9月, 2024 | 不登校サポート | 家庭と子どもの再スタートを応援します

2024年9月

不登校のお子さんが傷ついてしまうNGの問いかけ

不登校のお子さんが傷ついてしまうNGの問いかけ 会話のきっかけは問いからスタートしている

会話の中には多くの問いかけがあります。「お昼ごはんどうしようか?」、「は?」などの問いかけです。日常的な会話の中で何気なく問いかけたものの中に、子どもが「ウっ」となって心に思いもをの感じてしまうものがいくつかあります。特に、不登校しているお子さんは、すでに心にダメージを負っているので、問いかけたことで不機嫌になったり、黙り込んだりと「不快」な態度を示します。代表的なものとしては、「明日学校どうするの?」「今日は学校行くの?」というのがあります。生き渋っている段階ではこれを問うことは起こりえますし、問うことで、子どもの意識が登校に向くこともあります。しかし、ある程度休み続けているとこの問いは過酷な問いになります。これから逃れるために、本心では全く行く気はないのに「明日は行くよ」と応えることもあります。しかし、実際にはいきません。それは、その場しのぎの応答だからです。

他にも親にきかれたくないことが、あるようです。実際に中高生のカウンセリングをしていてその声をもとにした問いをいくつか紹介いたします。

「じゃあ、どうするの?」

「学校に行かない」「高校を退学する」「進学はしない」「働きたくない」などなど、不登校が長いお子さんは、親にとって心配になる言葉をどんどん発してきます。お子さんと同世代の子が普通にとっている選択をしない、そうすると親にしてみても、どういう未来があるか分からない、だからつい「じゃあ、どうするの?」と聴いてしまいます。

この答えがすぐに出てくるお子さんはまずいません。自分を苦しめている、現状や将来の選択肢をいったん遠ざけるための発言で、別にどうしたいというのはありません。

つらい状況にあるお子さんはまず「休みたい」というのがあります。不安や心配を処理することすら難しく、とにかく何も考えずに「ボーっとしたい」というのが本音です。先のことを考える余裕はない中、とりあえず、自分を保つため、自分を守るために、不安の種を遠ざけているのです。

しっかり休むことができれば、「じゃあ、どうするの?」と問わなくてもそのうち「こういうことを考えている」と言い始めます。親を不安にするようなことを言ってきたときは、「あなたはそう考えているのね」ということで、否定も肯定もせずにとりあえず、その考えをいったん受け止めます。ここで大事なのはそれを、その場で了承する必要はないということです。こっちも考えてみる、ということで結論のないグレーな状態を作ることが大事です。

「何かしてあげられることはない?」

子どもが苦しんでいる姿をみて、親として何もしないでいることはとてもつらいことです。何かしてあげられることがあれば、手を尽くしたいと思う気持ちもあります。

思春期の子どもとしては、親に甘えたい気持ちと、かまってほしくないきもちを行ったり来たりしています。それゆえに不安定になっているというのもあります。それならなぜ、構おうとすると、いやなのか?ということですが、「自分から」言いたいというのがあります。反抗期というのは、反抗することが目的で、合理的な発想よりも、親の言うことを聞かない態度が勝ちます。ですから、親の提案に乗るのではなく、自分から依頼したいという自立心です。ただ、その勇気はないです。だから、いつまでたっても何も言ってこないし、見ていて不安になるし、手助けしたくもなります。一つできることして、「何かしてあげられることがあれば、いつでも言ってね」とあらかじめ伝えておいて、子どもが言いやすい状況を作っておくことです。

不登校の親子のかかわりは我慢なのか?

こういうことを講演やセミナーで話すと必ずと言っていいほど「じゃあ、親が我慢しないといけないんですか?」という質問や感想をいただきます。そこで尋ねるのですが、親は何を我慢しているのでしょうか?ということです。不登校のお子さんにたいするかかわりは、不安からきています。もちろん、不安を感じて当然なのですが、その不安を子どもに立ち直って解消しようという焦りが、子どもに伝わります。この焦りこそが子どもの不快の原因です。この焦りの我慢を子どもにぶつけていては、子どもは不安なままです。

親の不安は親自身が引き受けて解消していく必要があります。世間には不登校の親の会や、行政や学校などの相談窓口もあります。スクールカウンセラーも利用できます。そういうところで話をして不安を解消してみてください。それでも難しい場合は、私のような民間のカウンセリングも利用してみてください。学校でも行政でもない、そして第三者の専門家としてお話を伺い、何らかのアドバイスをすることができます。

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不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

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子どもが不登校になったら、 親は何をしてあげればよいか?

子どもが不登校になったら、親は何をしてあげればよいか? 「どうしてあげればよいですか?」

不登校になった、またはなりそうだという方からのお問合せをいただくことがしばしばあります。

皆さん、悩まれているのは、親として何ができるか?ということです。子どもが困っているので、何かしてあげたい。でも何をしてよいのか?ということが明確ではありません。「病気」とちがって、医者や薬といった、頼り先もあいまいです。

そこで、不登校になったら最初に何をすべきなのか?ということを考えてみました。

不登校のお子さんが最初にしてほしいこと

子どもが真っ先に求めているものは、休息です。とにかく休むことです。不登校を発熱だと考えてみてください。発熱したお子さんに必要なのは休息です。同じです。心の不調であろうと、身体の不調であろうと、必要なのは休息です。

では、どれくらいの休息が必要なのか?と言われると、これも発熱と同じで症状によります。微熱であれば1~2日で回復しますが、高熱であれば数日、病状によっては入院も必要になります。不登校で入院というのはあまりありませんが、調子が整うまで休息が必要になります。

休息の条件

休息が必要といっても気を付けないといけません。休息するにしても、登校するプレッシャーをゼロにするということが必要になります。具体的に見ていきます。

・登校を促さない。学校に行くかどうかを尋ねることが子どもにとってはプレッシャーになります。これ以上、問われたくないから「明日は行くよ」と言ったりしますが、それはその場しのぎの答えで、まず行くことはありません。「学校に行こうかな」と言い出したら、多くの場合は背伸びです。「もうちょっと休んだら」というくらい言ってあげてもよいです。ちなみに登校しだす場合は、多くは何事もなかったかのように普通に準備していくことが多いようです。

・学校との連絡を極力減らすこと。熱心な先生ほど、毎日電話をかけてきて「調子はどうだ」と尋ねてきます。先生には、「学校にきなさい」という意図はなくても、学校から連絡があれば子どもは、そういう風に意図をくみ取ってしまい、プレッシャーになります。しばらく連絡しない、連絡があれば親が間に入って対応します。

・自分で自分を責めたり、焦りの気持ちを極力和らげる。「学校に行かねば」「勉強が遅れてしまう」という焦りを、親や学校からのプレッシャーがなくても自分で自分にプレッシャーをかけている場合があります。そのプレッシャーからの逃避で、一時的にネットやゲーム依存になることもあります。自分でかけているプレッシャーを緩めるには、勉強は後から取り戻せるということ、不登校をした多くの人が、大人になり、社会に出ていけているという事実をお伝えすることで軽減できます。

休息の先にあるもの

どれくらいの期間の休息が必要なのかは誰にもわかりません。本人も分かっていないです。しかし、この休息期間を経ると、家で日常を取り戻します。ときどき「学校に行かないこと以外は普通なんです。」とお話しくださるお母さまがいらっしゃいますが、ここまでくれば、次に進むことができます。日常を取り戻すところが、不登校から脱していく一つの目安になります。

その時、子どもは「しんどい」ということばよりも「ひま」「やることない」「退屈」と言ったりします。そこで「それなら学校行きなさい」と言わずに、「あーそうなの」と子どもが言ったことを足しも引きもしないでそのまま受け止めてあげることが肝要です。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

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不登校の中学生の悩みの根っこにあるもの

不登校の中学生の悩みの根っこにあるもの 不登校の悩みの根っこにあること

これまで多くの不登校をしてる中学生、高校生のカウンセリングをしてきました。はじめは学校の愚痴や親への文句などが出てきます。そういうことを一つ一つ聴いていき、親御さんにもフォローをいれて、徐々に家族の関係性が変わってきます。

しかし、学校に行かない、勉強しないという状況は変わらないままであることがあります。

「どうして勉強しないのか?」とは直接訪ねませんが、学校や勉強のことをちょっとずつ尋ねていくと、最終的には自分の進路の話にたどり着きます。ここが悩みの根っこです。中学生はまだまだ社会のことがわからないことと、さらには「高校に行けなかったらどうしよう」という思いもあり、高校生以上にこの進路の悩みを重く受け止めているケースが多いです。

将来を考えるうえで大事なこと

「進路」というとその先の進学や就職のことになりますが、実はまだこの言葉も表層です。進路の問題の奥にあるのは、自分自身の存在や生き方の問題です。不登校している状態に至るにあたって、自己肯定感が下がり、将来に対する悲観的な考えや、自分自身の存在に対する不安を抱えています。「私は生きていてよいのか?」「ここにいてよいのか?」という答えの出ない問いを延々考えます。しかも、お子さん自身もこの問いを言語化することができずに苦しんでいます。このネガティブな思考のループを言語化できると抜けだすことができますが、そうじゃない場合は、なんだかわからない重苦しい気持ちのまま、どんよりとして、不機嫌そうに生活します。話しかけてもそっけない応答しかありません。特に中学生はここの言語化はなかなかできません。

こういう状態の時は、最低限のコミュニケーションにして、放っておくのが一番です。このようにアドバイスるすると「でも、本当に何もしないんですよ」と親御さんの心配な声が聞こえてきます。確かにその通りなんですが、ここがポイントで親御さんの心配を子どもの行動で解決しようとしないことが大事です。親御さんがお子さんのことを心配するのは当然です。しかし、その心配は親御さんご自身が解決する必要があります。

 

親御さんの不安の解消法

親御さんの不安の解消をするためには、ご自身がどんな不安を感じているかを言語化することです。ご夫婦やご自身の親に話を聴いてもらうのが良いです。

しかし、話を聴いてもらうだけで、アドバイスや意見は求めないことです。これは弱さをさらけ出した人をさらに鞭打つようなことになり、悩みを打ち明けてアドバイスや意見されることで余計に傷ついてしまいます。子育て論や話を聴いた相談相手の成功談など、説教されるのは論外です。ここが家族や友人の相談とカウンセリングの違いでもあります。

カウンセリングであれば、守秘義務も守られたうえで話をして、否定も肯定も、意見もされずにただ話しっぱなしということができます。余計なアドバイスもありません。ご夫婦でカウンセリングを受けられたり、親子で一緒にカウンセリングを受けられるケースもあります。ご家族の誰かが不安を一手に引き受けるのではなく、家族で共有してしまうと、不安を引き起こしている問題自体はすぐに解決しなくても、その重さや深刻さはかなり解消されます。

 

まずは心の土台づくりから

不登校のお子さんの悩みが「進路」にあるからといって、学校に行かなくなってすぐにその話題を振ることは、子どもにとって非常に重荷になります。まずは、今日明日、今現在の自分のことで精いっぱいで、将来のことなんか考えることはできません。まずは、漠然とした不安・不満を解消するべく、休むことが大事になります。そもそも、お子さん自身も進路や自分の生き方で悩んでいるということ自体を意識していません。

下手に話題をふると、お子さんがプレッシャーを感じてしまい、思いついたかのように、目標を述べて学校に通いだしたり、勉強しだしたりします。しかし、心が重苦しい気分のまま将来を考えて、何か行動しても長続きしません。むしろ、これをやられると、不登校・引きこもりが長期化する恐れもあります。

心の土台ができるまでには時間がかかるかもしれません。休んだり、ちょっと出歩いたり、医療やカウンセリングにつながったりして、先が見えない不安をかかえることもしかりです。しかし、その状況は結果ではなくて、次に向けたプロセスなのです。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

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子どもが学校に生き渋ったらどんな対応をするべきか?

子どもが学校に生き渋ったらどんな対応をするべきか? 長期休み明けは、学校に行きたくないと思う子どもはすくなくない

夏休みや冬休みなど、長い休みがあると、学校に戻るのがしんどいです。生活リズムが戻っていないということから、眠気や体調の不調を訴えることもあります。体一方で、体調には問題はないけど、なんだか学校に行くことを渋るようなところがあると、ちょっと困りもんです。体調の問題であれば、少し時間がたつと徐々に解決します。遅刻や早退、欠席しても不登校になる可能性は少ないです。しかし、理由なくいきたくないというのは不登校の兆候です。学校に行く用意はしているけど、朝になるといけない、行きたくない、そもそも起きてこないなどがあると無理に学校に行くことを促すよりも休むことを優先した方が良いです。

学校に行きたくないと言ってきた場合

夏休み明けに「学校に行きたくない」といった場合は、とりあえず、すぐには理由を聞かずにいったん休ませてください。夏休みの最終日に「明日から学校だ、どうしよう」という思いで緊張して夜を過ごしています。そして、いよいよ朝になって「やっぱり無理だ」と思っても「親に言ったらどう思われるか?」というとっても緊張した状態です。その緊張状態を少しでも緩める必要があります。そのためには、まずは理由を聞かずに休ませることです。そして、すこし間をおいてから理由を尋ねるようにしてみてください。

学校に行きたくないと言ってきたときに「やってはいけない対応」

子どもにとって「学校に来たくない」ということを体調以外を理由に親に伝えることはとても勇気のいることです。そして、自分の理由が筋が通らない(または理由がうまく説明できない)ということは子ども自身が理解しています。そこを責めて「とりあえずいきなさい」と無理に送り出すことは良くないです。

特に、夏休み明けの9月は、中高生の自殺が増えます。ニュースになるのはほんの一部ですが、9月1日に18歳以下の自殺者数が増えることを文部科学省も発表しています。

まずは休ませるということは不登校を助長する?

理由を聞かずに学校を休むことをすすめるなんて、不登校を助長するようにも思われるかもしれません。確かに、これを機に不登校になる人もいます。しかし、対処が早ければ、短い期間の不登校で済みます。人によっては1日~1週間くらいで改善することもあります。そしてなにより、緊張やプレッシャーを抱えたまま学校に行くことは、本人にとってはとても大きなストレスになります。過剰なストレス状態では視野も狭くなりますし、物事を冷静に考える力も弱まってしまいます。万が一のことを考えて、家にとどめて、休んで話をすることで、子どもが感じている緊張を緩めることが大事になります。

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子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.

World Health Organization (2023).…

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