ビジョンを啓くカギ

VCAの授業で大切にしているものの一つが自己表現です。

自分の思いを言葉にして、他人に聴いてもらうのです。

黙っていると、だれもそこに対して情報をくれません。しかし、言葉にして話していると、情報をくれる人、人を紹介してくれる人、後押ししてくれる人などがいます。もちろん、ネガティブなことを言う人もいます。でも、自分の思いが強ければ強いほど、他人は、その人を応援しようと力になってくれることのほうが多いようです。

 

留学したいという思いのあるAさん高校生がいました。

彼女は思いはあるものの、「どうせ親には反対されるだろうし、先生にもお前の成績では無理だといわれる」と勝手に決めてなかなか話せずにいました。しかし、ある時のテレビ番組で日本の高校生が、カナダに留学して奮闘している姿を目にしました。そのことがきっかけで、思い切って学校の担任の先生に話をしました。すると、

「2年生の英語のY先生が以前カナダに留学されていたよ」とその先生を紹介してもらいました。

そこから話がどんどん進みました。

向こうでの暮らしのこと、初めは短めの留学から始めてみるとか、留学をあっせんしている団体、奨学金のことなど、その先生は丁寧に教えてくださいました。

そういう情報が集まると、今度は親にも話せます。

お金のことや、向こうでの暮らしが安全であることが分かれば納得してもらえると思ったからです。

しかし、父親に「なんで行きたいの?」と言われて彼女は言葉に窮してしまいました。

留学したい理由はなんだろう?

単に海外での生活にあこがれていたというのが正直なところでした。

考えてもなかなか出てこない彼女はY先生に相談に行きました。

「Y先生が留学したのはどうしてですか?」

するとY先生はこう答えました。

「英語を使った仕事をしたいと思っていたの。でも、日本にいたら英語を使った生活ってできないから、やっぱり英語ばっかりのところに住むしかないと思って留学したの。そして、そこで出会った先生が素晴らしかったから、私も学校の先生になろうと思ったの」と。

さらに先生はこう付け加えました。

「本当は、外国で先生をしたいと思っているの。だからいずれは外国に行こうと思ってるの。Aさんはどうして留学したいの?」

「単に海外の生活にあこがれて、なんとなくいいなーと思っただけなんです」と正直に答えました。

するとY先生は笑いながら

「私も初めはそうだったのよ。それで、あこがれだけで留学はさせられないって親に言われた。でも、あこがれって大事だと思うの。他の子はあこがれてないんだからね。あこがれていてもわざわざこんな風に相談に来ないんだから。そこにはきっと、Aさんなりの理由があるはずなのよ。海外の生活のどんなところが良いと思ったの?」

「なんか、日本とは全然違うんですよね。住んでいる家の大きさとか、家具もおしゃれだし、街並みもきれいだし。英語の勉強もしたいという思いもあるんですけど、それよりも、なんか家とか街とかそういうのを見てみたいんです。実際に。」

「それも立派な動機なんじゃないの?住んでみないとわからないことだってあるし。内装とかインテリアとか好きなの?」

「そうなんです。私、自分の部屋に置くものとか、色とか結構こだわっていて。妹の部屋も、コーディネートしたりしたんです。親にはそんなことばかりしないで、勉強しなさいと言われますが、やりだすと止まらないんです。」

「それでいいんじゃないの?好きなことをやるために留学するっていうのも立派な理由でしょう」

AさんはY先生と話しているうちに、どうして自分がそこまで留学したいのかが分かりました。

翌年、Aさんはまず1か月のホームステイを経験します。そして、大学受験をせずに、カナダに留学しました。

 

Aさんのビジョンが前に進んだのは、言葉にして人に伝えたからなのです。

そりゃ、黙っていれば否定されることはありません。でも、前にも進まないのです。

今はネットでいろいろなことを調べられます。でも、そこには有益な情報だけではなく、古くなった情報や、ネガティブな情報、誤った情報もあります。情報の選択をまちがうと、行動も間違ってしまい、ビジョン達成とは遠のいてしまいます。

思いを言葉にする。

これが、ビジョンを啓くカギです。

 

 

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です