不登校している中学生の進路をどう考えるか?

不登校している中学生の進路をどう考えるか? 中学卒業後の進路の選択肢

主に高校が挙げられますが、高校以外にもたくさんあります。

高等学校

高等学校は、一高等学校では、普通科、専門学科、総合学科などの異なる学科があり、自分の興味や進路に応じて選択することができます。

普通科: 一般教養を中心に学び、大学進学を目指す生徒に向いています。 専門学科: 工業、商業、農業、看護など、特定の分野に特化した教育を提供します。 総合学科: さまざまな科目を選択し、幅広い学びを得ることができます。 また、通信制、単位制、定時制など学びのスタイルも多様に用意されています。

高等専門学校

高等専門学校(高専)は、5年間の一貫教育を提供する学校で、工学や技術分野に焦点を当てています。中学卒業後すぐに入学し、高度な専門知識と技術を習得することができます。大学への編入も可能です。

メリット: 実践的な技術を学ぶことができ、就職に有利。 デメリット: 特定の分野に特化しているため、興味が変わった場合に転校が難しい。

専修学校・専門学校

専修学校・専門学校は、特定の職業や技術を習得するための教育機関です。短期間で実践的なスキルを身につけることができ、就職に直結した教育が特徴です。高卒の資格を取ることも可能です。

メリット: 就職に直結したスキルを短期間で習得可能。 デメリット: 学んだ分野以外の職業に就く場合、スキルが転用しにくい。

就職

中学卒業後に直接就職する選択肢もあります。この選択肢を選ぶ学生は、早期に社会経験を積むことができ、経済的に自立することができます。

メリット: 早くから社会経験を積み、収入を得ることができる。 デメリット: 学歴が高くないため、選択できる職種が限られることがある。

それぞれの選択肢には独自の利点と課題があります。今はあまり選択する人はいません。

このほか、海外への留学を考えるという方もいます。

選択肢は与えても決めるのは本人

不登校の中学生のお子さんにとって進路の問題はかなりの重圧です。しかしながら、本人が意思表示を示さないから、親が決めてよいものでもありません。

とはいえ、何もしないで様子見・・・というわけにもいきません。どういう進路をとるにしても、願書締め切りや試験日など、「期限」があります。

焦らせてもよくないのは分かっていても「早く決めてほしい」というのが親御さんの本音だと思います。進路については、何をやって何をやらないのか、という取り決めが重要になります。

 

進路について親はどこまで口を出すべきなのか?

親がやるべきこととしては情報収集と提案です。本人の進路だから、本人に調べさせたいというのはあると思います。不登校している中学生の場合は、友達や学校から入ってくる情報が少ないです。塾に通っている場合は塾の勧めもあるかもしれませんが、高校がどういうものか、さらにはそこを卒業したらどういう将来が待っているのか?ということについてはなかなかイメージが持てません。

情報を収集して、提案するところまではしてもよいと思います。その際に、親が情報を餞別する、ということもありだと思います。

通信高校を選ぶにしても、活動的な学校か、静かな学校なのかはお子さんに状態や性格によって違います。事前にどういう学校が良いかを話し合うことができていればそれに見合った条件に絞っていくこともできます。

ただし、決定するのは本人であるということはかわりません。そのことは情報を提示するごとに伝えないと、お子さん自身が「親はここにってほしいのか?」と早合点してしまうおそれもあります。情報を提示する際は複数の学校を同時提示すると、「親の意図」を勝手にくみ取ってしまうことを軽減できます。

大事なのは親子のコミュニケーション

進路の話は本人にとって重いものです。重い話ができるというのは、普段から軽い雑談や、言葉は少なくても、家族の動向の情報などを知らせておいて、親子のコミュニケーションの頻度がある程度ある、ということが重要になります。

もし、お子さんとのコミュニケーションに困っているのであれば、下記にある声がけ集をヒントにコミュニケーションの頻度を高めてみてください。

不登校のお子様への声がけのヒントを無料でお送りしております。 不登校のお子さんへの声がけ集を入手する

不登校のお子さんへの声がけ集と、不登校対応のヒントとなる情報をメールにて配信しております。

不登校やキャリア教育に関するコラム 集中できない子 ― ADHDと学びの工夫 集中できない子 ― ADHDと学びの工夫 (生物心理社会モデルでみる不登校の背景⑤/シリーズ記事)

本連載は、子どもの「しんどさ」を「生物・心理・社会」の三つの視点で読み解きます。

基本となる考え方(生物心理社会モデル)の解説は→ https://visionary-career-academy.com/archives/4178

「集中できない子」は、努力が足りないわけではない

授業中に立ち歩く、話を最後まで聞けない、宿題を忘れる。注意されたことをその場で謝っても、翌日にはまた同じことをしてしまう。

ADHD(注意欠如・多動症)は、集中のしにくさ(不注意)・落ち着きのなさ(多動性)・思いつくままに行動する(衝動性)という特徴を持つ、神経発達症(発達の特性)です。

ADHDの特徴と、「困り感」の実際

ADHDの子どもたちは、知的には平均的、場合によってはそれ以上の力を持ちながらも、「わかっているのにできない」ことで大きなストレスを抱えています。

本人の困り感

・授業で話を聞いていても、途中で頭が別のことを考え始めてしまう・宿題をやる気はあるのに、机につくまでに他のことに気を取られる・感情が急に高ぶって、後で「なんであんなこと言ったんだろう」と落ち込む・友達との会話で話を遮ってしまい、「うるさい」と言われる

本人は多くの場合、「やる気がない」と思われていることを苦しく感じています。

学校での困り感

・注意される回数が多く、教師からの評価が下がりやすい・授業中に立ち歩く・忘れ物が多いなど、集団のペースに合わない・テストではケアレスミスが多く、実力が正しく評価されない・叱責が続くことで、「自分はダメな子」という自己否定が強まる

家庭での困り感

・「何度言っても同じことを繰り返す」と親が疲弊する・宿題・片付け・時間管理などが日常的な衝突の原因になる・家族が緊張状態になり、親子関係が悪循環に陥る・兄弟姉妹との比較で、親自身が罪悪感を抱くこともある

こうした困難の背景には、脳の情報処理の特性があり、努力やしつけの問題ではありませ

生物・心理・社会 ― 三つの視点でとらえるADHD 生物(Biological)― 脳のネットワークの違い

ADHDでは、前頭前野(集中・計画)と線条体(報酬系)の働きのバランスに特徴があります。脳の「報酬系」が刺激に強く反応し、ドーパミンやノルアドレナリンの調整が不安定になります。

そのため、・興味があることには極端に集中できる(過集中)・興味のないことには集中が続かない

といった偏りが生まれます。これは意志ではなく、脳の情報処理のスタイルによるものです。

心理(Psychological)― 「わかっているのにできない」苦しさ

ADHDの子どもたちは、「自分が悪い」と思い込んでしまうことが多いです。何度も注意されるうちに、「また怒られる」「どうせ失敗する」と自己否定的な信念が強まります。

叱責よりも、行動の背景を理解し、仕組みで支えることが必要です。「集中が続かないからこそ、短時間で区切る」「忘れやすいから、視覚的にリスト化する」――そうした支援が心理的安心を生みます。

社会(Social)― 学校・社会の中で起こること

学校では、ADHDの子どもが「ルールを守れない」「空気が読めない」と見られがちです。

授業中の立ち歩き、提出忘れ、ミスの多さ。それは怠けではなく、注意の持続と実行機能の弱さによるものです。

特に、板書・作文・ノート取りなどの「書く作業」が苦手な場合、努力しても成果が見えにくく、学力が低く評価されがちです。

WISC-V(発達検査)でみるADHDの特徴  発達検査(WISC-V)では、ADHDの子どもに以下のような傾向が見られることが多いです。 指標 特徴 学習面への影響 言語理解(VCI) 会話力や語彙は比較的高い 話すのは得意だが、長い説明を聞き続けるのは苦手 視空間(VSI) 図形・位置関係の理解は得意 空間把握力はあるが、細部のミスが出やすい 流動性推論(FRI) パターン認識・推論に強み 抽象的思考はできるが、課題に集中が続かない ワーキングメモリ(WMI) 数字や情報を一時的に保持する力が弱い 「覚えておいて」が難しく、聞き漏らしが多い 処理速度(PSI) 作業のスピードが遅い傾向 テストや書字に時間がかかる/ケアレスミスが出やすい

このように、知的能力そのものは十分あっても、注意の持続・処理速度・記憶の一時保持の弱さが、学習上の困難につながることがあります。

DSM-5とICD-11による診断基準

ADHDは、DSM-5(米国精神医学会)とICD-11(世界保健機関)で以下のように定義されています。 ●DSM-5(2022) 不注意・多動性・衝動性のいずれかまたは両方の症状が12歳以前から持続し、社会的・学業的機能に支障をきたしている。 症状は少なくとも2つ以上の状況(例:家庭・学校)で認められる必要がある。   ●ICD-11(2023) 発達にそぐわない不注意・過活動・衝動性が持続的にみられ、学校・家庭・職場など複数の場面で機能障害をもたらしている。 神経発達症の一つとして分類。ADHDという名称をそのまま使用。   いずれの基準でも、「単に集中できない」だけではなく、 生活や学業に支障をきたすレベルで持続していることが診断の前提です。   また、発達検査だけで診断が確定するわけではありません。 臨床では、家庭・学校での行動観察面接による生活史の聴き取り 保護者・教師の評価質問票(例:Conners 3、ADHD-RS など)を総合して判断されます。

ADHDの服薬治療

薬物療法は、脳内の神経伝達物質(ドーパミン・ノルアドレナリン)を調整し、集中・衝動性を安定させる目的で行われます。

代表的な薬剤:・メチルフェニデート(コンサータ):集中持続を助ける中枢刺激薬・アトモキセチン(ストラテラ):非刺激薬。不安や衝動性にも効果・グアンファシン(インチュニブ):落ち着き・睡眠リズムの改善・リスデキサンフェタミン(ビバンセ):朝の覚醒・持続的注意をサポート

薬の効果には個人差があり、医師の慎重な調整が必要です。「薬で性格を変える」のではなく、「本来の力を発揮しやすくする」ためのサポートと考えてください。

特性に合った支援と、早期支援の意義

ADHDの子どもは、環境が整えば力を発揮できます。

学校に求めたい支援

・座席は刺激の少ない前方・壁側へ・板書をプリントで補助、または写真撮影を許可・宿題は量を減らし、達成感を味わえる設計に・テストでは時間延長・口頭回答を検討・忘れ物防止のチェックリストやファイルの色分けを導入・教師間で共通理解をもち、「叱るより仕組みで支える」文化をつくる

家庭でできる工夫

・時間を「見える化」(タイマー・スケジュールボード)・成功体験を言葉で具体的にほめる・失敗しても、「どうしたらできるか」を一緒に考える

早期支援がもたらす長期的な効果

ADHDの支援は、早期に始めるほど、ソーシャルスキル(対人関係能力)と自己理解の発達が良好であることが研究で示されています。

早期に自分の特性を理解し、支援を受けながら成功体験を積むことで、・対人関係の衝突が減る・学習意欲が維持される・将来の進路選択や就職の幅が広がる・自分の「得意」と「苦手」を自覚した自己実現が可能になる

つまり、ADHDの支援は“治療”であると同時に、“成長支援”です。本人の人生の選択肢を広げるための、前向きな取り組みなのです。

発達の先にある希望 ― 成熟する脳

多動や衝動性は、脳の前頭前野が発達する20代にかけて徐々に落ち着きます。しかし、片付け・整理整頓・時間管理などの「実行機能の弱さ」は残る傾向があります。

成人後も、・スマホのリマインダーで時間を管理・チェックリスト・ToDoリストで可視化・物の定位置を決めるといった環境デザインの工夫が、一生の支えになります。

親の育て方の問題ではありません

ADHDは、親の接し方や性格で起こるものではありません。脳の働き方の個性です。

そして、この個性は支援によって「弱点」から「才能」へと変化します。創造的で、柔軟で、情熱的。そのエネルギーを社会で生かせるよう、私たち大人が仕組みで支えることが大切です。

今日のまなざし

「集中できない」は努力不足ではなく、脳の特性。叱るより、仕組みと理解で支えることが、子どもを伸ばす最良の方法です。

参考・参照

・American Psychiatric Association (2022).…

不登校している中学生の進路をどう考えるか? Read More »