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「お子さんをほめてください」というアドバイスにうんざりしていませんか?

「お子さんをほめてください」というアドバイスにうんざりしていませんか? あるお母さまからの相談

小学2年生のお子さんをもつお母さま。お子さんに発達障害があるということで、落ち着きがなく、粗暴であること、集中力もない。何か気に食わないことがあると大きな声で怒鳴ってくるというのです。このお子さんにどう対処したらよいかということでした。ほめるところどころか、注意することばかり。しかも、全部を注意すると家の中が重苦しい空気になるので、注意することも選んでいるということ。伝え方も考えて話をするけど、一向に状況は改善しない様子です。

「この状態でほめろっていわれても・・・」と非常にお困りな様子でした。

子どものことで相談に行くとよく言われること

お子さんのことで相談に行くとたいてい、「お話聞いてあげてください」「一緒に過ごして差し上げてください」「お子さんの良いところをほめてください」というアドバイスがなされます。確かに、話を聴くことも、一緒に過ごすことも、ほめることも子どもの自尊感情を育てる上で確かに大切です。しかし、専門家のところに相談にいくということは、そういうことがやりたくてもできない、逆に嫌なところばかり目についてしまう、どうやったら、悪さをしないか、そういことについて何かしらの助言が欲しいわけです。さらには、「自分(親)はこんなに頑張ってるんですけど、どうして子どもが言うことを来てくれないのでしょうか」「教えたことが身につかないのでしょうか」「約束が守れないのでしょうか」そういうことに対処したいときに「ほめてください」とか「ほめるハードルを下げてください」と言われても、これ以上は無理なんですが・・・と言いたいところです。しかし、「もう子どものことをほめたくありません」とはなかなか言えないところです。それを言ってしまうと、子育てできないダメ親だと思われるのではないか、という怖さがあります。

ではどうしたらよいのでしょうか?

無理にほめどころは見つけなくてよい

ハードルを下げて、ほめることができない場合は、無理にほめる必要はありません。子どもが何か話しかけてきた時だけ、「そうなの。すごいね」と応答する。それだけで十分です。こちらからほめポイントを見つける必要はありません。

悪いことをした場合の注意点については「やってはいけない」ということよりも「それをされるとお母さんは悲しい気持ちになる」、「お父さんはそういう言葉を使われると●●(子どもの名前)に嫌われてるのかなとさみしい気持ちになる」と、気持ちを伝えていくことが効果的です。

気持ちを伝える効果については2つあります。一つは、子どもを責める言い方になりにくいということです。「I(私)メッセージ」になるので、自分の気持ちを伝えるということにとどまります。もう一つの理由は子どもに自分の行動・言動が人の気持ちに影響するということを教えることになります。特に発達に課題のあるお子さんは、他者の気持ちを推し量ることが苦手なお子さんがいます。そういうお子さんの感情教育にもつながるのです。

子どもの側からみると・・・

子どもの側からみると、ハードルの低いほめ言葉は「こんな程度でほめられるのか」とかえって落ち込む要素になることがあります。思春期のお子さんの場合は、「形だけほめられるとかえって腹が立つ」というのもあるようです。「どうせそうやってほめて言うこと聞かせようとしているんだろう」と反発を引き出すことになります。ほめること自体はわるくありません。ほめられるときに、子どもをほめることは必要でもあります。

しかし、子どものご機嫌取りであったり、こちらの言うことを聞かせようという意図があるほめ言葉、さらには、心ではすごいと思っていないのに、とりあえず言葉だけほめる、ということは子どもにとっては不快なものでさえあります。

無理にほめる必要はありません。ほめたくないときはほめない。食事の世話、洗濯、送り迎えなどの日々の生活のサポート、それに加えて、遠巻きに見守るだけでも子どもは親からの承認を得ることができます。

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不登校の解決に向けたメルマガを読む 不登校やキャリア教育に関するコラム やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 やめられない子 ― ゲーム・ネット依存の背景 (生物心理社会モデルでみる不登校の背景③/シリーズ記事)

朝になると「気持ちが悪い」「頭が痛い」「体が動かない」と訴えるお子さんがいます。それは意志ややる気の問題ではなく、自律神経のはたらきの不安定さから起きているかもしれません。

本連載は、子どもの「しんどさ」を「生物・心理・社会」の三つの視点で読み解きます。基本となる考え方(生物心理社会モデル)の解説は→ https://visionary-career-academy.com/archives/4178

「やめたいのに、やめられない」

スマートフォンやゲーム機の前に長時間座り込み、声をかけても返事がない。「もう少し」「あと一回」――その繰り返しに、親として焦りや怒り、無力感を抱く方も少なくありません。

けれども、これは単なる“怠け”や“甘え”ではありません。背景には、脳の仕組み・心の不安・社会の構造が複雑に絡み合っています。

特にゲーム依存については心配な方も多いと思います。

依存的になるというのは、ゲームがないと不安、ゲームのことばかりが気になるということになります。そこには、単に時間的な区切りや、意志の力でコントロールだけでは太刀打ちできない身体の働きがあります。今回も生物心理社会モデルに照らして分析してみます。

生物・心理・社会 ― 三つの視点で整えていく 生物(Biological)― 報酬系のはたらきとアルゴリズム

ゲームやSNSが楽しいと感じるのは、脳の**報酬系(ドーパミン系)**が関係しています。ドーパミンは快感や達成感を生む神経伝達物質で、「勝った」「レベルアップした」「通知が来た」といった刺激で分泌されます。

思春期はこの報酬系が非常に敏感で、「もっとやりたい」「もう一度勝ちたい」という欲求が強く働きます。これは理性の弱さではなく、発達途上の脳の自然な反応です。

さらに現代のゲームやSNSは、ビッグデータとAI(人工知能)によって、利用者が最も興味を引かれる情報を自動的に出す仕組みになっています。世界中のユーザーの行動データを分析し、「次に見たい」「やめられない」状態を生み出すよう設計されているのです。

つまり、相手はプロのプログラマーとマーケティングの専門家集団。このような高度なシステムに対し、発達段階にある子どもが意志の力だけで振り切ることは極めて難しいのです。

親が「意志が弱い」「努力が足りない」と考えるのは自然なことですが、人間の意志では抗いにくい構造が背景にある――この理解が第一歩になります。

 

特に不登校していて、学校でのつながりや承認を得られない場合、ネット上の人間関係に依存することもでてきます。一時的にはそういうつながりが助けにもなります。一方で不安な面もあり、相手の正体が分からない、いい人を装って近寄ってきてだましてくる、などトラブルに巻き込まれる恐れもあります。

心理(Psychological)― 安心の居場所としてのデジタル空間

多くの子どもにとって、ゲームやネットは「現実から逃げる場所」ではなく、**安心できる“もう一つの居場所”**です。

現実での孤立感や失敗体験が重なると、ネットの中では「認められる」「上手くできる」「誰かとつながれる」という感覚を得られます。この「できる自分」を感じられる時間は、時に現実よりも心の安定につながります。

「やめること=自分の世界を失うこと」と感じる子も少なくありません。それほどまでに、デジタル空間が心の安全基地になっているのです。

社会(Social)― 家庭・学校・社会のプレッシャー

学校や家庭での緊張やストレスが強いほど、子どもはオンラインの世界に安心を求めやすくなります。

同時に、SNSやゲームの構造そのものが「つながっていないと不安になる」ようにできています。通知・ランキング・おすすめ機能――これらもすべて、ビッグデータ分析とマーケティングの技術によって最適化され、人を「続けたくなる」「戻りたくなる」方向に誘導しています。

親が「もうやめなさい!」と叱っても、子どもは「理解されない」と感じ、関係がこじれることがあります。

大切なのは、**“やめさせる”より“関係をつなぎ直す”**こと。「何が面白いの?」「どんなところが好き?」と、子どもの世界を理解する対話から始めましょう。

生物心理社会モデルでみる全体像 親の育て方の問題ではありません/思春期を越えると整っていきます 要因 特徴 支援の方向 生物 ドーパミン報酬系の敏感さ/AIによる刺激設計 睡眠・生活リズムの整備/過剰刺激から距離を取る 心理 不安・孤独・承認欲求/安心の希求 現実で安心できる活動や関係を増やす 社会 家庭内の緊張/オンライン文化の圧力 対話的な関係づくり/使い方を共に設計する 家庭でできる工夫

・「何時間しているか」よりも、「どんな目的で使っているか」を話題にする・「禁止」ではなく、「一緒にルールを作る」・使用時間を「見える化」し、本人が調整を実感できるようにする・ゲーム以外にも「達成感」や「安心」を感じられる活動を見つける・現実の中に“安心できる小さな居場所”を増やしていく

依存症の治療について

もし、ゲームやネットの利用が長期にわたり、睡眠・学業・家庭生活に支障をきたしている場合は、**「ネット依存症(Internet Addiction)」や「ゲーム障害(Gaming Disorder)」**として、医療的支援の対象になります。

日本では、国立病院機構久里浜医療センターをはじめ、全国の精神科・心療内科で「ネット依存外来」「思春期依存症外来」が設けられています。

治療は「我慢させる」ことではなく、生活リズム・心理的背景・家庭関係を整える包括的支援が中心です。薬物療法よりも、心理教育・認知行動療法・家族支援が効果的であることが多く、家族も一緒に取り組むことで改善が進みやすくなります。

 

親の育て方の問題ではありません

依存的な行動は、自己コントロール機能がまだ発達途中の脳の働きと関係しています。親の接し方だけで説明できるものではありません。

安心できる環境と理解の中で、多くの子どもは成長とともに自然に自分の行動を整える力を身につけていきます。

今日のまなざし

ゲームに夢中になるのは、「現実で息がしづらい」サインかもしれません。取り上げるより、理解して寄り添うこと。そこから、回復の道が開きます。

参考・参照

・世界保健機関(WHO, 2023)『ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics』・American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.・国立病院機構久里浜医療センター「ネット依存外来」・厚生労働省 e-ヘルスネット「インターネット依存」

関連リンク・生物心理社会モデル(総論)に戻る:https://visionary-career-academy.com/archives/4178・第2回:朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン:https://visionary-career-academy.com/archives/4194

文・大久保智弘 公認心理師・スクールカウンセラー/2児の父。 不登校や思春期の親子支援を専門に活動中。

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このコラムは、不登校や引きこもりのお子さんをもつ親御さんのためにお届けしています。 お子さんの状況や支援の方向性など、メールでのご相談を受け付けています。 ご質問には順次お返事しております。

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子どもの自己肯定感を育むために最も大切な1つのこと

子どもの自己肯定感を高めるために最も大切な1つのこと 不登校になると、子どもの自己肯定感が下がる

子どもが不登校になり、スクールカウンセラーをはじめとした身近な相談者に話をすると、必ずと言っていいほど自己肯定感のことが話題になります。不登校は学校に行くという他の子が当たり前にやっていることができなくなるという状態でもあるので、自信を失って当然でもあります。学校に復帰するにしても、不登校してふさぎ込んでいる状態から抜け出すにも自己肯定感は必要です。そして、子どもの自己肯定感をあげるためのアドバイスとして、「ほめる」「みとめる」「否定しない」ということを伝えられます。これは落ちこんでいる人への接し方としては大事ですが、実はこれでは自己肯定感は育まれません。

自己肯定感を高めるためには自己理解が必要

自己理解をすると自己肯定感が確実にあがります。自分を知っていくというプロセスは結果として自己受容につながるからです。「この自分でいい」「今の自分でも大丈夫」と思えたら、不登校の問題は急速に解決に向かいます。

自己理解は、「ほめる」「みとめる」「否定しない」という外的な関わりにも連動します。自分のことが分かってくると何を認められたいのか、何を否定されたくないのか、ということが分かってきます。「自分」というものが徐々に形作られていることで、他者からの承認を受け取ることができるようになります。

逆に自己否定が強い人にいくら、ほめ言葉や承認の言葉を投げかけても受け取りません。また、否定しないように気を付けていても、本人が自分を否定しているので、肯定感を高めていくという状況から遠ざかっていきます。自己否定が強い人ほど、自己理解のプロセスが重要になります。

余談ですが、不登校に限らず発達に課題のあるお子さんも小学校の高学年頃から自分の特性の理解が必要と言われています。自分の特性が分かることで、自分自身で対処法を考えることができるようになります。

自己理解をうながす専門家とのやりとり

病気の人が、自分の病状のことを理解しないで、食事や生活習慣を変えてもあまり効果がありません。やみくもに薬を飲むとかえって病状を悪化させることもあります。そこで医者に行って、自分の状態を伝えて、適切な対処法を教えてもらうわけです。不登校もおなじで(不登校は病気ではありませんが)自分が何に困っているのかを専門家(医者やカウンセラー)に伝えることで、適切な対処法を知ることができます。このプロセスでいくつか質問されます。その質問は知識と経験に基づいた仮説です。当てはまるか当てはまらないか、ちょっとは当てはまるのか、ほとんど同じなのか。質問に応えながら、自分を語ることになります。

この専門家との対話のプロセスで「自分はこういう状態なのか」というのをはじめて言葉の上で理解していくことになります。同時に、語りながら「意外と大丈夫かもしれない」と思ったり、「結構大変なんだな」と自分自身をメタ認知(客観視)することで自然と自分を肯定してくことができるようになります。

これを定期的に振り返りながら、進めていくことで自己理解が深まり、自己肯定感が高まっていきます。

自己理解は裏切らない

自分のことを知り、そのことを肯定した人は、その先も自分のことを大切にして歩むことができます。不登校の課題が解決したからと言ってその先の人生が順風満帆というわけにはいきません。しかし、その都度、どう対処すればよいか、誰を頼ればよいか、そういったことが見えてきます。またこの問題に立ち向かうべきか、逃げるべきかの判断もできるようになります。自己理解を深め、今の自分を肯定できるまでになった人は、不登校の時に味わったようなメンタル不調に陥ることも極めて少ないです。

先日、ファイルの整理をしていると過去にかかわった方のリストが出てきました。過去と言っても3~4年前です。なんとそのリスト名前のある人がみんな、カウンセリングを終えて、それぞれ自立し、将来への歩みを進めていることに気づきました。自己理解を深めることは1日2日ではできない、時間と根気のいる作業ではありますが、そのプロセスを大事にしてくださったクライアントさんは、肯定的な変容を見せたのち、私のもとを巣立っていきました。

深まった自己理解は裏切りません。確実な自己肯定感を身に着けさせてくれるのです。

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朝になると「気持ちが悪い」「頭が痛い」「体が動かない」と訴えるお子さんがいます。それは意志ややる気の問題ではなく、自律神経のはたらきの不安定さから起きているかもしれません。

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「やめたいのに、やめられない」

スマートフォンやゲーム機の前に長時間座り込み、声をかけても返事がない。「もう少し」「あと一回」――その繰り返しに、親として焦りや怒り、無力感を抱く方も少なくありません。

けれども、これは単なる“怠け”や“甘え”ではありません。背景には、脳の仕組み・心の不安・社会の構造が複雑に絡み合っています。

特にゲーム依存については心配な方も多いと思います。

依存的になるというのは、ゲームがないと不安、ゲームのことばかりが気になるということになります。そこには、単に時間的な区切りや、意志の力でコントロールだけでは太刀打ちできない身体の働きがあります。今回も生物心理社会モデルに照らして分析してみます。

生物・心理・社会 ― 三つの視点で整えていく 生物(Biological)― 報酬系のはたらきとアルゴリズム

ゲームやSNSが楽しいと感じるのは、脳の**報酬系(ドーパミン系)**が関係しています。ドーパミンは快感や達成感を生む神経伝達物質で、「勝った」「レベルアップした」「通知が来た」といった刺激で分泌されます。

思春期はこの報酬系が非常に敏感で、「もっとやりたい」「もう一度勝ちたい」という欲求が強く働きます。これは理性の弱さではなく、発達途上の脳の自然な反応です。

さらに現代のゲームやSNSは、ビッグデータとAI(人工知能)によって、利用者が最も興味を引かれる情報を自動的に出す仕組みになっています。世界中のユーザーの行動データを分析し、「次に見たい」「やめられない」状態を生み出すよう設計されているのです。

つまり、相手はプロのプログラマーとマーケティングの専門家集団。このような高度なシステムに対し、発達段階にある子どもが意志の力だけで振り切ることは極めて難しいのです。

親が「意志が弱い」「努力が足りない」と考えるのは自然なことですが、人間の意志では抗いにくい構造が背景にある――この理解が第一歩になります。

 

特に不登校していて、学校でのつながりや承認を得られない場合、ネット上の人間関係に依存することもでてきます。一時的にはそういうつながりが助けにもなります。一方で不安な面もあり、相手の正体が分からない、いい人を装って近寄ってきてだましてくる、などトラブルに巻き込まれる恐れもあります。

心理(Psychological)― 安心の居場所としてのデジタル空間

多くの子どもにとって、ゲームやネットは「現実から逃げる場所」ではなく、**安心できる“もう一つの居場所”**です。

現実での孤立感や失敗体験が重なると、ネットの中では「認められる」「上手くできる」「誰かとつながれる」という感覚を得られます。この「できる自分」を感じられる時間は、時に現実よりも心の安定につながります。

「やめること=自分の世界を失うこと」と感じる子も少なくありません。それほどまでに、デジタル空間が心の安全基地になっているのです。

社会(Social)― 家庭・学校・社会のプレッシャー

学校や家庭での緊張やストレスが強いほど、子どもはオンラインの世界に安心を求めやすくなります。

同時に、SNSやゲームの構造そのものが「つながっていないと不安になる」ようにできています。通知・ランキング・おすすめ機能――これらもすべて、ビッグデータ分析とマーケティングの技術によって最適化され、人を「続けたくなる」「戻りたくなる」方向に誘導しています。

親が「もうやめなさい!」と叱っても、子どもは「理解されない」と感じ、関係がこじれることがあります。

大切なのは、**“やめさせる”より“関係をつなぎ直す”**こと。「何が面白いの?」「どんなところが好き?」と、子どもの世界を理解する対話から始めましょう。

生物心理社会モデルでみる全体像 親の育て方の問題ではありません/思春期を越えると整っていきます 要因 特徴 支援の方向 生物 ドーパミン報酬系の敏感さ/AIによる刺激設計 睡眠・生活リズムの整備/過剰刺激から距離を取る 心理 不安・孤独・承認欲求/安心の希求 現実で安心できる活動や関係を増やす 社会 家庭内の緊張/オンライン文化の圧力 対話的な関係づくり/使い方を共に設計する 家庭でできる工夫

・「何時間しているか」よりも、「どんな目的で使っているか」を話題にする・「禁止」ではなく、「一緒にルールを作る」・使用時間を「見える化」し、本人が調整を実感できるようにする・ゲーム以外にも「達成感」や「安心」を感じられる活動を見つける・現実の中に“安心できる小さな居場所”を増やしていく

依存症の治療について

もし、ゲームやネットの利用が長期にわたり、睡眠・学業・家庭生活に支障をきたしている場合は、**「ネット依存症(Internet Addiction)」や「ゲーム障害(Gaming Disorder)」**として、医療的支援の対象になります。

日本では、国立病院機構久里浜医療センターをはじめ、全国の精神科・心療内科で「ネット依存外来」「思春期依存症外来」が設けられています。

治療は「我慢させる」ことではなく、生活リズム・心理的背景・家庭関係を整える包括的支援が中心です。薬物療法よりも、心理教育・認知行動療法・家族支援が効果的であることが多く、家族も一緒に取り組むことで改善が進みやすくなります。

 

親の育て方の問題ではありません

依存的な行動は、自己コントロール機能がまだ発達途中の脳の働きと関係しています。親の接し方だけで説明できるものではありません。

安心できる環境と理解の中で、多くの子どもは成長とともに自然に自分の行動を整える力を身につけていきます。

今日のまなざし

ゲームに夢中になるのは、「現実で息がしづらい」サインかもしれません。取り上げるより、理解して寄り添うこと。そこから、回復の道が開きます。

参考・参照

・世界保健機関(WHO, 2023)『ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics』・American Psychiatric Association (2022). DSM-5-TR.・国立病院機構久里浜医療センター「ネット依存外来」・厚生労働省 e-ヘルスネット「インターネット依存」

関連リンク・生物心理社会モデル(総論)に戻る:https://visionary-career-academy.com/archives/4178・第2回:朝起きられない子 ― 起立性調節障害という体のサイン:https://visionary-career-academy.com/archives/4194

文・大久保智弘 公認心理師・スクールカウンセラー/2児の父。 不登校や思春期の親子支援を専門に活動中。

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このコラムは、不登校や引きこもりのお子さんをもつ親御さんのためにお届けしています。 お子さんの状況や支援の方向性など、メールでのご相談を受け付けています。 ご質問には順次お返事しております。

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逆効果?!ほめるときにやって欲しくないこと。

ほめるときにやってはいけないのは、比較することです。ありがちなのが、下をほめるために、上を比較対象とすることです。たとえば、

兄弟間での比較です。

「お兄ちゃんより上手だね」「お姉ちゃんより早く覚えたね」

など、特に、下の子どもが頑張っているときについ、上の子と比較してほめてしまいますが、これは逆効果です。その時は良いかもしれませんが、下の子が上の子をバカにするようになります。特に年齢が近いと、余計にライバル心を持って頑張ります。かわいそうなのは上の子です。下が頑張ってほめられているのをみて、余計に頑張ればまだいいほうで、やる気をなくしたり、卑屈になったりして「どーせ僕なんて」とか「私より妹の方がかわいいんでしょ」とか拗ねてしまいます。

これは、職場や学校でも同じです。新人や後輩をほめるために、上司や先輩を比較対象にする。実はこれ、ほめられたほうも気分がよくないのです。自分が敬意を払うべき相手より、上に用いられるのはあまり気分がよくないのです。この場合受け取りづらいほめ言葉になってしまうのです。

他にも比較はあります。

それは友達との比較です。

「○○くんよりすごい」など特に名指しで比較するのはやってはいけないことです。友達のことをよく思っていなければ、そのままバカにするような態度を促してしまいますし、一方で比べた友達のことが好きであれば、これも居心地が悪く、あまり良い気分がしません。

そして、もっともやってはいけないのが、

親との比較です。

「お母さんよりできるじゃない」とか「お父さんよりも頭がいい」などと、子どもの成長うれしさに、親自身が自分と比較して子どもをほめることはやってはいけません。それは、子どもにとって親はもっとも尊敬する大人、大切な大人である存在です。その存在よりも優れているというのを子どもはどう受け取るでしょうか?

1つの受け取り方は、親を見下すようになる。また別の受け取り方は「自分をいい気分にさせるために言っているな」と疑う。また、もう一つの可能性としては、親を超えたからもう頑張らなくていいと思う。です。いずれにしろ、子ども自身がよい受け止め方をすることは考えにくいです。

そもそも比較から出てきたほめ言葉はほめではありません。

何かと比べないと良いところが見つからないようであれば、ほめない方がよっぽどましなのです。

ほめるうえで大切なのは、その人自身への関心です。唯一比較すべきなのは相手の過去との比較です。前より上手になった、昔に比べて早くできるようになったなど、その人の成長が分かるからです。

そもそも、誰かと比べなくても、必ず、その人自身の良いところ、優れているところはほめポイントとしてあります。例えば、性格をほめる、ファッションセンスをほめる、知識をほめる、考え方をほめる、努力をほめるなど、相手に関心さえあれば必ず見つかります。

比較のほめ言葉から脱して、相手の存在に向けたほめ言葉が世の中に増えていくことを切に願っています。

最後までお読みくださりありがとうございます。…

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