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生きている意味

不登校の中学生 高校生を持つ親御さんに知ってほしいこと

不登校の中学生、高校生をもつ親御さんに知っておいてほしい、子どもの内面世界 不登校のカウンセリングでたどり着くのは「生きる意味」への問い

私が以前に書いた記事で、「不登校の中で苦しくなる問い―生きる意味があるのか?」というコラムがあります。思いのほかよく読まれているようですが、どうやら不登校している中学生、高校生、場合によってあ小学生など、当事者が読んでくれているようです。おそらくこの問いに苦しんでいるのでしょうが、これは誰からも答えを教えてもらうことができず、また、そんな相談を誰かにすると心配されるので、なかなか言葉にできないのだとお思います。

不登校のカウンセリングの表層と深み

不登校のきっかけは様々です。

いじめ、友達とのトラブル、恋愛のもつれ、学力不信、先生との関係に対する不信感など様々あります。これが原因であることもあるので、対処することは必要です。ただ、本当に解決しないといけないのは、本人が抱える漠然とした将来に対する不安です。

その不安がある以上、再登校できたとしても、休みがちであったり、表情はどんよりしていて暗かったりします。

学校で起きた出来事から時間がたち、本人の口からもそのことがあまりでなくなってきたら、次に言うのは「死にたい」とか、「何もしたくない」という生きることに対する否定感です。

生きていても意味がない、ということを納得させようとネットでネガティブな情報をたくさん集めて、妙な知識が増えることもあります。陰謀論や行き過ぎたスピリチュアルな考え方などです。

生きる意味を問いだしたらしばらくこもってしまいます

さらに、この生きる意味を問い始めたら、こもってしまいます。昼夜逆転したうえに、家族とのコミュニケーションも激減します。一緒に暮らしている家族としては、本当に打つ手がなく、なんと声をかけてよいかすら悩む日々になります。

しかし、ここが底です。この状況から出てくるのに、数週間から数か月かかりますが、ここを抜けると、不登校と引きこもりはほぼ終わります。再登校はしないかもしれませんが、生活リズムが徐々に戻り、食欲も出てきます。回復の一つの目安は自然な笑顔です。これが出てくると、前を向いている状態です。

ただ、ここまでの間が本当に苦しい。親も子も苦しいのです。

苦しい期間をどう乗り越えるのか

生きる意味を問うている間は苦しい期間が続きます。親にとってもどうして上げてよいか分からない、八方ふさがりの状態になります。この間、カウンセリングを受けて、親の不安を徹底的に言葉にして乗り切ります。夫婦で話せばよいと言ってもけんかになることがあります。親子でけんかしている様子が不登校しているお子さんに伝わるのは余計に「自分のせいでお父さんとお母さんがけんかしている」と不安をあおってしまいます。

そうならないためにも第三者の介入が必要です。カウンセラーが持っている「大丈夫」という思いを親御さんにも持っていただけると、お子さんの回復によい効果をもたらします。そして、親がカウンセラーにつながっていることで、お子さんがこもっている状態から脱した時に「私もカウンセリングを受ける」ということになります。そのカウンセリングは自分がどんな辛いところを通ってきたか、そしてどれだけ親に対して怒りや憎しみを持ったかなど親に話しづらいことも言葉にしていきます。ここまでくれば、ほぼ回復していると思ってよいです。

不安を飲み込まずに言葉にすること、とても大事なことです。感情の言語化は心の命綱でもあります。

お子さんが話さない、こもっていてどう対処してよいか分からないという場合はぜひとも、無料相談をご利用ください。

無料相談をご希望される方はこちらからお気軽にお申し込みください 無料相談のお申込み 不登校やキャリア教育に関するコラム 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び (生物心理社会モデルでみる不登校の背景④/シリーズ記事)

本連載は、子どもの「しんどさ」を「生物・心理・社会」の三つの視点で読み解きます。

基本となる考え方(生物心理社会モデル)の解説は→ https://visionary-career-academy.com/archives/4178

「食べる」「食べない」に隠された心の叫び

思春期になると、「太りたくない」「食べるのがこわい」「食べたら吐きたい」と訴える子がいます。夜になると過食が止まらず、罪悪感から吐いてしまう子もいます。

食べることは生きるための基本的な行動ですが、摂食障害(Eating Disorders)は単なる食の問題ではなく、心・体・社会のバランスが崩れたときに起こる心身症状です。

生物・心理・社会 ― 三つの視点で整えていく 生物(Biological)― 命を脅かす「飢餓」のメカニズム

摂食障害は、圧倒的に女性に多い疾患です。厚生労働省の調査(2020年「思春期・青年期の摂食障害実態調査」)によると、日本の女性の約0.5〜1%が一生のうちに神経性やせ症(Anorexia Nervosa)を経験し、男性の約10倍の発症率とされています。

食べない状態が続くと、体は「飢餓モード」に入り、心拍・代謝・体温が低下します。極端な場合は体重が30kgを下回り、心不全や電解質異常によって命を落とすこともあります。

さらに、本人は「やせすぎ」と指摘されても、自分を「太っている」と感じる――。これは、**身体像のゆがみ(Body Image Distortion)**と呼ばれる特徴です。

この段階では、脳そのものが飢餓状態に支配され、判断力や感情制御が低下し、「まだ足りない」「もっと減らせる」という思考が止まらなくなります。つまり、意志や性格ではなく、脳が飢餓に支配されているのです。

心理(Psychological)― 「やせることで自分を保つ」

摂食障害の多くの背景には、完璧主義・負けず嫌い・強いべき思考があります。

・何事もきちんとやらなければならない・失敗してはいけない・他の人より劣ってはいけない

こうした強い自己要求が、「体重」という客観的な数値に置き換わります。

「この数字なら私は大丈夫」「この数字であの人より細い」

やせていることは、他者より「優位である証拠」になり、周囲の女性より細いことで安心感と優越感を得る。

ジムの鏡に映る自分の細い体や、温泉で他人が驚いた表情を見た瞬間に「勝った」と感じる――。この小さな“勝利感”が、脳の報酬系を刺激し、さらにやせようという衝動を強化していきます。

やがて、体重計を常に持ち歩き、一日に何度も測るなど、体重への強迫的執着が生じます。

また、摂食障害の方の中には、**リストカットやオーバードーズ(過量服薬)**を併発することもあります。「完璧でいられない自分」を罰するかのように、身体的な痛みで心の苦しさを和らげようとするのです。

社会(Social)― SNSがつくる「比較と劣等感の時代」

現代のSNSは、情報を共有するツールであると同時に、他人との比較や劣等感を刺激する装置になっています。

タイムラインには「理想の体型」「完璧な生活」「映える食事」が並び、「自分はまだ足りない」「もっと頑張らなきゃ」という思考が強化されていきます。

SNSは、私たちの脳の報酬系を刺激するように設計されており、「誰かより上でありたい」という競争心を無意識に掻き立てます。その中で、「やせている=優れている」という文化的な価値観が強化され、子どもたちはそこに“居場所”を見出してしまうのです。

家庭や学校でも、「ちゃんと食べなさい」「太った?」といった何気ない言葉が本人にとっては「否定」や「監視」として響くことがあります。

食の話題を避け、安心できる日常会話を増やすこと。それが家庭でできる最初の支援です。

医療と治療の必要性

摂食障害は、医療介入が欠かせない精神疾患です。放置すると身体合併症や自殺リスクが高まり、早期治療が必要です。

DSM-5では、主に次の3タイプに分類されます。

神経性やせ症(Anorexia Nervosa)

神経性過食症(Bulimia Nervosa)

過食性障害(Binge Eating Disorder)

治療では、体と心の回復を同時に進めることが基本です。

栄養管理と内科的治療

認知行動療法(CBT)

家族療法・心理教育

特に認知行動療法は、摂食障害の根にある完璧主義や「〜すべき」思考をやわらげ、「体重=価値」ではない自己評価を育てていく方法として有効です。

日本では、国立病院機構久里浜医療センターをはじめ、摂食障害専門外来を設ける医療機関が増えています。適切な治療によって回復できる病気であることを、まず知ることが大切です。

家庭でできる支援

・体重や見た目の話題を避ける・「食べた?」「太った?」ではなく、「今日はどう過ごせた?」と聞く・「食べてほしい」より「一緒に過ごしたい」と伝える・医療機関やスクールカウンセラーに早めに相談する・家族自身も心理的サポートを受ける

親の育て方の問題ではありません

摂食障害は「親のせい」ではありません。まじめで努力家な性格が極端な方向に働いた結果として、心と体のバランスが崩れてしまったのです。

しかし希望があります。専門的支援を受けた多くの人が、数年をかけて健康な体と自己肯定感を取り戻しています。焦らず、時間をかけて回復を見守ることが、何よりの支えになります。

参考・参照

・厚生労働省(2020)「思春期・青年期の摂食障害実態調査」・American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.・世界保健機関(WHO, 2023)ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics・国立病院機構久里浜医療センター「摂食障害外来」・日本摂食障害学会『摂食障害治療ガイドライン 第2版』

今日のまなざし

「食べない」「食べすぎる」は、心のSOS。変えようとする前に、「あなたが苦しいこと、ちゃんとわかっているよ」と伝えてください。

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

文・大久保智弘 公認心理師・スクールカウンセラー/2児の父。 不登校や思春期の親子支援を専門に活動中。

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このコラムは、不登校や引きこもりのお子さんをもつ親御さんのためにお届けしています。 お子さんの状況や支援の方向性など、メールでのご相談を受け付けています。 ご質問には順次お返事しております。

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不登校のなかで「自分には生きている意味がない」と思う

不登校を始めてある程度の時間が経つと、学校に行かない自分を責める気持ちが強くなります。

学校に行かない自分には価値がないと思いこんで時にカウンセラーに対して

「私は生きている意味がないんです」

とはっきりと言葉にする人もいます。

これまでも、不登校している生徒だけでなく、普通に学校に通っている生徒さんでも、自分自身の生きている意味を見出すことができず、死のうとした人の話を何人も聴いてきました。

橋の上に行って飛び降りようとした

何も持たずに冬の山の中に一人で行った

首を吊ろうと思って、ロープの代わりになるものを探した。

包丁を取り出して自分の胸に突き立てようとした

踏切から線路に侵入して横になった

あと一歩のところで命を落とすような行為をしている生徒さんは実は結構いました。しかし、なぜだか分からないけどやっぱりやめようと思ったといいます。

死ぬのが怖い、家族の顔がよぎった、人に見つかってしまった、死体がぐちゃぐちゃになったら迷惑だろうなと思ったとか、なにがしかの思いとどまらせる気持ちがはたらき、死ぬのを辞めています。

自分にたいして「生きている意味」を問うとき、その答えは必ず「意味がある」なのです。しかし、不登校をしていると特に、学校に行かない、社会に適応できない自分はダメな存在と決めつけてしまっているので、自分には生きている意味がないと決めつけて、自殺を図る。でも死ぬことができなかった・・・

一度自殺を試みて、うまくいかなかった場合に、再び自殺を図ろうと思いがあっても、実行に移すまでには結構な時間がかかります。

そして辛いのことはそこから始まります。それは

死ぬことすらできない自分に何の価値があるのか?

とさらに責める気持ちが強くなるのです。不登校が長く続く場合、この自分を責める気持ちと戦っているため、一日中家で、布団のなかにいたとしても、疲れてしまうのです。自分を責める声が、何をしていても聞こえてくるのです。これほど辛いことはありません。こんな時に、人は前向きに考えたり、何か別のことをしようという思いにはなりません。

では、どうするのがよいのか???

それは、自分を責めている気持ちを認めることです。責めたくなる気持ちに対して自分で共感をしていくことです。そんなことできるわけないと思われるかもしれませんが、生きる意味、生きている意味を問うているときに、下手なプラス思考はかえって危険です。問題の本質から目をそらすだけで、返って辛くなってしまうのです。

だから自分の気持ちをそのまま認める。言葉で書くのは簡単ですが、実はこれが結構難しい。「そんなの無理」と思った方はまず、他人からしてもらうことです。

この生きている意味をとうこと、自分の価値のなさを責めることから解放されることが、実は学校に行くいかない以上に大切なことなのです。ここをクリアすることができれば、学校に行かなくても人生を切り開いていく力を得ることができます。…

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