これまで、相談を受けた中で、不登校の中学生、高校生の親御さんが困っていたことです。状況、不登校が長期化した場合の懸念事項、効果があった対処法について表にまとめてみました。下記で、対処法については具体的に述べております。
勉強しない | 昼夜逆転 | ゲーム依存 | 自室にとじこもり | |
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状況 | 勉強しているそぶりがない。 勉強の話をすると不機嫌になる。「後でやる」「今度やる」といいつつも行動が伴わない。 | 朝起きてこない。起きてきてもだるそうにしている。一日中パジャマで過ごしていて、身なりを整えない。 | ずっとスマホやゲーム機を持っている。話しかけても上の空で聴いているか分からない。昼夜逆転している。 | 部屋から出てこない。話しかけても応答はない。家の中に居てもLINEで用事を言いつけてくる。部屋が散らかっているが片付けない。 |
長期化すると | 学習の遅れ。進路や進学の選択肢が限られてくる。 | 生活が乱れる。うつ的な症状が出てくる可能性がある。 | 情緒が安定せず、衝動性が高まる。異常な課金をする。 | 学校が過ぎても引き続きこもる可能性がある。 |
対処法 | 目の前の課題や具体的な教科の話ではなく、進路を話題にする。 | 起きた時間に必ず着替えをして、起きる、寝るの区別をする。 | ゲームの話題に触れ、人と話す時間をとる。 | 無視されても声をかけることを怠らない。起きている時間に扉越しにでも心配していることを伝える。 |
勉強しない不登校生への対処法
不登校になった理由の一つに勉強が嫌いということを挙げる生徒さんがいます。不登校している時点で、精神的に参っていることが多いので、無理に勉強させることは得策ではありません。
しかし、生徒自身も、これからどうしていいか悩んでいる場合があります。目の前の勉強には取り組みたくなくても、将来についてはどうしようか考えています。それが悩みの種になっている可能性もあります。
勉強するしないの話はわきにおいて、将来どうしたいのかを話題にします。その際も、お母さま、お父さまがどうして今の仕事をしているかとか、そういう話をして差し上げてください。
不登校している生徒の多くが自己表現が得手ではありません。
「将来どうするの?」といきなり考えをきくのではなく、親御さんから話をして、話しやすい雰囲気をつくっていく必要があります。
子どもさんが話し出したら、どんなに荒唐無稽であっても「そんなの無理よ」とか「じゃあ勉強しよう」といきなり結論付けずに、最後まで聴ききって差し上げてください。
未来に目を向けられるようになると、心の力が湧いてきて、歩んでいけるようになります。学習の遅れに関しては取り戻す方法はたくさんあります。まずは、将来を考えること、そして「この先も自分は生きないといけない」という思いを確認することが、勉強に向かう姿勢を、自然とつくっていきます。
昼夜逆転する不登校生への対処法
実際に不登校になり続ける最初の段階で見える現象が、朝起きてこないということです。起こしに行ってもなんだか眠そうにしていたりします。
午前中に起きてくれば良いですが、午後、または夕方に起きてくる場合もあります。理由は夜眠っていからです。
夜眠っていない理由は大きく二パターンあります。積極的に起きている場合です。ゲームをしたり動画を見たりしていることがあります。もう一つのパターンは、眠たいけど、学校の行かない自分を責めたり、これからどうしていったらいいかを考えていて眠れないということがあります。
前者の場合は次に述べる、ゲーム依存・ネット依存になっている可能性が大いにあります。
後者の場合は精神的に不安定になっています。自責感が強く、自己肯定感が著しく低下しています。自殺を考えることも珍しくありません。
昼夜逆転を正すためには、朝起きるということが必要になりますが、夜眠れないお子さんにとって、朝起きても、またすぐに眠ってしまいます。
そこで有効な対処法が更衣です。昼夜逆転すると、ずっと同じ服を着ています。外出があってもなくても、夕方に起きてきたとしても、着替えをします。
これまでと違う行動をとること、そして着替えをするということで、気持ちが切り替わるのです。だらだら過ごす流れを断ち切る効果があります。
更衣が習慣になると、起きる時間に変化があらわれたり、何か活動を始めたりすることも珍しくありません。
それが勉強であればうれしいのですが、最初は家の手伝いとか、ちょっとしたそうじ程度です。そういう変化を見て取れたら、思いっきり承認の言葉を差し上げてください。
ゲーム依存の不登校生への対処法
ゲームに依存しているお子さんの場合、ゲームの出来によってご機嫌ナナメになったりします。勉強もしない、昼夜逆転しているのでゲームを取り上げたいところですが、取り上げると、暴れたり、夜中に家を出ていったりして、仕方なくゲームをさせている状態もあるかと思います。
ゲームに依存しているときは、依存しているものと自分自身が一体になっています。ゲーム依存のお子さんがゲームを否定されると自分を否定されたような気持になります。
まずは、ゲームしている時間を減らすことです。外出に誘ったり、話をしたりする時間をつくります。学校や勉強の話ができるならそれに越したことはないですが、一番はゲームの話に興味をもって話をすることです。
今何を頑張っているか、どんな大変なことがあるのか。そこに興味をもってはなす。分からない言葉は尋ねると良いでしょう。得意になって話してくれます。
実はゲームの話題に触れることは自分が認められたような気になります。この承認を繰り返していくと、リアルな承認を求めるようにもなります。徐々にゲームから離れていくこともあります。
また、ゲームをしている自分をバカバカしく思うこともあります。自分を客観的に見れるようになれば、依存から抜け出るために、お子さん自身も対処を使用とし始めます。
自室にとじこもりの不登校生への対処
不登校した上に、家族とのコミュニケーションを断つ生徒さんもいらっしゃいます。
声をかけても応答はない。部屋に入ろうとすると、暴れる。何をしているか分からず、部屋は散らかり放題。食事は家族が寝静まった夜中にとっていたりしてとにかく顔を合わせようとしない。
何を考えているか分からない状態です。
これは対処に根気がいるのですが、反応があってもなくても、あいさつをしたり、食事をつくったり、洗濯をしたりをする必要があります。
無意識の話ではありますが、「こんな自分でも親は見捨てないか」と親を試しているのです。
この試し行為にたいして、誠意をもって対処しなければなりません。過剰に何かをする必要はありません。日常的な生活を続けていくことで十分承認になります。
子どもにカウンセリングを受けさせたいけど・・・
不登校のお子さんにすれば、いきなりのカウンセリングはハードルが高いのです。しかし、お母さまの焦る気持ちが収まれば、自然とお子さんとの会話が増え笑顔が戻ってきます。
不登校のお子さんの多くが、自分を責めて、つらい気持ちになっています。笑うことはおろか、会話すらままならないこともあります。
そんな中で心療内科だカウンセリングだというとさらに落ち込んでしまうのです。
とはいえ、解決をするにはどうしても課題を抱えている当事者であるお子さんを医療機関やカウンセリングにつなげないとという焦りもあるかもしれません。
しかし、不登校しているお子さんにとって、そういうところに出向くのはハードルが高いです。仮に行けたととしても続きません。
まずは、お母さまがカウンセリングを受ける。必要であればご両親で受けることをお勧めします。
不登校への対処は非常に根気がいります。これまでと同じような接し方ではうまくいかないのです。
支援する親御さんが参ってしまっては元も子もありません。
親御さんがうつや神経症を発症する前に、心のケアをすることをおすすめします。