に駆られますし、このまま放っておいて良くなるとはとても思えない状況があります。ただ、何かをやっても良くなる保証はありません。むしろ、最も身近な大人である親御さんが、社会に出ることを前向きにとらえて、お仕事をしたり、趣味を楽しんでいる背中を見せるほうが、よっぽど励みになります。不登校しているお子さんは「学校に行けない自分は社会に不適応な存在だ」と決めつけているところがあります。この決めつけを外すには「親が楽しそうだな」ということを言葉で伝えるのではなく、感じ取ってもらう必要があります。「待つ」ということは言い換えると「背中で語る」ということになるかもしれません。「君は大丈夫だ」「社会に出てやっていくことができる」という前向きなメッセージを背中から発してお子さんに届けてみてください。「待つ」ということにあえてもう一つ付け加えるならお子さんのことを「信じて」待つということです。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

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🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

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不登校している中学生 ずっとゲームをしている やめさせた方がよい?

不登校している中学生 ずっとゲームをしているやめさせた方がよい? 不登校しているお子さんに今日は何してた?とたずねると・・・

不登校しているお子さんで、「今日は勉強してました」と応えてくれるお子さんは稀です。すくなくとも、私がこれまで出会ってきた中高生にはいませんでした。何をしているかというと、たいていはゲームまたは動画をひたすら見ている、という感じです。最近は夜中にAmazonプライムやネットフリックスでアニメやドラマを一気見している、という話も聴きます。こういうコンテンツとの付き合いに気をもむ親御さんからも話のご相談も受けます。「ずっとゲームしている」「ひたすら動画を見ている」そういうお子さんいたいして、「どうやってやめさせたらいいか」、「そもそもやめさせて良いものか」、といったご相談です。

子どもたちはゲームや動画で何を得ているか?

ゲームや動画をやめさせるかどうかの判断は結構難しくて、状況やお子さんの特性にもよります。そこで判断のヒントになるのが、「子どもがゲームや動画で何を得ているのか?」です。面白い、楽しい、落ち着くといってポジティブなものを得ているのであれば、少なくともゲーム機やネット端末を取り上げる必要はありません。どういうコンテンツを楽しんでいるのか、話を聴いてみてください。これは子どもに限らず自分の好きなものを人に話すことは嬉しいことだからです。不登校しているお子さんは自己肯定感が下がっていることがおおく、そこから気持ちを引き上げるには言葉をポジティブな経験をする必要があります。しかし、ずっと家にいるとポジティブな経験はしにくいです。そこに、自分の好きなコンテンツの話に耳を傾けてくれる人がいることは、子どもにとっての励みとなります。

一方で、「なにもすることがないから」とか「なんとなく」というものであれば、ゲームや動画以外のことで何かできないか、と話しあうことが必要です。また、「本当はやめたいけど、気が付くと数時間経っている」という場合は、途中で声をかけるなど、申し合わせておくことも大切です。子どもの話を聴かずに機器を取り上げて強制的に引き放すことは多くの場合得策ではありません。まずは何を得ているかを尋ねて、ネガティブな場合は別の何かをするように促す。

ゲームや動画から子どもを引き離す方法

ゲームや動画からお子さんを引き離す方法として2つ提案します。

1つは時間の可視化です。1週間くらいの短いスパンでどれくらいゲームや動画に時間を当てたかを紙(できれば大きめ)に書いていきます。そして最終的にそれが寝ている時間と食事やお風呂の時間を除いた自由な時間のどれくらいの割合なのかを計算します。以前にこの方法で小学6年生の男の子が「やばいですね~」と自覚して、ゲームを離れて、もともとやっていたサッカーに戻っていったということがあります。

もう一つの方法はどんどんやらせることです。1日最低〇時間以上ゲームまたは動画に充てると決めます。これは逆説的アプローチという一つの方法で、あえてとことんやらせて応援する、ということです。「そんなことして大丈夫?」と思われますが、この背景にしゃゲシュタルト心理学の「Unfinished business(未解決の問題)」というものがあります。気が済んでいないからいつまでも続けてしまうのであって気が済むと人はやめてしまうという考え方です。

これもかつてネットゲームにはまって不登校になったお子さんがいらっしゃって、「そのゲームで1位になるまで学校に行っても勉強してもいけない」ルールを定めたところ、1週間もしないうちに「もう無理です」ということでゲームから離れました。ただ、この2つ目の方法で気を付けないといけないのはASDなど過集中になりやすいお子さんには逆効果なるので注意が必要です。

ゲームや動画にはまってしまう子どもは何を考えているのか?

ゲームや動画にハマってしまうというお子さんの心理でよく言われるのが「現実逃避」です。ゲームやアニメがもつ没入感が現実の様々な問題から切り離してくれます。では何から逃げているのか?ということですが、それはズバリ「自分の人生」から逃げているのです。「これからどうするのか」「自分はどうやって生きていこうか」「自分は生きている意味があるのか、価値があるのか」そういった、人生からくる問いからの逃避です。これは不登校しているお子さんに限らず思春期世代のお子さんの多くが苦しめらる問いです。逃避しなければやっていられない、というくらい重く、そして苦しい状況です。逃避せずに立ち向かうと「死にたくなる」問いでもあります。ネガティブな言動が出てきたときは、実はこの問いに立ち向かい始めた時です。びっくりする発言をしますが、その時から心が前に向いて動いていくことになります。

児童精神科医の佐々木正美先生は「自分が自分に寄せる希望や願望と、他者の評価による差や乖離を埋め合わせる生き様が、苦悩、混乱、努力で象徴される思春期の実態です。やりたいこととやれること、なりたいものとなれるものの間にある葛藤こそ、普通で正常な思春期の姿であり、それは誰もが程度の差こそあれ、通り過ぎなくてはならない思春期を生きる営みなのです。」と思春期時代の苦しみを示されました。まさに不登校して現実逃避して、そこから自分の人生の問いに立ち向かっている姿は思春期の苦悩そのものです。ネガティブな状況になるのは、必然でもあるのです。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

不登校している中学生 ずっとゲームをしている やめさせた方がよい? Read More »

子どもの自己肯定感を育むために最も大切な1つのこと

子どもの自己肯定感を高めるために最も大切な1つのこと 不登校になると、子どもの自己肯定感が下がる

子どもが不登校になり、スクールカウンセラーをはじめとした身近な相談者に話をすると、必ずと言っていいほど自己肯定感のことが話題になります。不登校は学校に行くという他の子が当たり前にやっていることができなくなるという状態でもあるので、自信を失って当然でもあります。学校に復帰するにしても、不登校してふさぎ込んでいる状態から抜け出すにも自己肯定感は必要です。そして、子どもの自己肯定感をあげるためのアドバイスとして、「ほめる」「みとめる」「否定しない」ということを伝えられます。これは落ちこんでいる人への接し方としては大事ですが、実はこれでは自己肯定感は育まれません。

自己肯定感を高めるためには自己理解が必要

自己理解をすると自己肯定感が確実にあがります。自分を知っていくというプロセスは結果として自己受容につながるからです。「この自分でいい」「今の自分でも大丈夫」と思えたら、不登校の問題は急速に解決に向かいます。

自己理解は、「ほめる」「みとめる」「否定しない」という外的な関わりにも連動します。自分のことが分かってくると何を認められたいのか、何を否定されたくないのか、ということが分かってきます。「自分」というものが徐々に形作られていることで、他者からの承認を受け取ることができるようになります。

逆に自己否定が強い人にいくら、ほめ言葉や承認の言葉を投げかけても受け取りません。また、否定しないように気を付けていても、本人が自分を否定しているので、肯定感を高めていくという状況から遠ざかっていきます。自己否定が強い人ほど、自己理解のプロセスが重要になります。

余談ですが、不登校に限らず発達に課題のあるお子さんも小学校の高学年頃から自分の特性の理解が必要と言われています。自分の特性が分かることで、自分自身で対処法を考えることができるようになります。

自己理解をうながす専門家とのやりとり

病気の人が、自分の病状のことを理解しないで、食事や生活習慣を変えてもあまり効果がありません。やみくもに薬を飲むとかえって病状を悪化させることもあります。そこで医者に行って、自分の状態を伝えて、適切な対処法を教えてもらうわけです。不登校もおなじで(不登校は病気ではありませんが)自分が何に困っているのかを専門家(医者やカウンセラー)に伝えることで、適切な対処法を知ることができます。このプロセスでいくつか質問されます。その質問は知識と経験に基づいた仮説です。当てはまるか当てはまらないか、ちょっとは当てはまるのか、ほとんど同じなのか。質問に応えながら、自分を語ることになります。

この専門家との対話のプロセスで「自分はこういう状態なのか」というのをはじめて言葉の上で理解していくことになります。同時に、語りながら「意外と大丈夫かもしれない」と思ったり、「結構大変なんだな」と自分自身をメタ認知(客観視)することで自然と自分を肯定してくことができるようになります。

これを定期的に振り返りながら、進めていくことで自己理解が深まり、自己肯定感が高まっていきます。

自己理解は裏切らない

自分のことを知り、そのことを肯定した人は、その先も自分のことを大切にして歩むことができます。不登校の課題が解決したからと言ってその先の人生が順風満帆というわけにはいきません。しかし、その都度、どう対処すればよいか、誰を頼ればよいか、そういったことが見えてきます。またこの問題に立ち向かうべきか、逃げるべきかの判断もできるようになります。自己理解を深め、今の自分を肯定できるまでになった人は、不登校の時に味わったようなメンタル不調に陥ることも極めて少ないです。

先日、ファイルの整理をしていると過去にかかわった方のリストが出てきました。過去と言っても3~4年前です。なんとそのリスト名前のある人がみんな、カウンセリングを終えて、それぞれ自立し、将来への歩みを進めていることに気づきました。自己理解を深めることは1日2日ではできない、時間と根気のいる作業ではありますが、そのプロセスを大事にしてくださったクライアントさんは、肯定的な変容を見せたのち、私のもとを巣立っていきました。

深まった自己理解は裏切りません。確実な自己肯定感を身に着けさせてくれるのです。

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不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

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不登校の中学生に説得が通じない理由

不登校の中学生に説得が通じないのは反抗期だからという理由だけではない 反抗期という側面だけとらえているとうまくいかないこともある

中学生は反抗期の真っただ中で、不登校しているお子さんに限らず親のいうことを素直に受け入れません。親の言うことに従うことを厭う傾向にあります。仮に、親の言うとおりにしたほうが、楽だろう、正しいだろうということが分かっていても、それをしたくないと言い張ります。不登校しているお子さんに、学校に行くことや、勉強すること、進路のことを考えていることを促すと、「うるさい」とか「わかっている」という言葉が乱暴にかえってきたり、無視したりします。

不登校しているお子さんの中には特に強く反発する人もいます。しかし、反抗期だから反発しているという側面だけをとらえて対処していくと、事態をこじらせてしまいます。大事なことは、不登校しているお子さんが信じていることは何か?を見極めていくことです。

子どもは何かを信じている

信じる、信じないというと宗教的にも思われますが、まさにそれくらい強い、信仰心と言えるくらい強いものを子どもは持っています。それが前向きなこと「やればできる」とか「努力は裏切らない」とか「自分は恵まれている」というものであればよいのですが、ネガティブなものを信じていることが多いです。特に不登校のお子さんに多いのは「自分はバカだ」「自分はブスだ」「自分は社会に適応できない」という誤ったものを信じています。論理療法を編み出したアルバート・エリスはこのような誤った考えを信じていることを「イラショナル・ビリーフ」と言いました。「イラショナル・ビリーフ」とは、事実に基づかない非論理的な信念です。周りの大人からみれば、それは本人の思い込みでその思い込みさえ解きほぐせば自体が改善すると考えて、「そんなことないよ」と説得を試みます。しかし、多くの場合、この説得は失敗し、むしろ「イラショナル・ビリーフ」を頑なに守り続ける姿勢を強化してしまいます。

説得はうまくいかない

自分が信じているものが間違っていると言われると人は傷つきます。たとえば、私はスターバックスが好きです。しかし「スタバのコーヒーはまずい」とか「スタバなんかダサい」と言われるといい気分はしません。好きなものを否定されただけでも傷つきます。

信じているものというのは「好き」がさらに強くなって、本人にとって「それがないと生きられない」くらい大切なものです。仮にその考えが客観的に誤っている、非合理で、そんなものないほうが絶対に良い、というものであっても、本人にとっては「大切な」ものなのです。説得をするとこれを頭ごなしに否定することになります。これは結果として、説得されたほうにとっては「存在否定」につながり、非常に傷つきます。「スタバがまずい」なんていう意見とは非にならないくらい辛い思いをします。

イラショナル・ビリーフから解き放つために

イラショナル・ビリーフから解き放つには、本人が「これは間違っている」「こんなのばかばかしい」と気づくことが必要です。そのためには説得のようにこちらの意見を受け入れさせるのではなく、相手の考えを聴きながら、本人にその考えの矛盾点や自分が損をしているということを、話させることが必要になります。自分で自分にかけたマインドコントロールを解くことが必要です。

どんなに誤った考えであってもその考えを持つに至る経緯や、持ち続けている理由があります。これを敬意と共感をもって聴くことが求められます。これには時間もかかるし、非常に忍耐も伴います。毎日一緒に生活している親御さんがこのようなフォローをしていくというのはかなり酷です。だから我々のようなカウンセラーという存在がいるのだと私は認識しています。

誤った考えに縛られ続けている状態を解き放つことができれば、お子さんは自立の道を歩んでいきます。もしかしたら、すでにそのようなかかわりを続けているご家庭もあるかもしれません。そうだとしたら、もう一息です。もうちょっとだけ今のかかわりを続けてみてください。お子さんの変容を看取ることができる日が必ずやってきます。

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不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

World Health Organization (2023).…

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不登校している子どもが「やる気がない」「生きている意味がない」と発言した時に何と言ってあげればよいか?

不登校している子どもが「やる気がない」「生きている意味がない」と発言した時に何と言ってあげればよいか? 不登校の一つの心理状態として起こりうる「無気力」

「不登校」といっても、そのお子さんの状況は様々です。部屋から一歩も出てこない、昼夜逆転している、食事は一緒にするけど会話はない。一方で家の手伝いを積極的にする、学校には行かないけど塾や習い事に行く、家の手伝いはするなど千差万別です。その中で一緒に暮らしていて辛いのがお子さんが「無気力」になっている状態です。「やる気がない」「生きている意味が分からない」というネガティブな言葉が多く、表情もさえず顔色も悪い。見るからに生気がないという状況です。このような状況を目の当たりにして、前向きになれる保護者さんはまずいらっしゃらないと思います。「大丈夫かな」と心配になるのが当然です。

無気力なお子さんに言葉をかけるよりも大切なこと

「無気力なお子さんにたいしてどんな声がけをしたらよいでしょうか?」といったたぐいのご質問はよくいただきます。このような状況にたいして有効な手立ては実は言葉をかけることではありません。特に言葉を発しないで一緒に過ごす。お伝えするのはこれです。家の中のどこでもよいので、一緒にいて無言で過ごす。その際に、お子さんは何をしていても良いですが、親はテレビを見たり、スマホを見たりは特にしないで、ただ黙って過ごす。(お茶を飲むくらいは良いと思います)話しかけたり、見つめたりしないで、一緒にいる。お子さんが「何?」と問いかけてきたら、視線を合わせて「ただ一緒にいるだけよ」と応えてそのまま特に会話をしない。もし「僕さ~、」と何か話し始めたら、とくにほめたり、改善策を伝えたり、問いかけたりせずに「そうなんだ」ひたすら聴く。逆に何も話をしなければ、一瞬うなづいてゆっくりその場を離れます。普通に立ち去って良いのですが、ため息だけは禁物です。お子さんにたいしてネガティブなメッセージになります。

一緒にいることが何をもたらすのか?

言葉を交わさないで一緒にいるということに意味があるのか?と思われるかもしれません。不登校しているお子さんは学校に行っていない自分にたいしてネガティブな思いを持っています。その思いが強くなりすぎて、無気力になっています。「何もしない自分は価値がない」と思っているところに、「何もしないで傍にいてくれる親」がいると子どもはどう感じるでしょうか?初めは「なんか言われるかも」とプレッシャーに感じるかもしれませんが、何も言わないけど、不機嫌そうではないということが伝われば、お子さんは安心します。一緒にいるということは「行為」ではなく「存在」そのものへの肯定につながります。何ができているからいい、何ができないからだめ、というところを越えて、「あなた自身が素晴らしい存在」というメッセージにつながります。一緒にいるときに心の中でお子さんに受け取ってほしいメッセージを抱いておくと、ジワリと伝わります。

存在を認められると強い

不登校しているお子さんに限らず、大人も含めて自分自身の存在を認めてほしい気持ちはあります。行為にたいする承認や評価よりも、存在そのものを認められることが何よりも心の励みとなります。言葉によってなせることもありますが、無気力になって、何と言葉をかけてよいか分からないときは、言葉ではなく、一緒にいるという自分自身の存在でもってお子さんを承認する。そしてその時に心の中で「あなたは素晴らしい存在」というメッセージを念じながら座ってみます。1回目はうまくいかないかもしれません。しかし、2回、3回と重ねていくと徐々に響いてきます。お子さんが口を開いたらそこから会話の糸口もつくれます。言葉を越えたコミュニケーションの味わいは、関係性の深みも増してくれます。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

World Health Organization (2023). ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics.

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不登校の終わりに向けて必要な2つの心構え​

不登校の終わりに向けて必要な2つの心構え 不登校から抜け出すための取り組み

不登校から抜け出すために親御さんは、本当にあちこちに出向て努力をされています。一時的に功を奏するものもありますが、根本的な解決にはならないということで落胆される日々をお過ごしかもしれません。しかし、不登校には必ず終わりがあります。それは、学校を卒業するから不登校ではなくなるというようなものではなく、不登校したお子さんが苦しい時期を経験することで、それぞれの人生を歩み始めることを通じて前進する力を身につけているからです。この力を得るためには2つのことが大切になります。

1 将来に向けての心配は後回しにする

不登校しているお子さんを見ていると、学校に行かずに家にいて特に生産的なことはしない子どもを見ていると、心配だけでなく、時間を無駄に過ごしていることへの怒りも湧いてきます。その怒りを抑えることにも力を注ぎながらなんとかお子さんに寄り添おうと忍耐をされている日々だとお察しいたします。特に学習面の遅れは将来の仕事にも関わってくるので、これを何とか補填したいと思いも湧いてきますが、勉強のことを促すのはとてもできない、というのも子どもさんの様子を見ていて起きてきます。言いたいことが言えないことが親御さんにとってとても苦しいことです。

目の前のお子さんを見ていて楽観的な見方ができる人は稀です。しかし、これまで関わってきたお子さんたちは不登校している時期の勉強の遅れを取り戻すことはやってのけます。もちろん得手不得手はあるものの、必要な学びは責任をもって取り組んでくれます。いまやっていないからずっとダメになるというものではどうやらなさそうです。

2 子どもへの希望を持つ

もう一つ大事なことが子どもへの信頼です。信頼は結果として希望を持っていることになります。日々の生活を見て、心配が先に立ちます。「先の見えないトンネルに入ったような暗い気持ち」というお話をされたお母さまもいらっしゃいます。確かに「今」を見ればそうなのですが、出口のないトンネルはないので必ず終わりは来ます。

ではどうやったら希望を持てるか?ということですが、単に不登校からの回復を願うことです。願うことに根拠はいりません。初詣でお参りするときに「こういう理由でこの願いが叶いますように」というお参りの仕方はしないと思います。単に自分がそうなってほしいものを願っています。そこに根拠はないと思います。希望を持つことに理由はいりません。あなたのお子さんは大丈夫です。必ずいまの状況を脱して、自立して歩んでいくことができます。

忍耐は愛

日々、特段の変容がない状況は確かにつらいです。忍耐ほど、私たちの心をすり減らすものはありません。しかし、この忍耐こそが、お子さんに対する愛でもあります。希望を持つことと忍耐をすることは実はほぼ同義です。希望を持っているから忍耐ができます。希望がなくて心配や絶望が多ければ、常に現状を変えようと動き回ることになります。自分自身にも、お子さんにもプレッシャーがかかりますし、いろんな人にいろんなことを言われて疲弊します。「うちの子は大丈夫」と思いながら日常を過ごすこと。このこと自体がお子さん自身が安心感を得て、前に進む力の原動力になります。

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不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

World Health Organization (2023).…

不登校の終わりに向けて必要な2つの心構え​ Read More »

不登校したお子さんが自立するプロセスで起きている心の葛藤

不登校のお子さんが自立するプロセスで心の中で起きていること 不登校の解決は自立であると述べてきました

私は不登校の解決は自立であるということを述べてまいりました。ここでいう自立とは自分の意志表示をして自分で決定することを促すことが自立であるという認識です。この自立を促すカウンセリングをしていくことで、徐々に自己肯定感が回復し、自己卑下や自信のなさが解消していきます。そして結果として行動が生み出されて行きます。

自立のプロセスで起きる心の葛藤

お子さんが、自分の意志で決定していく上では、必ず葛藤が起きます。自立する前のお子さんは依存している状態です。(これは必要な依存ですので無理に辞める必要はありません。)この依存状態にあるときは、親に甘えているので、親が決めることに従順に従います。また自分で決めているようでも親の顔色を窺っている様子や、最終的な判断を親にゆだねるということもあります。

しかし、自立するとなると誰かの顔色や他人に判断をゆだねるわけにもいかないのです。そこには自分で決めたという責任を全うする必要が出てきます。この時に恐怖心や自信のなさが出てきます。

考えることを面倒くさいという感じで放置する人も出てきます。また、親の意に反する決定をすることに葛藤を覚える人もいます。

こういう心の中で起きているさまざまな感情の渦が子どもさんを押しつぶすくらいのプレッシャーになることもあります。不登校のお子さんはこういう複雑なプロセスが非常に重いケースがほとんどです。

葛藤しているお子さんにどう対応したらよいのか?

葛藤しているお子さんはとげとげしていて、ザ・反抗期という態度をとるお子さんも少なくありません。口数は減り、聴きたいことにも応えてくれず、何を考えているかわからないという状態です。実際本人も何をどう考えたらよいか分からない状態です。その時に「どうするの?」なんて尋ねられたら腹が立ちます。

葛藤しているお子さんに親御さんができることは本人が答えをだすことを待つこと、そしてたわいもない話で関係をつなぐこと、この二つです。

待つことは信じて待つことですので、「今は何もしていないけどきっと大丈夫」お子さんにたいして温かいまなざしを持つことです。たわいもない話は雑談程度で大丈夫です。この雑談は関係を維持するうえで重要です。ここでつんけんした態度に負けてしまうと、お子さんの不安が非常に強くなります。

親に求められる忍耐力

ここで親に求められるのは忍耐力です。ただしどんな人間にも忍耐力には限界があります。お子さんには温かいまなざしを持ちつつも、どこかで不安や不満を吐き出す必要があります。それが夫婦やご自身の親御さんとの会話で解消できると良いです。それが難しければ、不登校の親の会やカウンセリングを受けることで、忍耐力を回復させると同時に関わり方の具体的な知恵を得ることができます。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

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回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

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🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

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不登校対応は「様子を見る」だけでは足りない

不登校対応は「様子を見る」だけでは足りない スクールカウンセラーが設置されて30年近くたちます

文部科学省がスクールカウンセラーを設置するということを決めたのが1995年とされています。私立の学校や都道府県によってはそれ以前から独自の取り組みとして設置されている学校もあったようです。もうすぐ30年になろうとしています。いまではスクールカウンセラー(以下SC)のいない学校はなく、非常勤ではあるけれども週に1回以上は勤務されているので、つながりやすくなっています。学校によっては加配されて2名以上のSCが勤務されているところもあります。以前は、学校の先生を退職された元校長先生などがなさっていましたが、近年は専門教育を受けた、有資格者が多く、高圧的な面談をするカウンセラーは減ってきたという印象です。

不登校対応とスクールカウンセラー

不登校の対応として、学校はまずスクールカウンセラーとの面談をすすめます。おそらくこの記事を読まれている方も、SCと面談した経験のある人もいらっしゃると思います。SCとの面談が効果的なのは、学校に居ながら第三者という立場をとることができる点にあります。客観的な目でお子さんの状況をとらえてくださいます。これが担任や学年主任だと児童・生徒への先入観があったり、どうしても教師でかばい合うようなところがあり、なかなか客観的とは言えない対応になりがちです。

SCとの面談で担任とは別の視点での情報が入り、不登校の方策が講じられていきます。この方策が当たって状況が改善して、学校に戻るということも起こります。一方で何度も面談を重ねても「様子を見ましょう」といわれるばかりで不登校に向けた方策が立てられない場合もあります。

「様子を見る」以外の不登校対応

状況によっては様子を見るということは必要になりますが、いつまでも様子を見ていても何も変わりません。実際に私のところに問い合わせいただいた保護者の方からも「様子を見る」ことしか言われないためにそれが不満で学校への信頼を失ったというお話もありました。

では、具体的に何をするのが良いのかというと、対応の仕方を変えることです。

たとえば、毎朝、朝ご飯のために声をかけているならやめてみる。逆に声をかけていないならかけてみる。そしてそれをしばらく続けてみる。今までと対応のを変えると相手の反応が変わります。おなじパターンで生活をしないようなリズムをつくっていくことが大切です。

不登校対応で一番大事なことは

一番大事なことは、子どもさん自身に決める機会を多く作るということです。対応を変えて「うるさい」とか「なんで言ってくれないんだ」と言われたら、「お母さんはどう対応したらいいの?」ということでお子さんの要望を聴きます。朝起こすかどうか、食事を用意すべきかどうか、など、お子さん自身がどうしたいかということを尋ねて決めてもらうことです。

不登校解決にとって大事なことは精神的な自立です。ここを目指していくために押したり引いたりしながら、お子さん一人ひとりにあった対応を考えて行きます。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

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回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

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不登校のお子さんにかかわるときに 親が持つべき最も必要な心構え​

不登校のお子さんにかかわるときに親が持つべき最も必要な心構え 言葉のかけ方よりも大切な心構え

不登校のお子さんを持つ保護者の方から受ける質問の中にある、「なんと言葉をかけたらよいでしょうか?」というものがあります。状況に応じていろんな言葉をかけることができます。しかし、お子さんへの優しく、受容的な言葉のかけ方をいくつ暗記してもあまり意味はありません。それ以上に大切なのは、どういう思いで言葉をかけたり、接したりしているか、ということです。

親の思いはすぐに見破られてしまう

子どもさんにたいして、学校に行かせたい、勉強させたい、という思いがあるままで「学校に行かなくても大丈夫」とか「学校に行っても行かなくても私にとって大事なこども」という言葉をかけても、子どもはその言葉の背後にある思いを見破ります。

不登校しているお子さんは、感受性がするどく、表情や言葉のトーンなんかを敏感に察知します。察知しすぎるからこそ、しんどい思いをして学校に行きつづけて、休まざるを得ないくらい消耗しているとも言えます。言葉だけを変えてもうまくいきません。

大切なのは、子どもへの信頼

不登校しているお子さんは、心配な存在です。勉強もしない、人ともつながりがない、進路も決まらないとなると、どこから心配して良いのかすら分からないくらい辛い気持ちになります。そして、あれこれと手をまわして、教材をあてがったり、塾を提案したり、カウンセラーや医者に引き合わせようとしたりします。それ自体は決して悪いことではありません。進めてもらっても大丈夫です。ただしその根本においてほしいのは「心配」ではなく「信頼」です。

お子さんに対する信頼、「今は不登校して家にいるけど、必ず自分で立ち上がって、次のステップに進むことができる」という確信をもって接して差し上げることです。

言葉がけよりも、信頼されている気持ちが嬉しい

子どもにしてみれば心配されることは、「自分はダメな人間だ」とネガティブにとらえてしまう可能性があります。それとは逆に「あなたは大丈夫だもんね」と言葉にはしない思いをいだいて、日々接していくことで、子どもさんの心根にエネルギーを与えることになり、結果として、立ち上がって何らかの行動を起こすきっかけになります。無理に引き起こさなくても、必ずお子さんは立ち上がります。そこへの信頼を持ち続ける忍耐は確かに大変です。しかし、お子さんにして見れば、その忍耐こそが自分が抱える不登校という重荷を一緒に背負ってもらえている気持ちになり、心強いサポートを感じることになります。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

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不登校しているお子さんの自己肯定感をあげるためにできる3つのこと

不登校しているお子さんの自己肯定感をあげるためにできる3つのこと 不登校や行き渋りがあると自己肯定感は下がる

不登校しているお子さんの多くは自己肯定感が低いです。不登校=ダメなこと、という認識があるので、学校に行けない自分はダメな存在ということで自分をたたくことをします。逆に、自己肯定感が低いから「自分なんかが学校にいっても意味がない」という理由で不登校になるケースもあります。どちらが先かは人や状況に拠りますが、低くなった自己肯定感はある程度回復させたいというのは親御さんの思いとして当然です。それはカウンセラーである私も同じ考えです。ではどうやったら回復していくのか、3つ提案いたします。

1 成功体験のハードルを下げる

成功体験というと、何かの大会で優勝するとか、表彰されるとかを思いつくかもしれませんが、そんなことである必要はありません。日常の中での些細なことで、たとえば、朝起きられなかった人が起きられるようになった、部屋の片づけをした、家事を手伝った、頼まれごとを引き受けてやってくれた、など何でも大丈夫です。

不登校になる要因の中に「完璧主義」があるお子さんがいらっしゃいます。完璧にできない=ダメと決めつけている状態です。なんでも完璧にできる人はいないし、そうする必要もないということが分かってくれれば気持ちにゆとりが生まれます。成功体験のハードルが下がれば下がるほど、肯定感を味わう機会も増えます。

2 どんな状況に対しても「順調」と捉える

不登校は、結果ではなくて、プロセスです。ですから、何らかの形で終わりがあるものというとらえ方に変えます。確かに、学校に行かないで、昼夜逆転して、まったく勉強しないで、起きている時間はゲームとYoutubeとtiktokばっかり見ている様子は心配です。ただ、この状況がずっと続くというわけではありません。そのことをお子さんにもお伝えするということで、「今はそういう時期だから順調なのね」とその状況を肯定していくということが大事です。この辺り、親としては忍耐が必要になりますので、必要であれば相談をしたり、親の会に出向いたりして不安や愚痴を吐き出すことをお勧めします。

不登校のなかで起きているできごとを全て「順調」と捉えると不登校に対する意味付けが変わります。お子さんによっては「親の手のうちに居るのは嫌だ」という思いから「順調」という思いを嫌う場合もあります。こういう反応があればシメたものです。次の行動が何か生まれてきやすくなります。

3 良いところをたくさん見つける

自己肯定感が下がる大きな要因の一つが、自分への自信のなさです。自分に良いところがない、という認識があるとなかなかほめても、成果が出ても肯定的にはなれません。結果を出すことももちろん大切ですが、いま、目の前に在る状況やこれまでの経過の中でプラスの材料を見つけていくことが大事です。これについては、第三者の介入があるとよりスムーズです。先入観のない、第三者に言われると親や教師の贔屓目な見方とは違ったものとして、お子さんが自身のよいところをたくさん見いだすことになります。

私がこれまで関わってきたお子さんで、良いところが一つもないお子さんは誰一人いませんでした。むしろ、本人が持っている才能や能力がたくさんあるのにそれに気づいていないという状況です。何気なく伝えた言葉が、親御さんはお子さん本人にとって新鮮に響いているようです。

カウンセリングは8,800円ですが、初回はこれを無料で行い、状況をヒアリングさせていただき、求めに応じて方策を提案しております。

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いきなり問い合わせはちょっと抵抗があるなという方におすすめしております。不要だと思われたら解除もできますので、お気軽にご登録ください。すぐにお問合せしたい方はページの下方に問合せフォームのボタンがございますので、そちらからご連絡ください。

不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

不登校しているお子さんの自己肯定感をあげるためにできる3つのこと Read More »

不登校にカウンセリングは効果があるのか?

不登校にカウンセリングは効果があるのか? カウンセリングって意味あるんですか?

お子さんが不登校になるとカウンセリングを勧められ、スクールカウンセラーにつながることが多いと思います。私自身は今は学校ではカウンセラーをしているわけではありませんが、以前は高校でスクールカウンセラーをしていました。今は個人で不登校のお子さんやその保護者の方のカウンセリングをさせていただいております。「カウンセリングを受けたらどうですか?」と勧められるのですが、カウンセリングがなぜ効果的なのか?という説明は意外とされないまま紹介されているケースがあります。「カウンセリングって意味があるんですか?」なんていわれることもありました(かつて学校に勤めているとき)

カウンセリングだけで登校に結びつくわけではない

たしかに、カウンセリングは万能ではありません。カウンセリングだけで登校できるようになるかどうかというと、私自身ちょっと疑問です。

これまでのケースでは、学校の配慮の仕方をちょっと工夫してもらうだけで登校できるということがありました。学校の友達が声をかけてくれたことがきっかけで登校できたというケースもあります。医療につながって、服薬をはじめて体調が整ったから登校できたというのもありました。

などなど、カウンセリングだけで登校できたかというとそういうわけではありません。

カウンセリングが不登校にたいして果たしている役割とは?

では、なんでカウンセリングを勧められるのか?ということですが、カウンセリングを受けると、話をしてくれるようになります。

不登校している理由や、きっかけ、その時感じていた本人の気持ちなどを言葉にします。それをカウンセラーが受け止め続けていくことで、お子さんの自己肯定感が回復していきます。頭では「今のままではいけない」ということは学校に行かないお子さんたちは、学校にっているお子さん以上に危機意識をもって考えています。しかし、それができない自分にも失望しており、自己否定感が強くなります。

カウンセリングを受けるとそういうネガティブな思考サイクル(自分を責める思考)から脱することができます。そして、肯定感が回復してくると、先のことを考える余裕ができてきます。このころになると、学校に行かないこと以外は普通に生活をしているということが多いです。

自己肯定感が回復しないと、次の行動に移ることが難しい。  

外部が提示する解決策にたいして、自分がどれを選択するかを考えるゆとりがうまれて行動に結びついていきます。

目には見えませんが、カウンセリングを受けることで心のエネルギーを補充し、解決に向けて行動しようという思いが出てきます。最初は多少無理をしているようにも見えますが、徐々にそれが普通にできるようになります。引きこもって、食事もろくにせず、昼夜逆転して、動画とゲームばかりしていたときとは違った姿になっています。

どれだけ高性能な車で、正確なナビがついていて、運転技術も十分ある人が運転する車でもガソリンがなければ走ることはできません。カウンセリングは心にガソリンを補充するような働きをしていると考えています。また、不登校の解決は登校することではなく、将来の歩みを自分で決めて行動する力だと私は考えています。

これまでも学校に戻ったというケースよりも、進学や就職(または就職準備)という形で不登校から脱した人の方が私が関わってきたケースでは多いです。

カウンセリングは解決を導くこともありますが、解決のためのエネルギーを補充する場、と捉えていただければよいと思います。実はそれはお子さんだけでなく、保護者の方にも必要です(場合によってはそれまでの対応に疲弊しているので、保護者のほうが必要なこともあります)

カウンセリングはいつでも受け付けております。メルマガにご登録いただければ、初回のコンサルテーションは無料にて受付ております。その際に「お悩み欄」へのご記入をお願い致します。

 

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不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

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不登校のお子さんにカウンセリングをすすめる前に

不登校のお子さんにカウンセリングをすすめる前に カウンセリングをすすめられた不登校の娘さんはなぜ「もういい」と言ったのでしょうか?

娘「学校に行くのは辛い」

母「そうなの・・・なんか行きたくない理由があるの?」

娘「・・・なんか分からないけど、友達がいやとか、いじめられているとか、

そういうことがあるわけでなくて。ただ、なんか・・・うまく言えないけど・・・」

母「そう。いまは言えないのね。そんなんだったらカウンセリングを受けてみたら?」

娘「えっ・・・」

母「カウンセリングで少しずつ、自分の悩みを聴いてもらったら違ってくると思うよ」

娘「・・・お母さん、どうして私をそうやって突き放すの?もういい」

さて、この会話をよまれて、このお嬢さんはどうしてお母さんに最後に「もういい」と言ったのでしょうか?考えてみてください。どこがまずいのか?この会話文から見えるのはお母様がカウンセリングをすすめるくだりです。

悪気があってカウンセリングをすすめているわけではないのになぜ?

お母様は悪気があるわけでもないし、決して娘を突き放そうとして言ったわけではありません。

しかし、娘さんは「突き放す」という思いをいだきました。これはどうしてでしょうか?

それは、娘さんが話を聴いてほしいのはカウンセラーではなく、お母さんなのです。お母さんに今の辛い、言葉にならない状況を聴いてほしい、分かってほしいという思いがあります。

 

しかし、このお母さんはカウンセリングをすすめました。つまり、このやり取りは娘さんにとっては、「お母さんは話を聴けないのでカウンセラーを呼んできます」と言われているようなものなのです。だから突き放された思いがして、お母様に腹を立てたのです。

子どもにカウンセリングをすすめる前にやるべきこととは?

これはカウンセリングをすすめることが悪いということを言ってるのではありません。

機を見てカウンセリングをすすめることは必要です。医療や学校の先生と会うことも必要になります。

大切なのは子ども(上の会話の場合は娘)さんが「誰に分かってもらうこと」を望んでいるかなのです。大人の考えでは、「どうやって解決しよう」という思考が生まれるので、解決策を提示したくなります。

ただ、これはあくまで大人側の思考であって、子どもにとっては解決に至る前に「自分のことを分かってほしい」という思いがあります。この思いを一番身近な大人である親に分かってもらうこと。これができれば、仮に学校に戻らなくてもこの子どもさんは徐々に将来に向けて考えをもって行動できるようになります。

では、どうすればよいのか?

子どもさんにカウンセリングをすすめたいのに、どうやって切り出して良いか分からないという相談を受けることが多いです。その場合は、まずはお母さままたはお父さまがカウンセリングを受けてください、とお願いしています。

親が子どもよりさきにカウンセリングを受けるメリット

理由は二つあります。

一つは、不登校をしている親御さん自身のストレスや悩みの解消のための時間を取るということです。もう一つは、子どもさんの話を聴くためには「聴いてもらう」経験をたくさんする必要があります。

親がカウンセリングをするように子どもの気持ちに寄り添ってくれるようになれば、不登校は回復に向かいやすくなります。そして、お母さん(お父さん)はカウンセリングを受けてスッキリしている。

頭がクリアになり、今抱える問題にどう対処すればよいかが分かる。という状態を作ることができれば、自然と子どもも「お母さん(お父さん)がやっているカウンセリングを受けてみようか」とか「そのカウンセラーの先生に会ってみたい」と思うようになります。

物事を解決に向ける上で大事なのは、解決方法よりも「理解」です。相手のことは100%分かるなんて言うことはありませんが、

分かろうとする、思いをもって相手に寄り添うと、いつしか、その思いを子どもさんが受け取ってくれます。まずは親御さん自身が心を整えること。

不登校の解決には欠かせない要素の一つです。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine.

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不登校のお子さんが勉強よりも苦手なこととは?

不登校のお子さんが勉強よりも苦手なこととは? 勉強に苦手を感じる理由

タイトルを見て、不登校のお子さんが苦手なことは「これではないか?」と検討をつけてお読みくださった方もいらっしゃると思います。

勉強、人間関係、努力、自己肯定・・・いろいろとあります。ただ、この奥にはあることへの耐性のなさがあります。

全てに共通するのは「自分の思い通りにならない」というストレスです。このことへの耐性がない、と言えます。

さらに言変えるならば「理不尽」を許容することができないとも言い換えられます。

納得できない、だから腹を立てている

自分が納得できないこと、そのことへの怒りや、不満がある可能性が大いにあります。

勉強であれば、いい成績が取れない、クラスの中で1番になれない、分からない、などです。人間関係であれば、自分が入りたいグループに入れない、気を遣わないとコミュニケーションできない。でも周りは自分に気を遣ってくれない。努力については、目標設定してもそのために努力ができない、または努力しても自分が望んだ結果にならない。自己肯定は、学校に行かない自分をっ良しとするなんて到底できない

外に出て人間関係を築いたり、努力することで確実に自分の頑張りや気遣いが認められるのであれば良いですが、それが叶わなかったり、さらには裏目に出たりすることさえあります。

そういう理不尽な世界に納得ができない。根っこにはそういう怒りもあります。

理不尽を受け入れる?

では、ここから脱するにはどうしたらよいか?一つには、世の中はそもそも理不尽で意味の分からないことも受け入れないといけないときがある、そういうことを伝えることもできます。

これで納得してくれる可能性もあります。ただ、根本的に変容を促すとしたら「比較」の世界から脱することです。

自分と何か(他人や世間の常識、兄弟姉妹など)と比べて自分たたきをすることを辞める必要があります。自分は自分、他人と比べて良し悪しを決められる存在ではない、ということに価値観を置く必要があります。その境地に達するには、たくさん自分をメタ認知する必要があります。客観的に自分を見つめて、自分の感情や考えを言葉にしていく。そのことが主体性を育み、自分自身を良しとすることができるプロセスとなります。

カウンセリングが効果的なのは・・・

 

不登校の回復や、自己肯定感の向上、さらには自身の進路選択にカウンセリングが功を奏すのはメタ認知をする場面を定期的に持つことができるからだと私は考えています。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

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たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

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🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

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不登校しているお子さんにカウンセリングよりも必要なこと

不登校しているお子さんにカウンセリングよりも必要なこと 最初は不登校のカウンセリングではなかったのです

ビジョナリーキャリアアカデミーは不登校や引きこもるかた、またはそのご家族のカウンセリングを軸としておりますが、実はカウンセリングをしつつももっと大事なことがあると思ってこの事業を立ち上げました。

それは子どもたち一人ひとりが自分が進みたい道を、を自分で考えて、自分で決めていくこと。そのサポートができればよいなという思いでスタートしました。

ただ、学校に行っている人は学校をはじめ、塾や習い事などを通じてそういう未来を考えることをしています。一方で、不登校になってしまうと、将来のことなんか考えられなくなる人が大半です。

「勉強しない自分は社会に出られない」

「学校に行けない自分はダメだ」

という自己否定の思いから、スタートするので、自己肯定感を取り戻すためにどうしてもカウンセリングが必要になります。

大切なのは、自己肯定感を取り戻したあと

ただ、自己肯定感を取り戻しても、そこで「元気になったね、はいさようなら」では、ちょっと冷たいなという印象があります。実際にこれまで関わってきたケースの多くは、元気になったあと、どう進路を構築するか、自分は何をする人なのか?という問いに一緒に向き合いました。

そしてだいたいが、受験や就職という次のステップまで見届けてから終了する、ということになっております。

学校や塾のように「○○大学何名合格」とか「△△高校への合格率80%」とか数字に追われる必要はなく、関わりを持った生徒一人ひとりに寄り添いながら、進路を見いだしていきます。

そういう甲斐もあってか、ある程度の期間、寄り添った人は、中学も高校も大学も全員第一志望に合格するというミラクルが起きています。

自分で考え抜いた道だから実現しようとする

でもこれは、本人が自分で決めて選び取った進路なので、当然の結果とも言えます。ちなみに勉強自体を直接教えるということはほとんどしていません。勉強の仕方、進路の考え方をお伝えすることはあります。自分で進路を見いだすと子どもたちは自発的に努力を始めます。そこまでの見守りが忍耐ではあります。でも、自分で考えて、自分で決めて、自分で行動できるようになれば、それは一生モノの力になります。しかも不登校という一種の挫折経験から、そこにたどり着いた子たちはメンタルが人一倍強いので、その後の人生でも多少の試練困難ではへこたれない強さも身につけることになります。

無料でご相談受付ております

カウンセリングだけでなく、キャリアや進路に関すること、勉強の仕方などを

ワンストップで、しかも個別にお世話できるのが強み何だろうと思っています。

メンタルケアのことでも、進路のことでも是非、ご相談ください。

相談したいという方はこちらからお気軽にお問合せください お問合せはこちらから 不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

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不登校の日常に希望を見いだす

不登校の日常に希望を見いだす 毎日一緒にいると、悪いところばかりに目が行ってしまう

朝は起きてこない、昼間は部屋にこもって何をしているか分からない。

でも、たぶん勉強はしていないだろう・・・話しかけてもそっけない。

普段一緒に生活していると悪いところばかり目につきます。そして、たいして変わり映えしない日々に「いつまでこの状態が続くのか?」と不安になることと思います。

そのような状況において前向きに動くことは難しく、手を尽くしているけど、成果が上がらないことに絶望感を覚えることさえあるかと思います。

お子さんの変化を見つけていく

確かに、日々の生活のなかでのお子さんの成長は見つけにくいです。

しかし、遡って考えてみてください。不登校になり始めたころと、今を比べるとどうでしょうか?

感情の起伏がへり落ち着いたたわいもない会話を交わすようになった外出するようになった進路のことを口に出すようになった

何かしらの変化を見ることができないでしょうか?もし、全く変化がないというのであればそれは、評価する視点が厳しすぎると思われます。

部屋に引きこもっていた息子が網戸の修理を!

高校生の息子さんが不登校となり部屋から全く出てきませんでした。家族との会話も少なく、食事も部屋で食べていました。しかし、徐々にリビングで過ごす時間が増え、母親だけでなく、父親とも兄妹とも話をするようになりました。

昼間に一人で散歩に行くこともあり、表情も明るくなってきました。そんなある日、網戸の網戸が外れてきていることに息子さんが気づきました。彼は「直すための材料を買ってくるからお金がほしい」と親に求めてきたので、お金を渡して様子を見ました。彼は近くのホームセンターに行って変えるための網と接着剤を買ってきて、網戸の網を変えました。外れていたところだけでなく、外れかけそうな網戸も修理しました。

彼は家に居て外を眺めることが多く、網戸のことが気になっていたこと、一人での散歩ルートにホームセンターが入っており、どうやって網戸を修理したらいいかを店員に尋ねて材料を買ってきたことなどを自らやってのけました。

希望の種をさがす

この家庭が特別何かをしたわけではありません。このお母さまもカウンセリングで「全然だめだ」ということばかりを話す方でした。しかし、少しずつ子どもの変化に目が行くようになり、そのことを嬉しく思っておられたようです。

時間の経過とともに子どもは確実に変容していきます。その違いを日常に中で見つけていくことで、親自身前向きな気持ちを保つことができます。

また、その変化を子どもにフィードバックできれば、なお自身がつきます。もちろん、思春期世代ですから、素直に受け止めずに「別に」とか「そんなことない」としか返ってこないと思いますが、伝えることは大事です。

何気ない日常かもしれませんが、その中にこそ、不登校から脱していくための解決の種がたくさん落ちています。お子さんの小さな変化からも、成長を見いだしていくことができると、親自身もお子さん本人も希望をもって歩むことができるようになります。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.…

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