中学2年の娘です。1年生の2学期ごろから不登校になりました。勉強はしないでずっとスマホを触っています。学校の友達ではない人との付き合いもあるようで、たまに外出すると派手にお金を使ってきます。父親は「もう小遣いはやらなくていい」と言いますが、小遣いをやらないと、部屋に引きこもってしまい、口はきかない、食事はしない(親のいないときに何か食べているようですが)状況です。部屋はコンビニで買ってきたお菓子やペットボトルが散乱していて、掃除するように言ってもしません。あまりにも不潔で変な虫がわいても嫌なので、娘の外出中に部屋に入って掃除をしたら、これまでに見たこともないくらいに激怒して「二度と私の部屋に勝手に入るな」と言ってそれ以来、会話らしい会話はありません。部屋にはもともとカギはついていなかったのですが、内側からフックのようなものをとりつけて、入ることができないようになってしまいました。これまでは、スクールカウンセラーさんの指示で様子を見ていくということをしてましたが、状況は良くなるどころか悪くなる一方で、最近は夜中に起きていて生活のリズムが乱れています。父親とも、3歳下の弟とも顔を合わせることを拒みます。家族で出かけようと誘っても断るばかり。私がLINEやりとりすることだけが唯一の家族のコミュニケーションです。
もう中学2年も終わりになってきました。3年生になって次のステップを考えないといけない状況になりました。とはいえ、家族で話し合う機会などほとんどありません。本人がどんな考えをしているのか全く分からないのですが、どのように接したらよいでしょうか?
というお問合せがあったとします。(これは架空のものです)
娘さんが抱えている悩みを考える
このような場合どう接していくのが良いのかを考えます。
問題は、家族のコミュニケーションと不登校しているお嬢さまの進路です。
これをごちゃ混ぜにして対応するのは難しいです。優先すべきは進路です。進路の話題を通じて会話の糸口を見つける必要があります。
進路の考え方ですが、不登校が長期化していること、学習の遅れが大きいことを考えると、全日制の進学校への進学はまず諦めたほうがよいです。かりにここからハッパをかけて頑張らせて、進学校に入っても同じように、不登校になる可能性が大きいです。通信制やチャレンジスクールなど不登校経験のある生徒を受け入れてくれる高校はたくさんあります。そして、そこから大学や専門学校に進学する生徒さんも少なからずいます。
不登校の原因はなかなか分かりません。ただ、不登校している娘さん自身も次が中学3年で進路を考えないといけないことは分かっています。でも、学校行っていない、勉強していない自分なんかはダメだと思って、この先どうしたらよいのか不安になっています。そしてその不安と逃避するための昼夜逆転であったり家族とのコミュニケーションを避けるということが起きてきます。お金を派手に使って遊ぶのも逃避です。同時に本来向き合うべき悩みと向き合っていない自分を責めているところもあります。
進路の悩みがお母さまが思っている以上に大きく影響しています。
また、家族のコミュニケーションを避ける理由として「こんなになにも頑張っていない自分が家の中にいるのは申し訳ない」という気持ちを持っています。食事をしないのも「自分が食べるのは申し訳ない」とも思っています。
こういった気持ちでいるという前提で娘さんへの接し方を考えてみます
具体的にはどう声をかけたらよいかということです。進路の悩みを切り出すのは勇気はいりますが、ダイレクトに尋ねることをお勧めします。
そろそろ3年生になるけど、高校はどうするの?
次のことを考えたいんだけど、なんかやりたいこととか行きたい学校とかあるの?
などです。まずはきっかけづくりとか、関係をよくしてからと思われがちですが、わざとらしい雑談は逆効果です。不登校している中学生が進路で悩んでいないわけはありません。ただ、この時に娘さんの応答を期待してはいけません。無言でいることは、納得しているかどうかは別として、表面的な同意と捉えて構いません。万が一嫌だったら部屋に勝手に入られたときのように怒ったり、反発したりします。
応答はないけどこちらは、進路のことを考えているんだということを伝えることで、ムスッとしたところは変わりませんが、少なくとも娘さんとしては自分が進学しても良いんだという気持ちを持つことができます。あんまりしつこく毎日やると重くなるので、何かの折に、進路のはなしを直接切り出してみてください。
大切なことは一発でうまくやろうとしないことです。何度か、無視されたり、暗い表情が返ってきたりもありますが、その背後にある娘さんの気持ちは戸惑い何です。学校に行っていない、勉強もしていない自分が高校進学なんて無理だし、行けるとも思っていないのです。
進路のことについて親たちは考えている。話したいならいつでも相談してね。という心構えで声をかけていけば必ず通じます。
反応がなかなかないときは・・・
とはいえ、全く反応がない場合だってあります。その時には具体的に決めたものを提案することです。
ちょっと○○高校の説明会に行ってみない?
○○高校の資料があるから読んでみる?
というものです。全日制のものでも良いですができれば、通信制やチャレンジスクールのものでも良いです。全日制のものを示すと、かなりプレッシャーになります。そして、全日制の高校以外の選択肢があることを示すこともできます。
本人が決めないなら親が決めるというのは乱暴ですが、不登校の回復のプロセスとして重要なのが自分で決めていくということです。人生の選択を自分で決断していくことが自立していくうえで欠かせません。それをあえて、破っていくのです。
不登校は自立のプロセスです。学校に行かないことを決断するのは相当な勇気がいります。そしてそれを実行するというのはかなりの決断なのです。それなのに、自分の進路を決めようとしてくる親への反発は大きくなります。ここで大切なことは、反論させることを目的としていることです。
不登校している娘さんが、素直に親の言うことを聴くということはありえないことなのです。そのためには親が決めるということを阻ませる必要があります。
反論して来たら、「じゃあどうしたいの?」と踏み込んで尋ねてみてください。この時の注意点としては謝らないことです。謝ってしまうと、娘さんが自分の意見を出すことは良くないことだと認識してしまうからです。
このやり方は、荒療治に見えるかもしれません。しかし、遅かれ早かれ進路のことは話しあわないといけないのです。実際の決定は1年後ですが、それに向けた準備は早いほうがよいです。
娘さんと対話の糸口をつかむために進路のはなしを切り出してみてください。