テストの後、子どもが本当に求めている“ひと言”とは?
子どもが返却されたテストを持ってきました。そこで、点数を見て「で、平均は?」と聞くのは、何気ない一言。でもその瞬間、子どもは「また比べられた」と感じているかもしれません。
相対評価と絶対評価――その違いが、子どもの心の伸びしろを左右します。

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
1.「比べられた」と感じた瞬間、心は閉じる
定期考査の答案が返ってきたとき、「で、平均点は?」と聞いたことはありませんか?
親にとっては現状を知るための情報収集のつもりでも、子どもにとっては「誰かと比べられている」と受け取られることがあります。実はこのひと言が、子どものやる気や自尊感情を大きく左右します。
特に、学校に行きづらさを抱える子どもや、日々不安と戦っている子にとって、「また人と比べられた」「自分はまだダメなんだ」という感覚は、次の挑戦を阻む原因になります。
2. 相対評価と絶対評価のちがい
学校のテストは多くの場合「相対評価」の仕組みを前提としています。
つまり、「周囲と比べてどの位置にいるか」で評価が下される。
しかし、心の成長や自己肯定感は、「前の自分と比べてどうだったか」という「絶対評価」の視点で育てる必要があります。
たとえ点数が低くても、前回よりも勉強時間が増えていた、最後まで解き切った――
そうした変化に気づいて言葉にしてあげることで、子どもは「できたこと」に目を向けられるようになります。
3. 「私はこう感じたよ」と伝え
「前より説明の答え方が丁寧だね」
「ここ、がんばって覚えたんだね。私、うれしいな」
評価ではなく観察と感想を伝える「私メッセージ」は、子どもにプレッシャーを与えません。比べることより、寄り添うこと。
これが、子どもを“次へ”と向かわせるエネルギーになります。
点数は数字。でも、子どもの内面の変化は数字では測れません。
比べるよりも、「見ていてくれる」「受けとめてくれる」親のまなざしが、子どもを成長へと向かわせます。
絶対評価で見守る。それが、親子の信頼を深めるコミュニケーションの第一歩です。
「比較は喜びの終わりであり、成長の妨げでもある。」
― カール・ロジャーズ(心理学者)
文・大久保智弘
公認心理師・スクールカウンセラー/2児の父。
不登校や思春期の親子支援を専門に活動中。
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