不登校の子の親こそ大切にしたい――「自分自身に向けるまなざし」
不登校の子どもに向き合う中で、自分を見失う親たち
不登校の子どもを支える親御さんに「お母さまがやりたいことは何ですか?」と尋ねると、次のような反応が返ってくることがあります。
「…何も思い浮かびません」
「子どもが大変なのに、どうしてそんなことを考える必要があるのですか?」
前者は、子どものことで奔走するあまり、自分のことをすっかり置き去りにしている場合。
後者は、「子どもが大変なのに、自分のことを優先するなんて許されない」という思い込みにとらわれている場合です。
不登校の子が家にいると「一人の時間」がなくなる
「子どもがずっと家にいると正直しんどいです」
そう打ち明ける親御さんも少なくありません。
家が“子どもに占拠されている”ように感じられ、自分のリズムや一人の時間を失ってしまうのです。
このしんどさを口に出せるのは大切な一歩。
親がつらいと感じるのは、子どもをないがしろにしているのではなく、親自身も一人の人間だからです。
る。
不登校の子の親が「自分を大切にすること」が子どもに効いてくる
飛行機の安全案内では「酸素マスクはまず自分がつけてから子どもに」と説明されます。
親が息苦しければ、子どもを助けることもできません。
同じように、不登校の子どもを支えるときも、親自身の心に酸素を届けることが大切です。
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疲れを感じたら休む
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気持ちが重いときは信頼できる人に話す
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小さな楽しみを用意する
こうしたセルフケアが、親に余裕を生み、その安心感が子どもにも伝わります。
「私なんて」と思わずに
「子どものことで精一杯なのに、自分のことを考えるなんて」
「親なのに、弱音を吐いてはいけない」
そんなふうに自分を責めてしまう方もいるかもしれません。
でも、親が自分を大切にすることは、子どもを大切にすることと矛盾しません。
自分の気持ちを無視し続けると、子どもへのまなざしが焦りや厳しさに変わってしまうこともあります。
だからこそ、親もまた「愛される存在」であることを忘れないでください。
小さな一歩から、大きな歩みまで
自分自身に向けるまなざしは、ほんの小さなことから始められます。
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一杯のコーヒーを味わう
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散歩に出て季節の風を感じる
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「今日はよく頑張った」と自分に声をかける
こうした小さな一歩は、心を整え、子どもへの関わりにやさしさを取り戻してくれます。
一方で、大きな歩みを選ぶことも素敵なことです。
「働きに出てみたい」
「学び直したい」
「習い事を始めたい」
そう思ったときは、そのスタートに向けて動いてみてください。
親が生き生きと好きなことを始める姿は、子どもに希望と安心をもたらします。
親の人生が前に進むことは、子どもにとっても力になるのです。
― カール・ロジャーズ (On Becoming a Person, 1961)
文・大久保智弘
公認心理師・スクールカウンセラー/2児の父。
不登校や思春期の親子支援を専門に活動中。
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