不登校の中学生は勉強しなくてよいのか?​

不登校の中学生は勉強しなくてよいのか? 不登校している子どもが全く勉強しない

「不登校している中学1年生の息子が勉強しません。家に居てゲームばかりしています。」「中3の娘は受験を控えているのに、Youtuberの推し活に一生懸命で、小遣いを要求してくるばかりで困ってます。」不登校のご相談に来られるお母さまに、お子さんの様子をうかがうとこのようなお話をよく伺います。一方で全く勉強をしておらず、学校から出される課題もやらない、定期考査は受けに行っても分からないから受けない。先々のことを考えると、ゲームやYoutuberの推し活に時間やお金を使ってほしくない、むしろ、もっと将来のためになる活動をしてほしい、というのがあって、不安や心配になるのは当然です。

やれと言ってもやらない、だからといって言わないわけにもいかない

勉強をしてほしいとおもって、やれといったところでやりません。それどころか「分かってる」「うするさいな」となってそれでけんかになることさえあります。押しても引いてもダメだという状態がつづき、親としては悶々とした日々を過ごすことになります。

あの手この手で勉強させようとするわけですが、なかなかうまくいきません。学校の課題をやったら推し活のライブに行ける、といったことや、勉強した時間と同じ時間だけゲームをしてよいなどとルールをもうけて、形式的には勉強をしますが、明らかに手を抜いている、時間だけ稼いでいるのが見えて余計に腹がたちます。

勉強しないで困るのは誰の問題か?を明確にしておく

勉強しないという悩みは親が代わりにできないところにもどかしさがあります。(不登校で学校に行かないも同じですが)

しかしここではっきりさせておかないといけないのは、勉強しないで将来的に困るのはお子さん自身だということです。

そういう話をすると、「この子が将来、働かなくて面倒見るのは私なんですよ」と言われることもあります。実はこの「面倒見ないといけない」という発想が間違いなのです。仮に将来引きこもっても面倒を見る必要はありません。ここで線を引くことが大事です。私がお勧めする方法は、「18までは家にいてご飯も食べさせてあげる。でもそれ以降は一切何もしません」というリミットをもうけることです。18歳にせずとも、20でも25歳でもそこは家庭の状況に合わせてもらって構いません。大事なのは「いずれはあなたは自分の面倒は自分で見ないといけない」ということを意識させることです。

もちろん手助けが必要なら助けてもらってもかまいませんが、先回りしないことが大事です。

子どもから「助けてほしい」というまで何もしないということです。これがかなりの忍耐なのですが、この忍耐のためにカウンセラーがいると言っても過言ではありません。

そして、子どもの面倒を見るという考えから離れてお母さま自身が自分の人生を楽しむということをしてください。実はこれが結構よい影響をこどもにもたらします。

勉強するしない、ということも大事ですが、将来に目を向けさせていく、ということがお子さんを目の前の快楽から引き離していく大事な要素となります。

そして将来に目が向いてくると自ずと勉強した方が良い、ということでそのお子さんに合ったスタイルで学び始めます。そういう変容をカウンセリングを通じてたくさん見てきました。

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不登校やキャリア教育に関するコラム 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 (シリーズ「子どもの“しんどさ”を理解する」総論)

子どもが学校に行けない、朝起きられない、食欲がない、ゲームに没頭してしまう――。こうした「しんどさ」は、決して珍しいことではありません。しかし、その理由をひとことで説明するのは簡単ではありません。

「心の問題?」「体の病気?」「家庭の影響?」――多くの親御さんはそのあいだで揺れ、「もしかして私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまいます。

けれども、子どもの不調は単一の原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こる現象です。その複雑さを理解するための枠組みが、今回取り上げる**生物心理社会モデル(Biopsychosocial model)**です。

このシリーズでは、近年の臨床心理・教育現場で注目されるこのモデルをもとに、不登校の背景にある代表的な症状や特徴を、医学・心理・社会の3つの視点から丁寧に整理していきます。読者のみなさんにとっては、**お子さんを理解するための“確かな地図”**になるはずです。

Ⅰ.生物心理社会モデルとは

1977年、アメリカの精神科医**ジョージ・エンゲル(George L. Engel)**が、従来の「生物医学モデル」への批判として提唱したのがこの考え方です。

それまでの医療は、「病気=体の異常」という一元的な見方が主流でした。しかし、心身の不調には、身体的な変化だけでなく、心理的要因や社会的背景が密接に関係しています。

この考え方は、世界保健機関(WHO)の健康観にも反映され、現在のICD-11(国際疾病分類)やDSM-5でも、「心身相関的な理解」が重視されています。

🔹 Biological(生物):体質・脳・神経・ホルモンなどの身体的要因🔹 Psychological(心理):感情・性格・考え方・ストレス対処などの心理的要因🔹 Social(社会):家庭・学校・文化・経済・人間関係などの社会的要因

この3つの視点を重ねることで、「なぜ不調が起こるのか」「どう支えればよいのか」が、より現実的に、立体的に見えてきます。

ここに見出しテキストを追加 Ⅱ.このモデルで見る「不登校の背景」

たとえば、朝起きられない子どもを「怠けている」と見てしまえば、家庭での対話は苦しくなります。けれども、生物的には自律神経の乱れ、心理的には不安やプレッシャー、社会的には学校時間とのミスマッチ――と見立てると、原因ではなく支援の方向が見えてきます。

💬「どこが悪いか」ではなく、「どこを支えられるか」で考える――それが、生物心理社会モデルの根本にある視点です。

Ⅲ.このシリーズの構成

この連載「子どもの“しんどさ”を理解する」は、以下の7回でお届けします。

回 テーマ キーワード 第1回 子どもの不調をどう理解するか ― 生物心理社会モデルという考え方 モデルの全体像/不登校の理解の枠組み 第2回 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン 自律神経/午前中の倦怠/医療と学校連携 第3回 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 脳の報酬系/安心の居場所/自己調整 第4回 食べない・食べすぎる子 ― 摂食障害という心身の叫び コントロール感/思春期のアイデンティティ 第5回 勉強がつらい子 ― 学習障害という情報処理のちがい 認知特性/努力の誤解/合理的配慮 第6回 落ち着かない子 ― ADHDという注意の特性 注意・多動・衝動/環境調整 第7回 感じ方がちがう子 ― ASD(自閉スペクトラム症)の世界を知る 感覚過敏/コミュニケーションのズレ

各回では、DSM-5・ICD-11の診断基準や国内ガイドラインにも言及しながら、症状を「生物・心理・社会」それぞれの観点で整理します。また、家庭でできるサポートや、学校に求めたい配慮も具体的に紹介していきます。

Ⅳ.親の育て方の問題ではありません

ここで強調しておきたいのは、これらの症状や不登校は親の育て方の問題ではないということです。

不調の多くは、思春期特有の身体的変化や、神経系の未成熟、環境ストレスなどが重なって起こります。そして、多くの場合、思春期を過ぎて神経・ホルモン・心理的バランスが整うと、自然に改善していくことが知られています。

このシリーズは、「責任を問う」ためではなく、理解を深め、希望を持てるようにするための知識を届けることを目的としています。

Ⅴ.シリーズの読み方と今後の展開

毎回のメルマガでは、それぞれの症状を「生物心理社会モデル」で読み解きます。

各回の文末には、この第1回(本記事)へのリンクを貼ります。 → HP上では、このページを「モデル解説ページ」として常設。 → いつでも参照できる「共通の地図」として活用します。

🪞 あなたのお子さんの“しんどさ”は、心でも体でもなく、“その両方”です。だからこそ、どちらも大切にしながら、つながりの中で支えていけます。

🔍参考文献

Engel, G. L. (1977). The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.

American Psychiatric Association (2022).…

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