不登校の中学生に説得が通じない理由

不登校の中学生に説得が通じないのは反抗期だからという理由だけではない 反抗期という側面だけとらえているとうまくいかないこともある

中学生は反抗期の真っただ中で、不登校しているお子さんに限らず親のいうことを素直に受け入れません。親の言うことに従うことを厭う傾向にあります。仮に、親の言うとおりにしたほうが、楽だろう、正しいだろうということが分かっていても、それをしたくないと言い張ります。不登校しているお子さんに、学校に行くことや、勉強すること、進路のことを考えていることを促すと、「うるさい」とか「わかっている」という言葉が乱暴にかえってきたり、無視したりします。

不登校しているお子さんの中には特に強く反発する人もいます。しかし、反抗期だから反発しているという側面だけをとらえて対処していくと、事態をこじらせてしまいます。大事なことは、不登校しているお子さんが信じていることは何か?を見極めていくことです。

子どもは何かを信じている

信じる、信じないというと宗教的にも思われますが、まさにそれくらい強い、信仰心と言えるくらい強いものを子どもは持っています。それが前向きなこと「やればできる」とか「努力は裏切らない」とか「自分は恵まれている」というものであればよいのですが、ネガティブなものを信じていることが多いです。特に不登校のお子さんに多いのは「自分はバカだ」「自分はブスだ」「自分は社会に適応できない」という誤ったものを信じています。論理療法を編み出したアルバート・エリスはこのような誤った考えを信じていることを「イラショナル・ビリーフ」と言いました。「イラショナル・ビリーフ」とは、事実に基づかない非論理的な信念です。周りの大人からみれば、それは本人の思い込みでその思い込みさえ解きほぐせば自体が改善すると考えて、「そんなことないよ」と説得を試みます。しかし、多くの場合、この説得は失敗し、むしろ「イラショナル・ビリーフ」を頑なに守り続ける姿勢を強化してしまいます。

説得はうまくいかない

自分が信じているものが間違っていると言われると人は傷つきます。たとえば、私はスターバックスが好きです。しかし「スタバのコーヒーはまずい」とか「スタバなんかダサい」と言われるといい気分はしません。好きなものを否定されただけでも傷つきます。

信じているものというのは「好き」がさらに強くなって、本人にとって「それがないと生きられない」くらい大切なものです。仮にその考えが客観的に誤っている、非合理で、そんなものないほうが絶対に良い、というものであっても、本人にとっては「大切な」ものなのです。説得をするとこれを頭ごなしに否定することになります。これは結果として、説得されたほうにとっては「存在否定」につながり、非常に傷つきます。「スタバがまずい」なんていう意見とは非にならないくらい辛い思いをします。

イラショナル・ビリーフから解き放つために

イラショナル・ビリーフから解き放つには、本人が「これは間違っている」「こんなのばかばかしい」と気づくことが必要です。そのためには説得のようにこちらの意見を受け入れさせるのではなく、相手の考えを聴きながら、本人にその考えの矛盾点や自分が損をしているということを、話させることが必要になります。自分で自分にかけたマインドコントロールを解くことが必要です。

どんなに誤った考えであってもその考えを持つに至る経緯や、持ち続けている理由があります。これを敬意と共感をもって聴くことが求められます。これには時間もかかるし、非常に忍耐も伴います。毎日一緒に生活している親御さんがこのようなフォローをしていくというのはかなり酷です。だから我々のようなカウンセラーという存在がいるのだと私は認識しています。

誤った考えに縛られ続けている状態を解き放つことができれば、お子さんは自立の道を歩んでいきます。もしかしたら、すでにそのようなかかわりを続けているご家庭もあるかもしれません。そうだとしたら、もう一息です。もうちょっとだけ今のかかわりを続けてみてください。お子さんの変容を看取ることができる日が必ずやってきます。

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不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン(生物心理社会モデルでみる不登校の背景) 朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン (生物心理社会モデルでみる不登校の背景②/シリーズ記事)

朝になると「気持ちが悪い」「頭が痛い」「体が動かない」と訴えるお子さんがいます。それは意志ややる気の問題ではなく、自律神経のはたらきの不安定さから起きているかもしれません。

本連載は、子どもの「しんどさ」を「生物・心理・社会」の三つの視点で読み解きます。基本となる考え方(生物心理社会モデル)の解説は→ https://visionary-career-academy.com/archives/4178

「朝に弱い」は怠けではなく、からだのサインです

起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)は、思春期に多い自律神経の調整不全です。立ち上がったときに血圧や心拍がうまく調整できず、脳への血流が一時的に足りなくなるため、めまい・立ちくらみ・頭痛・吐き気・強いだるさが生じやすくなります。

多くの子で午前中の不調が強く、夕方に向けて次第に体が動きやすくなる「日内の波」が見られます。

医療現場では「起立試験(Schelingなど)」で起立時の脈拍・血圧の変化を確認します。必要に応じて、水分・塩分の補給や段階的な起床、軽い運動療法、薬物療法などが検討されます。ICD-11では自律神経系の疾患(体位性頻脈症候群=POTS など)として整理され、DSM-5-TRでも精神疾患ではなく身体疾患の範囲として扱われています。

生物・心理・社会 ― 三つの視点で整えていく 生物(Biological)― からだの仕組みを整える

思春期はホルモンや自律神経の変化が大きい時期です。朝は起床直後に無理に立たせないこと。ベッド上で上体を起こす→座位→立位と段階的に体を起こすことが、最初の一歩になります。

起床直後の水分・塩分摂取、日中のこまめな水分補給、筋ポンプを使う軽い有酸素運動も効果的です。

心理(Psychological)― 「動けない自分」を責めない

「行きたいのに行けない」経験が重なると、無力感や自責感が強まります。その気持ちは症状を悪化させるわけではありませんが、不安がからだの緊張を高め、結果として朝の立ち上がりを重く感じさせます。

まずは体の反応で起こっていることを本人と共有し、できたこと(支度の一部・起床時間の前進など)を言葉で丁寧に承認していきます。

社会(Social)― 学校時間割とのミスマッチを調整する

学校は午前中心の時間割で動いています。ODのあるお子さんにとっては、最も動きづらい時間帯が授業時間に重なるため、遅刻や欠席が続きがちです。

ここを「意思の問題」ではなく「リズムの不一致」として扱えるかどうかが、安心を大きく左右します。

学校に求めたい配慮・午後登校・分割登校など柔軟な出席の運用・保健室・別室など安心して過ごせる居場所の確保・出欠・評価の個別配慮(体調の波を前提に)・「登校刺激」の増量より、まず安心の増量を優先する方針

家庭でできる、小さな工夫

朝は「起きなさい」よりも、「まずはお水から」「カーテンを少し開けよう」と、行動のきっかけを具体化します。光を少しずつ浴びることは体内時計の調整に役立ちます。

無理な矯正は逆効果になりやすいため、「昨日より1分早く起きられた」「今日は座って朝食の席に来られた」など、小さな前進を一緒に見つける姿勢がたいせつです。

また、体調の波を簡単に記録し、医療機関や学校と共有していくと、調整のポイントが見えやすくなります。

親の育て方の問題ではありません/思春期を越えると整っていきます

起立性調節障害は、思春期特有の生理的アンバランスが強く関わります。親御さんの接し方が原因ではありません。

自律神経は年齢とともに成熟し、高校〜成人期にかけて回復していく例が多いことが報告されています。焦らず、体のペースに合わせて日々を整えていくことが、もっとも確かな支えになります。

参考・参照

・日本小児心身医学会(2021)『起立性調節障害 診断・治療ガイドライン』・厚生労働省 e-ヘルスネット「起立性調節障害」・American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.・World Health Organization (2023). ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics.

今日のまなざし

朝がつらい日は、からだからの「助けて」のサイン。できない理由を探すより、いま支えられる一歩を一緒に見つけていきましょう。

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

文・大久保智弘 公認心理師・スクールカウンセラー/2児の父。 不登校や思春期の親子支援を専門に活動中。

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このコラムは、不登校や引きこもりのお子さんをもつ親御さんのためにお届けしています。 お子さんの状況や支援の方向性など、メールでのご相談を受け付けています。 ご質問には順次お返事しております。

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