「面倒くさい」で終わらせない子どもとの会話──その一言に隠された“やる気の奥”を見つけるには

「面倒くさい」で終わらせない子どもとの会話──その一言に隠された“やる気の奥”を見つけるには

「やってみたら?」と声をかけても、「面倒くさい」と返してくる。親としてはついイラッとしてしまうけれど、実はこの言葉には、子どもなりの“がんばれない理由”が隠れていることも。今回は、その奥にある気持ちを読み取るヒントと声かけの工夫について考えてみます。

なぜ「面倒くさい」と言うのか?

「ねえ、そろそろ宿題始めたら?」「えー、面倒くさい…」

こんなやり取り、家庭の中で一度は経験があるのではないでしょうか。

“面倒くさい”という言葉は、子どもたちがよく使う便利な表現です。でも、その本音はもう少し繊細な感情でできていることが多いのです。

たとえば:

本当はやってみたいけど失敗が怖い

どこから手をつけていいかわからず、不安だけが大きい

やるべきことが頭に浮かぶと、気持ちがすぐに重たくなってしまう

自分の努力が誰にも気づかれないのではという寂しさ

ある中学生の男の子は、提出物がたまっていたのに「面倒くさい」としか言いませんでした。しかし話を聴くうちに、「先生にはどうせ怒られるし、頑張ってもいい評価もされない」と感じていたことがわかりました。

“面倒くさい”は、心のブレーキをかけるための安全装置なのです。

「やればできるでしょ?」が効かない理由

「あなたならやればできるのに」「いつまでそうやって逃げるの?」

つい口から出てしまいがちな言葉たち。でもこれは、子どもの“傷”に塩を塗ってしまうようなものです。

「やればできる」ことは本人だって分かっている。だからこそ「やれてない自分」が情けなくて、腹立たしくて、“面倒くさい”という仮面をかぶってしまうのです。

あるお母さんは、「何度言っても動かないから、つい“なんでできないの?”と責め口調になってしまう」と話してくれました。でもそのあと、「それを言ったあと、いつも後悔するんです」とぽつり。

“効かない言葉”の背景には、親の「どうしたらいいのかわからない」という不安もあるのです。

「面倒くさい」の奥にある“やりたい気持ち”を見逃さない

本当はちょっと気になってる。ちょっとはやってみたい。だけどうまくいかないかもしれない。恥をかくかもしれない。だから「面倒くさい」って言っとこう。

この気持ちは、大人にも覚えがあるのではないでしょうか。

「面倒くさい」という言葉の裏には、「うまくできる自信がない」「否定されたくない」そんな切実な気持ちがあることがあります。

「やらないんじゃなくて、やれないんだよね」「ほんとはちょっと気になってるんでしょ?」

そんな風に“言葉にならない声”をすくい上げてくれる大人がいると、子どもは少しずつ、「じゃあ、ちょっとだけやってみようかな」と心を開いてくれます。

「その言葉の奥にある、声にならない気持ちに耳をすませて。」――児童精神科医・佐々木正美

文・大久保智弘 公認心理師・スクールカウンセラー/2児の父。 不登校や思春期の親子支援を専門に活動中。

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朝になると「気持ちが悪い」「頭が痛い」「体が動かない」と訴えるお子さんがいます。それは意志ややる気の問題ではなく、自律神経のはたらきの不安定さから起きているかもしれません。

本連載は、子どもの「しんどさ」を「生物・心理・社会」の三つの視点で読み解きます。基本となる考え方(生物心理社会モデル)の解説は→ https://visionary-career-academy.com/archives/4178

「朝に弱い」は怠けではなく、からだのサインです

起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)は、思春期に多い自律神経の調整不全です。立ち上がったときに血圧や心拍がうまく調整できず、脳への血流が一時的に足りなくなるため、めまい・立ちくらみ・頭痛・吐き気・強いだるさが生じやすくなります。

多くの子で午前中の不調が強く、夕方に向けて次第に体が動きやすくなる「日内の波」が見られます。

医療現場では「起立試験(Schelingなど)」で起立時の脈拍・血圧の変化を確認します。必要に応じて、水分・塩分の補給や段階的な起床、軽い運動療法、薬物療法などが検討されます。ICD-11では自律神経系の疾患(体位性頻脈症候群=POTS など)として整理され、DSM-5-TRでも精神疾患ではなく身体疾患の範囲として扱われています。

生物・心理・社会 ― 三つの視点で整えていく 生物(Biological)― からだの仕組みを整える

思春期はホルモンや自律神経の変化が大きい時期です。朝は起床直後に無理に立たせないこと。ベッド上で上体を起こす→座位→立位と段階的に体を起こすことが、最初の一歩になります。

起床直後の水分・塩分摂取、日中のこまめな水分補給、筋ポンプを使う軽い有酸素運動も効果的です。

心理(Psychological)― 「動けない自分」を責めない

「行きたいのに行けない」経験が重なると、無力感や自責感が強まります。その気持ちは症状を悪化させるわけではありませんが、不安がからだの緊張を高め、結果として朝の立ち上がりを重く感じさせます。

まずは体の反応で起こっていることを本人と共有し、できたこと(支度の一部・起床時間の前進など)を言葉で丁寧に承認していきます。

社会(Social)― 学校時間割とのミスマッチを調整する

学校は午前中心の時間割で動いています。ODのあるお子さんにとっては、最も動きづらい時間帯が授業時間に重なるため、遅刻や欠席が続きがちです。

ここを「意思の問題」ではなく「リズムの不一致」として扱えるかどうかが、安心を大きく左右します。

学校に求めたい配慮・午後登校・分割登校など柔軟な出席の運用・保健室・別室など安心して過ごせる居場所の確保・出欠・評価の個別配慮(体調の波を前提に)・「登校刺激」の増量より、まず安心の増量を優先する方針

家庭でできる、小さな工夫

朝は「起きなさい」よりも、「まずはお水から」「カーテンを少し開けよう」と、行動のきっかけを具体化します。光を少しずつ浴びることは体内時計の調整に役立ちます。

無理な矯正は逆効果になりやすいため、「昨日より1分早く起きられた」「今日は座って朝食の席に来られた」など、小さな前進を一緒に見つける姿勢がたいせつです。

また、体調の波を簡単に記録し、医療機関や学校と共有していくと、調整のポイントが見えやすくなります。

親の育て方の問題ではありません/思春期を越えると整っていきます

起立性調節障害は、思春期特有の生理的アンバランスが強く関わります。親御さんの接し方が原因ではありません。

自律神経は年齢とともに成熟し、高校〜成人期にかけて回復していく例が多いことが報告されています。焦らず、体のペースに合わせて日々を整えていくことが、もっとも確かな支えになります。

参考・参照

・日本小児心身医学会(2021)『起立性調節障害 診断・治療ガイドライン』・厚生労働省 e-ヘルスネット「起立性調節障害」・American Psychiatric Association (2022).…

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